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厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、NICe増田代表理事が送る、視点・分析・メッセージ 。21日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
「まん防」の一日も早い解除を!



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 「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

 第99回 「まん防」の一日も早い解除を!

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【ダラダラと36都道府県にまで拡大したまん防】

今回のまん延防止等重点措置(まん防)の発動は、
本当に必要だったのだろうか?

あらためて、まん防の摘要状況を振り返る。

1月9日、広島県、山口県、沖縄県の3県に摘要。
1月21日、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、
岐阜県、愛知県、三重県、香川県、長崎県、熊本県、宮崎県の13都県に摘要。
1月27日、北海道、青森県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、石川県、
長野県、静岡県、京都府、大阪府、兵庫県、島根県、岡山県、福岡県、
佐賀県、大分県、鹿児島県の18道府県に摘要。
さらに2月5日には和歌山県、2月12日には高知県にも摘要が広がった。

なお、山形県、島根県、山口県、大分県、沖縄県は2月20日までだが、
それ以外は3月6日までの摘要になっている。

「その甲斐あって陽性者が減少傾向に転じている」という見方もあるが、
まん防は人々の行動を規制し、
他者との接触機会の低減を狙った措置である。
そうであれば、見るべき数値は新規陽性者数ではなく、実効再生産数だ。


【実効再生産数のピークは1月12日】

ちなみに実効再生産数とは、
1人の感染者が、次に平均何人にうつすかを示す指標で、「Rt」の記号で表される。
Rt=3.000なら、1人が平均3人に感染を広げていることになり、
この状況が1週間続けば、3人、9人、27人、81人、243人、729人、2187人と、
ネズミ算のごとく、感染が拡大していくことなにる。

オミクロン株の感染力が強いことはよく知られているが、
では、実際どれくらいの実効再生産数を記録していたのか?

全国平均のピークは1月12日で、Rt=4.502を記録。確かにすごい。
それが1月20日にはRt=2.509と激減し、
1月31日にはRt=1.547とさらに減少。
2月15日にはRt=1.006と、ほぼ「1」となり、
2月17日にはRt=0.960となって、ついに「1」を切った。

「やはり、まん防の効果が出ている」と思う人もいるかもしれないが、
あらためて上述の日付を見てほしい。「ピークは1月12日」である。


【東京都のピークアウトも、「1月21日」以前だった】

実効再生産数の推移傾向をもう少し詳しく見るために、東京都の例を挙げる。

1月5日 Rt=1.720 
1月7日 Rt=2.399
1月9日 Rt=3.521
1月11日 Rt=4.440
1月13日 Rt=4.546
1月15日 Rt=3.835
1月17日 Rt=3.224
1月19日 Rt=2.931
1月21日 Rt=2.777

どうだろう。やはり全国平均と同様、1月11日から13日がピークで、
以降、実効再生産数は確実に減少している。

ところが、東京都をはじめとする13都県にまん防が適用されたのは、
ピークアウトが始まってから10日近く経った1月21日だった。

要するに、日本国民の多くは、自らの判断で他者との接触機会を減らし、
まん防摘要前から、自律的に実効再生産数を下降させていたのである。

にもかかわらず、テレビ番組は事態を煽るように、
わざわざ人流の多いエリアにカメラを持ち込み、
それに不安を抱く人の声を拾ってオンエアすることで、
「政府や自治体が何もしないのはおかしい」というキャンペーンを張っていた。
まったくもって、いらぬお世話だったのである。


【世論という名のマスコミに屈した政府】

他国民と日本人とを単純に比較はできないが、
自制心に関して言えば、私たち日本人はやはり強いものを持っている。
政府にも、そこを信じてほしかった。
政府自身、本当は、まん防拡大の必要性がないことを知りつつ、
マスコミの攻撃に屈してしまったのだろう。

また、東京都などに対する3月6日までの摘要延長を決めた際、
政府は「アンケートの結果、それを望む声が多かったから」と、
何とも拍子抜けする説明を行っていた。困ったものだ。
日本人には素直な人が多いから、
「まん防の効果があった」と政府が言えばそれを信じるし、
日本人には慎重な人が多いから、
「続ける? やめる? どっち?」と聞かれれば続けると答えてしまう。
アンケートなどバイアスだらけである。

というわけで、まん防の発出は無意味だった。
もっとも、無意味で済めばまだましだ。
問題は、そのせいで、どれだけの経済的損失を招いたかである。
そして、その責任を誰が取るのかだ。


【まん防による経済損失は2.6兆円超か】

野村総研は、当初のまん防の影響を試算すると、
合計1兆7420億円規模の経済損失が生じると発表した。
さらに13都県での3週間の延長と、高知県が加わったことにより、
新たに9410億円の経済損失が追加で生じ、
両者を合計すると、経済損失は2兆6820億円に達するという。
この額は、1年間の名目GDPの約0.5%に相当する。
結果、失業者が10.6万人増加するとの見込みも合わせて発表した。

また、昨年末には持ち直してきた個人消費も、当然ながら停滞した。
付け加えれば、まん防の影響は消費意欲の減退だけにとどまらない。

飲食店などでは、度重なる時短や休業の影響で、
適切な人員を確保できない店舗が少なくなく、
サービスを提供したくても、それができない経営状況に陥っている。
「お金を使わない」+「使わすことができない」というダブルパンチ。
結果、2022年1-3月期のGDPは再び低成長に移行することは間違いない。

繰り返すが、まん防を発動しなくても、
実効再生産数はちゃんと下がっていた。
したがってこの巨大な損失は、コロナのせいではなく、
政治家の判断ミスが招いたものだと言っていい。
責任は、政府が取らなければならない。


【政府の失策に屈しない民間企業の意欲に感激】

2月10日、私はビッグサイトで開催中のギフトショーに足を運んだ。
まん防に加えて、当日の東京は大雪が警戒される状況であり、
人手はかなり抑えられているだろうと予測した。

ところが、さにあらず。
何千人、何万人という人々が、ビッグサイトを目掛けて集まってきた。
商品を販売したい人々と、商品を仕入れたい人々が織りなす熱気。
心の底から感動した。

自らの事業の成長や、自らの生活の展望を、
自らの必死の努力で切り開いていく姿は美しい。
政府の失策にめげない民間魂を見せつけられた思いだ。

もちろん新型コロナ感染症は怖い。
だからと言って逃げ回る一方では、早晩、飯の種がついえてしまう。
そうなってから悔やんでも、もう遅い。

逃げるのではなく、戦う。
政府も私たちも、この姿勢で一致団結すべき時が来ている。

まずは、これ以上まん延防止等重点措置を延長しないよう政府に望む。

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>


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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.159
(2022.2.21配信)より抜粋して転載しました。
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