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NICe増田代表理事が送る、新たなビジネスチャンス発見法と実現へのヒント。11日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
第35回 「残存者利益」に横入り



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増田紀彦の「ビジネスチャンス 見~つけた」

第35回 「残存者利益」に横入り
 
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福井県福井市に本拠を置く三谷商事という会社がある。
東証2部上場企業である。
全国的な知名度は高くないかもしれないが、
業界関係者はもちろんのこと、
福井県民なら、まず知らない人はいない地元の超優良企業だ。

相場の「そ」の字も読めない私ではあるが、
それでも、三谷株の売買では、まずまずの利益を得た。
もっとも、かれこれ15年以上前の話だが。

その当時、北陸新幹線の延伸計画が話題になっており、
セメントや生コンの販売シェア日本一の三谷にとっては、
またとない躍進のチャンスだと私は考えたのだ。

もちろん、北陸に建設する新幹線の工事資材なのだから、
北陸の商社が取り扱うだろう、という程度の考えではなかった。

ご存じのように、戦後日本の地方経済は、
公共工事によって牽引されてきたわけだが、
2001年に発足した小泉内閣は一転、
財政再建を掲げて歳出削減を断行すると言い出し、
公共事業費を一気に10%もカットしたのである。
この流れは民主党政権時代にも引き継がれ、20年を経た現在も続いている。

こうなれば、建設業関連は軒並みピンチだ。
実際、小泉ショックにより倒産した建設関連企業は数知れず。

しかし!

日本からいっさいの工事が消えてなくなるわけではなく、
誰かがセメントや生コンを製造し、誰かが販売することは間違いない。
その誰かとは、逆風に耐えて生き延びた企業である。
そして、その誰かは、競争相手の少なさを追い風にして、
有利な事業展開を図ることができる。
こういう市場における独占的状態を、残存者利益と呼ぶ。
つまり私は三谷商事が残存者利益を獲得すると予測したのである。

とはいえ、結局のところ、
どのような要因で三谷の株価が上がったのかは明言できないし、
新幹線延伸計画はほどなく、延期となってしまった。
が、とにかく「安く買って高く売り」を何度か繰り返して、
ちゃっかりお小遣いを稼いだのは事実である(ラッキー)。

話題は現在に移る。

かつての建設業のように、今、にっちもさっちも行かなくなっているのが、
宿泊業や飲食店業である。

つい先日、ある地方都市のショッピングモールを視察したところ、
こっちもあっちも「空き物件」の張り紙が出されていて驚いた。

中には、地元でも有名な飲食店が入っていた建物もあり、
聞けば、「とうとう今年の5月で力が尽きた」とのこと。
ちなみに、その物件の隣にある店舗の経営者に声をかけてみると、
「うちもあと2カ月で閉店する」と。

コロナ禍に耐えられなかった飲食店の実態を肌で感じた。

しかし!

宿泊業や飲食店業もまた、この世から消えるわけではないし、
消費者ニーズが衰えてしまうこともない。

実際、休業要請や時短要請を無視して、
遅い時間まで酒類を提供している飲食店が、いかに儲かっているかは、
ニュースなどで多くの人が知るところである。

その経営方針の「良い・悪い」の議論ではなく、
競争相手が減れば、それだけ利益が大きいという事実に注目してほしい。
この現象も、ある意味での残存者利益である。

まあ、そうしたヤンチャなやり方を推奨する気は毛頭ない。
だが、ニーズが存在しながら、競争相手が減少している業界には、
チャンスが広がっていることは間違いないのだ。

宿泊業の買収もすでにあちこちで進んでいる。
また、飲食店業であれば、初期投資もそれなりにとどめられるので、
異業種からの参入や新規の創業分野としても魅力がある。

ちなみに、廃業した飲食店の多くは、
厨房設備や客席などを撤去する「原状回復費用」が捻出できず、
それらを「残置物」として、そのまま店内に置いていくケースが多い。
これらを新規購入しようとすれば最低でも数百万円、
さらに内装などの造作工事費を合わせれば、
たいがいは1000万円を超える費用をかけているはず。
それが、ただで手に入るのである。

中には、「固定資産の有料譲渡」を主張して、
次の店子にそれらを買い取るよう要望する元経営者もいるかもしれないが、
撤退からすぐに後釜が見つからない場合、そうした方法はまず断念する。

というわけで、
「残存者利益」が出そうな業界に目をつけ、そこにちゃっかり横入りする。
そういう視点も頭に入れて、次の挑戦を構想してもいいタイミングだ。

昨今の報道を目にしていると、
アフターコロナはまだまだ先のように思えてしまうが、
半年や1年も経てば、それなりに収束していてもおかしくはないだろう。
事業を準備するための期間として考えた場合、
半年や1年など、あっと言う間である。

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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.147
(2021.8.11配信)より抜粋して転載しました。
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