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NICe増田代表理事が送る、新たなビジネスチャンス発見法と実現へのヒント。11日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
第34回 「~のはずだったのに」を回避する視点



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増田紀彦の「ビジネスチャンス 見~つけた」

第34回 「~のはずだったのに」を回避する視点
 
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東京五輪開幕がいよいよ迫ってきた。
とはいえ、一都三県の会場は無観客開催だという。
これほど異例づくめの大会になるなど、
一昨年までは誰も想像していなかった。
だから私たちは、五輪開催による経済効果を、「普通に」予測していた。

それは多くの業界にとってバラ色の近未来だった。
中でも恩恵が大きな業界にとっては金色(こんじき)に輝くものだったろう。
それが、今ではピンボケのモノクローム写真に変わり果てた。

あの頃(と言っても、わずか1年半ほど前)は、
さぞや外国人観光客が増えるものと信じていた。
英会話教室が各地で賑わいを見せていたのが、もはや懐かしい。

また、日本人・外国人を問わず、
飲食店や宿泊施設の利用者もガンガン増えると考えていたし、
その流れで、地方の「民泊」利用者も激増を見込んでいた。

ちなみに「民泊」利用者が増加すれば、
航空会社や鉄道会社、旅行会社や民泊代行会社、不動産会社、清掃会社、
家具業界や鍵業界、警備会社や保険会社、通信サービス、金融サービス、
レンタカーやレンタサイクル、通訳やガイド、荷物預かり、
イベント案内や飲食店予約など、多岐に渡る業界にチャンスが広がるはずだったし、
日本紹介サイトやプラットフォーム、翻訳サービスも活況を呈するはずだった。

さらには、人気種目の競技人口が増えることで、
スポーツ施設やインストラクターもバリバリ稼げるはずだったし、
最終的には、お祭り気分が高揚して、
五輪とは直接関係しない消費も増えたはずだ。

まさに、どこを切っても金太郎ならぬ、
どこを切っても、「~のはずだった」状態が今の日本である。

結局、予想や予測などといったものは、
当たるかもしれないし、当たらないかもしれない程度のものだ。
しかも経済効果予測は、
「何も悪いことが起こらなければ……」という条件付き予測である。
ところが多くの人々は、その条件を忘れているか、見ないようにしている。

これらの人々は、今回の五輪効果の消滅(と言っていい状態)に際し、
混乱し、困惑し、焦燥し、落胆し、自失しているに違いない。
千載一遇とも言うべきビジネスチャンスをものにするために、
自社の強みに磨きをかけ、同時に自社の弱みを克服すべく、
大変な努力とそれなりの投資をしてきただろうから、本当に気の毒だ。

しかし、世の中には一枚も二枚も上手な経営者もいる。
「世間の予測通りに事が進まなかった場合」を想定している人々だ。

むろん、そうした企業でも、
新型コロナ感染症の爆発までは想定していなかったと思う。
どのような悪い事態が発生するかを予測するのは難しい。

だが、発生すると思われている良い事態が発生しなかったら?
と、仮定してみることは、実はさほど難しいことではない。

首都圏の、とある温泉旅館。
五輪招致が決まって以降、外国人観光客の増加を期待した半面、
経営者は3つのことを懸念した。

ひとつは、「復興五輪」と言っているが、
本当に原発事故の影響が払拭できるのか?

もうひとつは、台風や豪雨などの自然災害が影響しないか?

3つ目は、何事もなく世界中から人々が集まってきたとしても、
それは一過性の現象ではないのか?
外国人観光客誘致のために有形無形の投資をして、
本当に回収できるのだろうか? と。

ここが重要ポイントだ。
ブームに乗ると決めてしまうと、視野が一気に狭くなる。

が、少し引いてその状況を見ていれば、
自ずと「別の道」も見えてくるものである。
しかも同業者は、ブームに乗ろうと夢中になっているから、
「別の道」の競争相手はほとんど存在しない可能性が高くなる。

旅館経営者は、考えた末、外国人観光客狙いは後回しにすることにし、
より持続性が高いと思われる高齢者介護市場に着目。
温泉を活かした「入浴特化型デイサービス施設」の開業に注力した。

入浴特化型をご存じない人もいるだろう。
一般のデイサービスがレクリエーションや機能訓練、
食事の提供などを行うのに対し、
入浴特化型はその名の通り、入浴に限定した支援を行う。通常、送迎も行う。
もちろん利用料の大半は介護保険で補填される。

この施設は、ゆったりした檜風呂を用意し、
浴室内の床は滑りにくい伊豆石を採用するなど、
デイサービスのイメージとは大きく異なるリッチな空間を準備した。
言うまでもなく、すでに連日予約でいっぱいである。
いやいや、まさに慧眼の至り。

「~のはずだったのに……」と嘆く事態を回避するためには、
「そうならないかもしれない」という視点で事業を考えることが不可欠だ。

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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.145
(2021.7.12配信)より抜粋して転載しました。
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