第59回 「附帯関連する一切の事業」
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増田紀彦の「ビジネスチャンス 見~つけた」
第59回 「附帯関連する一切の事業」
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会社をはじめとする大半の法人組織は、
定款(ていかん)に基づいて運営される。
定款とは、商号(社名)や目的(事業内容)、本店所在地といった、
その法人の基本事項を筆頭に、運営方法や意思決定方法、
役員や会計などに関する決まり事を厳密にとりまとめたものだ。
今回は、その中の目的(事業内容)にフォーカスしたい。
この目的の条文にこそ、ビジネスチャンスを探るヒントが隠されている。
まずは、一般社団法人起業支援ネットワークNICeの、
定款に記載されている目的を見ていただきたい。
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(目的)
第3条 この法人は、雇われずに生きる人、また、
地域発展や社会貢献に尽力する人の活動を支援することを目的とし、
その目的に資するため、次の事業を行う。
一 インターネットを利用した各種情報提供
二 イベント・セミナーの企画及び運営
三 書籍の企画及び出版
四 地域振興事業
五 その他、当法人の目的を達成するために必要な事業
………………………………………………………………………………………
自分で言うのもなんだが、これはちょっとカッコつけた書き方だ(笑)。
通常は、以下に掲げる、
私が代表を務める株式会社タンクの定款のような書き方になる。
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(目的)
第2条 当社は以下の事業を行うことを目的とする。
一 広告代理業及び各種の宣伝・広報に関する業務
二 書籍・雑誌の企画、編集、制作、出版及び販売業
三 写真業
四 印刷業
五 その他前各号に附帯関連する一切の事業
これを書いたのは私が27歳のとき。
同業の先輩経営者に頼んで定款を見せてもらい、
9割方、真似をさせてもらった。
ただ、上記の五の意味合いがいまひとつ理解できず、
後日、知り合いの税理士に「これは何?」と尋ねてみた。
「この一行を入れておけば、
将来、目的に書いていない事業を始めても大丈夫ということ」。
そんな説明を受けたと思う。
前提として、法人は、
定款に記載した事業しか取り組むことができない決まりがある。
だから、「その他前各号に附帯関連する一切の事業」と入れておくことで、
定款違反を回避するための方途になる。
恐らく、この一文を定款作成上の単なる常套句と思っている人もいるだろう。
しかし、この一文こそ、新規事業のタネを見つけ出す有効な視点だ。
見事に、それを実践している会社がある。
神奈川県に本拠を置くタムラコーポレーションさん。
同社の基幹事業は運送業だが、
「運ぶ+1」をスローガンに掲げ、
ありとあらゆるビジネスチャンスをものにしている。
私は同社を訪ねたことがなく、あくまでネットで知る限りだが、
同社のサイトを眺めているだけでもワクワクしてくる。
「そうか。こうやって新規事業のヒントを見つけるのか」と。
たとえば、同社は小売店に商品を搬送する。
一般的な運送会社なら、納品が済めばその店を離れるだろう。
だが同社は搬入終了後、商品の陳列まで代行する。
あるいはイベントが開催されれば、
同社は会場まで、運営のための機材や資材、設備などを搬入するが、
その後の会場設営や開場準備も請け負う。
運送の後行程だけではない。
ポスティングを手がける同社は、事前の封入作業も請け負っている。
あるいは配送ルートのエリア内にある不動産物件の撮影も代行する。
ほかにも多くの「+1」を手がけている。
とにかく、運送業務の「前」や「後」や「隣」や「中」にある、
ありとあらゆる「附帯関連する事業」で同社は収益機会を広げている。
新規事業は決して難しくない。
むしろ、難しいと感じる新規事業に手を出さずとも、
よくわかっている事業領域のすぐそばに、チャンスがあるということだ。
そういう視点で取り組む新規事業は、
言うまでもないが、本業の収益アップにも貢献する。
さあ、単に載せただけの「附帯関連する事業」について、
一度本気で探ってみよう。そこには、必ずニーズが潜んでいるはずだ。
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「つながり力で起業・新規事業!」
メールマガジンVol.207
(2024.4.11配信)より抜粋して転載しました。
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