第58回 「隙」あらば、自販機
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増田紀彦の「ビジネスチャンス 見~つけた」
第58回 「隙」あらば、自販機
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ご存じの人も多いと思うが、野毛(のげ)という町がある。
横浜市屈指の繁華街だ。
そんな賑やかな界隈の一角に、ピンクに塗装された、
やたらと目立つ自動販売機が設置されている。
何を売っているのだろう?
覗き込むと、これがなかなかのラインナップ。
パネルには「横浜家系塩ラーメン」「酸辣湯麺」など、
10種類ほどの麺メニューが表示されている。
すべて冷凍状態での販売。
代金を投入して好みの商品を選べば、
麺とスープと具材がセットで出てくる。
持ち帰って自分で温めれば、「こだわりのラーメン」の完成。
この自販機が置かれている駐車場は、
ウルトラフーズという会社の所有地のようだ。
調べると、同社は神奈川県内を中心に、
ラーメン店を複数経営する企業であることがわかった。
「松壱屋」という屋号らしい。
なるほど。
チェーン展開によって一定の認知度を獲得した場合、
次の一手に、自販機での販売を選択することは合理的である。
飲食店業界の人手不足が改善される見通しはほぼない。
しかし自販機なら、
人を増やさず、家賃もかけず、「人気商品」を販売できる。
もちろん、冷食自販機は24時間稼働だから、
それなりの電気代が必要だが、
仮に1日3000円の電気代を要するとしても、
1日10食も売れば利益は取れるだろうから、コスパは悪くない。
そもそも、自販機ビジネスは、
自販機を設置できる場所を持つ企業や個人なら、
業界経験の有無にかかわらず、誰でも開業可能である。
高額の加盟金を納めて飲食店のフランチャイジーになることを考えれば、
明らかにこちらのほうが安全だし、何しろ運営がラクだ。
むろん、冷食自販機で販売できる商品はラーメンに限らない。
全国各地に設置されている冷食自販機「ど冷えもん」の中身を覗くと、
うどんや餃子、ピザやパスタ、
さらには海鮮料理や韓国料理、鰻重やおにぎり、ケーキなど、
「ないジャンルはない」と言えるほどの多彩ぶりである。
コロナ禍による非接触ニーズの拡大と合わせて、
様々な食品を安定的に冷凍化するフリーザーが次々開発されたことが、
こうしたビジネスに拍車をかけたのだろう。
もっとも食品だけが自販機ビジネスの花形というわけではない。
隆盛を極めているのが、ガチャガチャである。
正しくは、カプセル・トイというのだろうか。
その市場規模、今や450億円とも500億円とも言われている。
前述した横浜の野毛から近い、みなとみらい地区のとあるビルの中で、
体育館並の広さの「ガチャガチャ屋」を見つけて、仰天したことがあった。
たぶん、数百台、いや、それ以上設置されているかもしれない。
それでもスタッフは、いるかいないか程度。
とてつもなく人件費比率の低いビジネスということになる。
言うまでもないが、ガチャガチャは大型店でなくても設置できる。
実際、今や「隙」あらば、ガチャガチャである。
2、3台程度の設置なら、食品自販機よりも省スペースだし、
何より、ガチャガチャは電気代がかからない点が魅力だ。
無人ビジネス、自販機ビジネスは、本当に侮れない。
そう言えば、旧知のスーパーマーケットの本社を訪ねたら、
本社事務所に、一般のお客さんが出入りしていて驚いたことがあった。
何をしているのかと、お客さんの行く先を追いかけたら、
オフィスの空きスペースに、コインランドリーが設置されていた。
もちろん、執務スペースとコインランドリーは隔てられているので、
トラブルは発生しないが、
それにしても、オフィス内に設置するとは、恐れ入った。
ああ、そうか。
何も無人にこだわる必要はないのか。
人がいてもいなくても、働くのは自販機。
スペースとニーズさえあれば、それでいいのだ。
さあ、あなたの会社や店舗に、
あるいは個人で所有している場所に、
空きスペース(隙間)がないかどうか、さっそく確認してみよう。
そのわずかなスペースが、収益を生み出す原資になる。
というわけで、これがホントの「隙間ビジネス」である (笑) 。
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「つながり力で起業・新規事業!」
メールマガジンVol.203
(2024.2.13配信)より抜粋して転載しました。
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