vol.145【増田紀彦の「ビジネスチャンス 見~つけた」第34回:「~のはずだったのに」を回避する視点】
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Vol.145 2021.7.12
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【1】シリーズ増田紀彦の
「ビジネスチャンス 見~つけた」
第34回 「~のはずだったのに」を回避する視点
【2】先輩経験談
あるある!ピンチ&リカバリー
第26回 上西和信さん(千葉県)
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増田紀彦の「ビジネスチャンス 見~つけた」
第34回 「~のはずだったのに」を回避する視点
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東京五輪開幕がいよいよ迫ってきた。
とはいえ、一都三県の会場は無観客開催だという。
これほど異例づくめの大会になるなど、
一昨年までは誰も想像していなかった。
だから私たちは、五輪開催による経済効果を、「普通に」予測していた。
それは多くの業界にとってバラ色の近未来だった。
中でも恩恵が大きな業界にとっては金色(こんじき)に輝くものだったろう。
それが、今ではピンボケのモノクローム写真に変わり果てた。
あの頃(と言っても、わずか1年半ほど前)は、
さぞや外国人観光客が増えるものと信じていた。
英会話教室が各地で賑わいを見せていたのが、もはや懐かしい。
また、日本人・外国人を問わず、
飲食店や宿泊施設の利用者もガンガン増えると考えていたし、
その流れで、地方の「民泊」利用者も激増を見込んでいた。
ちなみに「民泊」利用者が増加すれば、
航空会社や鉄道会社、旅行会社や民泊代行会社、不動産会社、清掃会社、
家具業界や鍵業界、警備会社や保険会社、通信サービス、金融サービス、
レンタカーやレンタサイクル、通訳やガイド、荷物預かり、
イベント案内や飲食店予約など、多岐に渡る業界にチャンスが広がるはずだったし、
日本紹介サイトやプラットフォーム、翻訳サービスも活況を呈するはずだった。
さらには、人気種目の競技人口が増えることで、
スポーツ施設やインストラクターもバリバリ稼げるはずだったし、
最終的には、お祭り気分が高揚して、
五輪とは直接関係しない消費も増えたはずだ。
まさに、どこを切っても金太郎ならぬ、
どこを切っても、「~のはずだった」状態が今の日本である。
結局、予想や予測などといったものは、
当たるかもしれないし、当たらないかもしれない程度のものだ。
しかも経済効果予測は、
「何も悪いことが起こらなければ……」という条件付き予測である。
ところが多くの人々は、その条件を忘れているか、見ないようにしている。
これらの人々は、今回の五輪効果の消滅(と言っていい状態)に際し、
混乱し、困惑し、焦燥し、落胆し、自失しているに違いない。
千載一遇とも言うべきビジネスチャンスをものにするために、
自社の強みに磨きをかけ、同時に自社の弱みを克服すべく、
大変な努力とそれなりの投資をしてきただろうから、本当に気の毒だ。
しかし、世の中には一枚も二枚も上手な経営者もいる。
「世間の予測通りに事が進まなかった場合」を想定している人々だ。
むろん、そうした企業でも、
新型コロナ感染症の爆発までは想定していなかったと思う。
どのような悪い事態が発生するかを予測するのは難しい。
だが、発生すると思われている良い事態が発生しなかったら?
と、仮定してみることは、実はさほど難しいことではない。
首都圏の、とある温泉旅館。
五輪招致が決まって以降、外国人観光客の増加を期待した半面、
経営者は3つのことを懸念した。
ひとつは、「復興五輪」と言っているが、
本当に原発事故の影響が払拭できるのか?
もうひとつは、台風や豪雨などの自然災害が影響しないか?
3つ目は、何事もなく世界中から人々が集まってきたとしても、
それは一過性の現象ではないのか?
外国人観光客誘致のために有形無形の投資をして、
本当に回収できるのだろうか? と。
ここが重要ポイントだ。
ブームに乗ると決めてしまうと、視野が一気に狭くなる。
が、少し引いてその状況を見ていれば、
自ずと「別の道」も見えてくるものである。
しかも同業者は、ブームに乗ろうと夢中になっているから、
「別の道」の競争相手はほとんど存在しない可能性が高くなる。
旅館経営者は、考えた末、外国人観光客狙いは後回しにすることにし、
より持続性が高いと思われる高齢者介護市場に着目。
温泉を活かした「入浴特化型デイサービス施設」の開業に注力した。
入浴特化型をご存じない人もいるだろう。
一般のデイサービスがレクリエーションや機能訓練、
食事の提供などを行うのに対し、
入浴特化型はその名の通り、入浴に限定した支援を行う。通常、送迎も行う。
もちろん利用料の大半は介護保険で補填される。
この施設は、ゆったりした檜風呂を用意し、
浴室内の床は滑りにくい伊豆石を採用するなど、
デイサービスのイメージとは大きく異なるリッチな空間を準備した。
言うまでもなく、すでに連日予約でいっぱいである。
いやいや、まさに慧眼の至り。
「~のはずだったのに……」と嘆く事態を回避するためには、
「そうならないかもしれない」という視点で事業を考えることが不可欠だ。
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「先輩経験談 あるある!ピンチ&リカバリー」
第26回
苦手だと思い込んでいた営業で開眼。
他者への関心・好奇心で、人から学び続ける経営者に
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起業したては誰もが新人。独立してから遭遇する、
始動して初めてわかる、直面するピンチや悩みの数々。
そんな「起業あるある!」事例から学ぶシリーズ。
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上西和信さん 1968年創業、2003年承継
千葉県木更津市
株式会社東和機材 元取締役会長
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父親が創業した住宅設備機器の卸販売業を継いだ上西さんは、
昨年6月、会長職を辞して、会社組織から完全卒業した。
今年2月からはほぼ毎日、経営者団体の裏方として鴨川市へ赴き、
市内の各企業や経営者に会い、話を聞く充実の日々だという。
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「経営者時代を振り返ればエピソードは多々あるけれど、
ピンチよりも、いいことしか思い出せません(笑)。
カラ元気だけでやってきて、人との出会いで、成長させてもらった。
みなさまのおかげ、としかない。それは今もです。
ただ、私に限らず、会社組織での困りごとの8、9割は、
人間関係のことじゃないかなぁ。
私が専務だった時に、営業所を新規につくることになって、
面接をして、ひとりの女性を採用したのだけど、
この社員の扱いが難しかった(笑)。
仕事はできるけれど、気が強くて、しょっちゅう意見を言ってきて、
そのつど『すみません』って、なんで俺が謝るのかと……。
でもそうやって、年代や性別や価値観や視点の異なりを、
人と接することで知ったり、学んだりすることが、
経営者だろうが一社員だろうが、大切なことだと思うのです。
『経営者には、経営戦略や人心掌握術が必要だ』とか、
よく耳にするけれど、
そういうスキルやノウハウ、資格、肩書などではなくて、
経営者や長となる人は、人としての総合力というか、人間力が、
何より大切ではないでしょうか。
人と人の間、人の機微を感じ取る力は、人間関係で苦労して、
もまれながら養えるし、誰からでも、人と出会うことで、
素直に学ぶ姿勢を忘れずにいる、と言うか。
それでしか、人としての資質は磨けないような気がします。
ではどうすれば磨けるか、という意味でも、
何かと理由をつけて人さまに会える営業職っていうのは
いい職務だなぁと改めて思います。
昨年、会長職を辞めた理由は、“長”が組織に2人もいると、
下はいろいろやりにくいだろうな、と思ったのと、
正直、会長になってから外に出る機会も人も会う機会も減って、
やることといえば資金繰り、会うのも金融機関の人ばかりで、
楽しくないというのも本音です(笑)。
長年営業畑できた自分は、人に会うのが大好きだったから。
でも、若い時は、営業はやりたくないと、
やる前から毛嫌いしていたんですよ。
10円で仕入れたものを12円で売るような仕事は嫌だ、なんて生意気だよね。
いざ実際にやってみると、いいお客さんにも恵まれて、
意外にも、営業の仕事が大好きになりました。
なぜかって、スケベ心(笑)というか、人への好奇心・関心です。
会ってみたくなる、会うとまた話を聞きに行くのが楽しくて楽しくて。
よく、『営業イコール自分を売れ、自分のファンを作れ』とか言うけれど、
私は全く逆で、こちらがお客さんのファンになってしまう。
同業者の営業が敬遠するような、お堅い会社の偏屈な(笑)
年配の経営者のところへも、好奇心が先立って、会いに行く。
そうすると、相手も面白がってくれてね。ますますファンになる。
そうやって、人間勉強をさせてくれるのが、営業の醍醐味だし、
経営者にも必要な機会だとつくづく思っています。
それが今も原動力になって、経営者団体の会長と一緒に、
いろんな人に会いに行く毎日が楽しくて仕方がありません。
最初は毛嫌いしていた営業を長年やってきたおかげで、
人と出会うこと、自分から行動することで、学べる多さを実感したし、
今もますます人への関心が増して、行動あるのみと思えています。
コロナの影響で、みなさん、人に会いに行くのも難しい状況だろうけれど、
ふらり出向いた先で、偶然の出会い、運命の出合なんて多々あります。
やりたいと思ったら自分一人でも行動を起こすこと。
経営者に限らず、どんな立場の人でも、いくつになっても、
人との出会いから学ぶこと、そのために行動することをお勧めしたいです」
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あなたの挑戦を応援しマッスー☆
ワンポイントガイド
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上西さんは、「うえにし」さんではなく、「じょうにし」さんと
お読みします。ですので、多くの仲間が苗字をもじり、親しみを
込めて「ジョニーさん」と呼びます。本当に気さくで、誰に対し
ても分け隔てなく接する姿勢は、私にとってもお手本です。そう
いえば、以前、千葉県を大型台風が襲ったとき、心配でジョニー
さんに電話をしたら、「あ、増田さん。うん、被害はないよ。そ
んなことよりさ、いつ、建材を引き取ってくれるの?」と……。
「ん? ガレキか何かを撤去してほしいってことか」と考えたも
のの、その後も話がかみ合わない。要は、ジョニーさんが「増田
さん違い」をしてたって話なんですが、そういうツッコミ所満載
なところも、また彼の魅力だったりします(笑)。そんなジョニー
さんも、従業員のことでは頭を痛めた経験があるとか。この問題
は本当に多くの経営者にとって悩みのタネですよね。では、どう
解決するのか? 実に素敵な答えをジョニーさんが語ってくれて
います。自らとは異なる視点や価値観を学ぶ機会にすればいいの
だと。本当にそうですね。この考え方は、「異業種・異地域・異
世代の仲間をとつながろう」と訴えるNICの活動にも通じます。
あらためて、「異なる相手とのかかわりを通じて人は豊かになれ
る」という考えに、ジョニーさんからお墨付きをいただいた気分
です。ありがとうございます。(ますだ)
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┃ ┃ ┃ ┃ ┃編┃集┃後┃記┃ ┃
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先輩経験談に登場いただいた上西さんことジョニーさんと、
初めて会ったのは、千葉市で開催されたNICeの勉強会でした。
でも実はジョニーさん、「コンサートを観るはずだったのに」とのこと。
何と、いざ会場へ来てみたら、同会場の大ホールで
バイオリンコンサートがあると知り、当日券を買おうと窓口へ。
しかし残念ながら(幸いにも)、チケットは既に完売。
気を取り直して、当初の予定通り、NICeの会のほうへ(笑)。
そこで増田代表の講演に心を打たれ、
以降、都内や千葉県内だけでなく、福島県での
NICeイベントにも欠かさず参加くださる常連さんとなりました。
「自分が相手のファンになる」とおっしゃいますが、
ジョニーさんのファンも、全国に数多くいらっしゃることでしょう。
「つながり力で起業・新規事業!」
次号のNICeメルマガは、7月21日頃の配信予定です。
(NICe広報・岡部)
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