vol.226【増田紀彦の視点・第133回 米の流通問題とタイ米の「是非」】

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Vol.226 2025.2.21
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┃目┃次┃ ┃ ┃ ┃ ┃
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【1】「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」
厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、
増田代表が送る、視点・分析・メッセージ
第133回
米の流通問題とタイ米の「是非」
【2】 NICeニュース
増田通信より「ふ~ん なるほどねえ」308号++
<最近の放送> 大事なことを愉しく学べるイベント
ほか7本
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「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」
第133回 米の流通問題とタイ米の「是非」
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米の小売価格が高すぎる。
物価高騰が続く中、米価の上昇は生活に深刻な打撃を与えている。
主食のせいで実質賃金が下がる展開は、日本経済にとっても問題だ。
一方、米価が上がれば農家の所得も上がるから、
悪いばかりではないという意見もあるが、どうだろう。
確かに米農家の直近の年間平均所得は9万7000円※にしか達しない。
(※農林水産省 農業経営統計調査 令和5年 農業経営体の経営収支より)
だが、高すぎる価格はむしろ消費者の米離れを加速させる危険もある。
そこで、米価を安定させつつ、米農家の所得を増やせないか、考えてみた。
【あわてて買った弁当の中身はエスニック料理】
2月13日、出張先の静岡県から夜遅く東京に戻った私は、
夕食を食べ損なっていたので、品川駅構内であわてて弁当を買った。
残る商品はすでに数点。選ぶ余地はなかった。
自宅に帰って蓋を開けて、初めてそれがエスニック料理だとわかった。
レンチンで立ち昇った湯気が、鼻腔をくすぐる。
香りの正体は、タイ米で炊いたご飯だった。いい匂いだ
このコラムの後半で、タイ米の「是非」についても語ってみたい。
翌2月14日、農水省は備蓄米を放出すると発表した。ようやく。
【農水省の市場分析力の欠如もしくは怠慢】
米価の上昇は今に始まったことではない。
「米が足りない」と言われ始めたのは昨年の夏頃だ。
それでも農水省は備蓄米放出に消極的だった。
「新米が出回れば価格は落ち着く」とも言っていた。
だがその見立てとは裏腹に、新米流通後も米価は上昇を続ける。
この状況を受け、さすがに政府も備蓄米を放出せざるを得なくなった。
米不足・価格高騰の要因は以下の3つと言われている。
1.昨年の新米の出来が悪く、流通に回せないものが多かった
2.インバウドの増加により需要が増加した
3.国内外の様々な事業者が米を買い入れ、押さえ込んでいる
(人材派遣会社が米を仕入れて回っているという報道もあった)
1番は温暖化の弊害、2番は円安の弊害、
そして3番は「米の流通の自由化」という名の新自由主義の弊害だ。
いずれにしても、これらの変数を読めず、何ら手を打たず、
過剰な米価上昇を招いた農水省には猛省を促したい。
【「逆ザヤ」が政府に米の買い上げを断念させた】
かつては、生産された米を政府がすべて買い上げ、
その後、流通に乗せて販売・消費するという仕組みが存在していた。
もしもそのルールが今も生きていれば、
「事業者の買いだめ」のような事態は起こらなかったはずだ。
ではなぜ、政府は米の買い上げをやめたのか?
端的に言えば、年々日本人は米を食べなくなり、
政府が農家から買い上げた米の価格より、
政府が流通に卸す価格のほうが安くなる事態に陥ったからだ。
つまりは逆ザヤ。言い換えれば税金の無駄遣い。
そのため、政府は70年代から90年代にかけて、
米の作付面積の削減や転作を奨励し、米価の維持を図ったが、
それでも「コメ余り」は続き、逆ザヤ状態は解消されなかった。
というのが、大筋での理由だが、
政府の米の買い上げは、実際のところ1990年まで続いていた。
【「水田」は「票田」。そんな時代もかつてはあった】
日本人の食生活が洋風化し、米離れが着々と進んでいたにもかかわらず、
政府が米を高値で買い続けてきたのは、ひとえに政治家の利益のためだ。
今でこそ農家と言えば、野菜農家や果樹農家など、
さまざまなスタイルの農家をイメージできるが、
戦後から90年代頃までは、農家=米農家と言っても過言ではなかった。
だから、政府が米を高く買うことで、農家を与党の票田にできたのである。
まったくいつの時代も政治家は……。
しかし、いつまでも無理を通せるものではなかった。
【どこにも米がない! 「平成の米騒動発」勃発】
ところが、政府の米買い上げ廃止から3年後の1993年に、
「平成の米騒動」が発生した。
同年は記録的な冷夏で米が不作になり、
需要量1000万トンに対し収量783万トンと、217万トンが不足。
当時の備蓄米保有量は23万トンだったから、
総量を放出したところで焼け石に水。
米の流通の自由化(という名のほったらかし)も影響し、
買いだめや売り渋りが一気に発生して米不足に拍車が掛かった。
【制度化以降、備蓄米は震災被災地などに供給されただけ】
そこで政府は急遽、タイや中国、アメリカなどから米を輸入。
しかし、これらの米に対する安全性に不安を抱く人は少なくなかった。
それにも増して、外米は日本人の口に合わなかった。
私たちが普段口にしている米は短粒種。
一方、海外産の米の多くは日本の米より細くて長い長粒種。
食味も食感もまるで違う米である。
このときの混乱が契機となって1995年、
「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」が施行され、
以降、政府は凶作時や大地震などの緊急時の備えとして、
毎年約20万トンの米を買い、100万トンを目安に備蓄を続けることになった。
これまで備蓄米は東日本大震災や熊本地震の際に活用されたが、
今回のような流通価格の高騰を理由にした放出は一度もない。
あらためて、今回の米価高騰が「ただごとではない」ことを示している。
【米の販売を届出制から許可制に変更すべき】
主食の座を小麦製品に脅かされ続ける米だが、
それでも、米の受給バランスの安定は国家の一大事だ。
だから、この機会に行き過ぎた自由化に歯止めをかけ、
流通に関するルールを整備すべきである。
現状、米の出荷や販売は、届出だけで済むことになっているが、
適格要件をいくつか設定したうえで許可制にしたほうがいい。
合わせて政府備蓄量を倍増させたらいいと思う。
流通を厳格にしたところで、気候変動リスクは高まる一方であり、
想定以上に米が不足することも考えられるからだ。
この2つの制度変更を実行すれば、
価格の安定と生産量の拡大=農家の所得向上に貢献するはずだ。
【自治体も備蓄米を。さらに米保存技術の開発にも支援を】
都道府県も政府とは別に人口に応じた備蓄米を保管したらどうか。
地方には活用されていない施設や建物がたくさんあるから、
そこを、自然エネルギーを活用した低温備蓄庫として使いたい。
あるいは炊きたてのご飯を超高圧処理で無菌化し、
パッケージングしたものを保存してもいいと思う。
これなら、生の米よりも長期保存がきく。
米(ご飯)の備蓄に取り組む自治体や、
備蓄技術開発に取り組む企業を政府が支援し、緊急時や米不足の際、
迅速かつ大量に米を提供できる体制を整えておけば、
不安も消えるし、法外な値段の米も消えていくだろう。
とにかく私たちは安心して暮らしたい。ほんと、最後はそれだけだ。
【タイ米は炊いただけでは魅力が伝わらない】
さて、長粒種の米は日本人の口に合わないと書いたが、
タイ米の肩も持っておきたい。
タイ米は「香米」とも呼ばれ、独特の香りが魅力だが、
その香りに馴れない日本人の中には「臭い」と感じる人もいる。
もっとも、タイ米の美味しさは、炊いただけでは発揮されず、
粥にすることで生きてくる。タイ米の粥は絶品だ。
次に美味しい調理法は炒飯だろう。
タイ米は粘りけがないので、炒めるとパラパラになり、
米と具が変にくっつかず、米は米の美味しさを、
具は具の美味しさをしっかりと味わうことができる。
【和食人気をさらに押し広げ、短粒種を世界へ!】
反対に言えば、タイ米は日本食の調理法とは相性が良くない。
例えば天丼やカツ丼や鰻重のように、
ご飯とタレを絡ませて味わう料理にタイ米は不向きだ。
粘りがない長粒種では、タレがご飯に絡まず、器の底に溜まってしまう。
当然、卵掛けご飯や納豆掛けご飯もダメ。炊き込みご飯もダメ。
雑炊もダメ。海苔弁もダメ。フリカケもダメ。あれもこれもダメ(笑)。
日本人の多くは、ご飯と具材が「絡んでこそ」美味しいと感じるからだ。
料理は気候風土が育むものであり、調理法は素材によって変わる。
タイ米をはじめとした長粒種自体が不味いのではなく、
どんな素材も食べ方を間違えると台無しになるという話だ。
ということは、世界各地のコメの主流は長粒種だが、
和食人気が高まっている昨今、短粒種の需要も高まっていると考えられる。
つまり和食を押せば、輸出による米増産のチャンスも広がると予測できる。
シャリがパラパラの寿司なんて、どの国の人も食べたくないはずだ。
<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>
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NICe NEWS
Web更新、勉強会、お知らせ
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《Mr.NICe》 2月14日更新
増田通信より「ふ~ん なるほどねえ」308号++
<最近の放送> 大事なことを愉しく学べるイベント
/archives/54328
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《Mr.NICe》 2月7日更新
増田通信より「ふ~ん なるほどねえ」308号
<最近の気掛かり> 「みみっちい」国と「ずうずうしい」国の「同盟関係」
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《NEWS》 2月5日更新
NICe日記大賞2025 発表!
1月分の大賞日記
「集団移転の必要性」
/archives/47672
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《NEWS》
祝!For Goodアワード2024
一般投票部門を受賞
福岡県新宮町のコワーキングスペース
「新宮CoCoスクエア」
https://shingu.cocosquare.jp/167321.html
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《Seminar》
一般社団法人 防災備蓄収納プランナー協会
「職場備蓄管理者 資格講座 WEB版」
3月6日、5月20日
https://bichiku-shunou.or.jp/qualification/qualification-manager/
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《Seminar》
一般社団法人 防災備蓄収納プランナー協会
「防災備蓄収納2級プランナー講座」
3月18日、4月17日・18日・30日、5月6日・14日・29日、他
https://bichiku-shunou.or.jp/qualification/qualification-2kyuu/schedule/
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《Seminar》
一般社団法人 防災備蓄収納プランナー協会
「分類マップ・防災備蓄収納カード講座 WEB版」
4月13日
https://bichiku-shunou.or.jp/qualification/qualification-mapcard/
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┃ ┃ ┃ ┃ ┃編┃集┃後┃記┃ ┃
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メルマガvol.218
/archives/54107
で紹介させていただいた、福岡県の平井良明さんの挑戦、
多機能型コワーキングスペース「新宮CoCoスクエア」。
このたび、社会貢献クラウドファンディング
【For Good アワード2024】にて、
一般投票部門を受賞されました!
おめでとうございます。
受賞の背景や今後の展開など、詳細はこちら。
https://shingu.cocosquare.jp/167321.html
次号の「つながり力で起業・新規事業!」NICeメルマガは、
3月11日に配信予定です。
(NICe広報・岡部)
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