第51回 優秀な人材が流出しがちなIT業界。経営・人事・給与計画も開示して風通しと信頼関係UPへ
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「先輩経験談 あるある!ピンチ&リカバリー」
第51回 優秀な人材が流出しがちなIT業界
経営・人事・給与計画も開示して風通しと信頼関係UPへ
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起業したては誰もが新人。独立してから遭遇する、
始動して初めてわかる、直面するピンチや悩みの数々。
そんな「起業あるある!」事例から学ぶシリーズ。
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谷津正樹さん 2003年設立
大阪市淀川区
有限会社ワイズシップス 代表取締役
https://www.wisesips.com/
一般社団法人BMS(ビジネスマッチングステージ)理事
https://www.bms8.info/
一般社団法人 アメノトリフネ 理事
https://www.ametori.net/
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大学院時代に得意のITで起業した谷津さんは、本業のほか、
2012年にビジネスマッチングに特化した会員制の交流会・
一般社団法人BMS(ビジネスマッチングステージ)を立ち上げ、
2020年には、クリエーターたちの融合・活動の場を広げる一般社団法人も立ち上げた。
3足のわらじはさぞ大変だろうと、伺うと、
「0から1を生み出すのが楽しくて。でも、とっちらかっています」と苦笑い。
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「実は他にもいろいろな事業に関わっていて、
3足のわらじ、どころかそれ以上です。
関わる人たちがどうしたら幸せになれるかが自分の根本にあって、
人さまの相談に乗って、人と人をつなげていく間に、
どうしても自分も深く関わっていくことが少なくありません。
ただ、飛びまわることも多くなり、身体の多忙さそのものよりも、
自社スタッフとのコミュニケーション不足がピンチでした。
本業の自社のスタッフから
『谷津さんの考えていることが分かりません』と言われて、ハッとしました。
このままではダメだ、と。
起業して以来、どうしたら長く勤務してもらえるかはずっと課題でした。
起業当初は、ワンストップのWebサイト制作が主業で、
無理な依頼や特急仕事も断らずに、スタッフも私も徹夜続きの過酷な日々。
当時のIT業界はどこも似たような状況でしたけれど、
関わる人たちすべてが、
「“豊かな人生”を送る」をモットーに事業を起こしたはずなのに……。
このままで良いはずがない、見直さねばと奮起し、
以降、自社商品開発に取り組み、
安定的な企業体質へとシフトチェンジしたつもりです。
それでも、人が離れていく。
今はもうIT業界に限らないことですが、終身雇用の時代ではないとはいえ、
2年くらいは学びの期間だと投資のつもりで育てて、
ようやく力が着いたなと思ったら、他社から引き抜かれたり、
報酬比較で、いとも簡単に去ってしまう。
この状況を何とかできないかとずっと考えてきました。
スタッフから『考えていることが分かりません』と言われたのを機に、
どうしたら理解し合えて、安心して、幸せも感じてもらえるかを考え、
毎年正月に立てている経営・人事計画を、
自社スタッフにも開示して、オープンにするようにしました。
ちょうど私はリーマンショックの後ぐらい、15年程前から、
“一年の計は元旦にあり”と、年末年始の4、5日をかけて、
自社の今年の予想・目標・計画を練ることを恒例にしてきました。
継続して、前年の達成度はどうだったか、
点数をつけ、その分析や強み・弱みも洗い出す。
そのプランの項目のひとつに、人事計画も記してきたのです。
スタッフの報酬額も具体的数値にして、
10年後に給与を○%アップすると数字を掲げ、
そのためには年の売り上げを○%上げる、そのためには○○をする、
そのためには、というように、連鎖させて計画を立てて取り組んできました。
それらをスタッフと共有し、
採用面接の際にも、それを見せながら説明するようにしたのです。
もちろん給与の数字だけでなく、事業そのものの魅力、
働きやすさ、職場環境も含めて言語化。
ただ残念ながら、可視化したからと言って、完璧に人材流出に歯止めが効いた!
とは言い切れないのが実情ではありますが、
以前よりは、自信と安心を持って仕事に打ち込んでもらえて、
長いスパンで働くことを考えてもらえたかなと期待しています。
ひいては、日々の幸せが増していく、そんな社風になれば嬉しく思います」
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あなたの挑戦を応援しマッスー☆
ワンポイントガイド
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人材の流出は本当に頭の痛い問題です。とくに小規
模ビジネスの場合、一人抜けただけでも大きな戦力
ダウンにつながります。ところがDXの推進は、企業
が自社内にIT人材を抱え込む流れを生み出しており、
IT企業からユーザー企業へ転職する人を増やす結果
になってしまいました。谷津さんの悩みは、いわば
構造的な問題に起因しています。ですが彼は、持ち
前の研究熱心さと抜群の行動力を発揮して、業界が
抱える問題をクリアしようと戦っています。もっと
も、そういう谷津さんの努力は、スタッフには理解
しにくい面もあるでしょう。これはもう仕方のない
ことです。そう割り切ったうえで谷津さんに期待し
たいのは、人材の技量をケイパビリティにしないビ
ジネスモデルの開発、もしくは反対に、人材の固定
化につながる独特な組織風土の確立。このいずれか
で現状を突破できないか、ということです。どちら
に取り組むにしても大変な道ですが、それをやれる
のが谷津さんだと思っています。彼が切り開く「次
のステージ」が、今から楽しみです。(ますだ)
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「つながり力で起業・新規事業!」
メールマガジンVol.203
(2024.2.13配信)より抜粋して転載しました。
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