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NICe増田代表理事が送る、新たなビジネスチャンス発見法と実現へのヒント。11日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
第32回 「みかん」の「みかん」



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増田紀彦の「ビジネスチャンス 見~つけた」

 第32回 「みかん」の「みかん」
 
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何となくテレビを眺めていたら、CMにデヴィ夫人が出ていた。
年齢は存じあげないが、それなりのご高齢のはず。
長く元気に活躍されていることに、敬意が湧く。

その夫人がアピールしていたのが、「柑気楼」という育毛剤だ。
私自身は育毛剤を使用した経験がなく、
どの商品がいいと悪いとか、そのへんの知識は持ち合わせていない。
この商品も2004年の発売らしいが、正直、CMを見るまで知らなかった。

知らなかったが、一度聞いたら、スッと頭に入った。
「かんきろう」という言葉の歯切れの良さもあるが、
やはり「柑」の字が、成分への関心をいざなうのだろう。

案の定、同商品の主要成分は、3種類の柑橘類だった。
ひとつは青柚子エキス。もうひとつは橙(だいだい)エキス。
そして、あとひとつが青みかんのエキスだ。
同商品のサイトを見たところ、
「天然成分の中でも特にこだわっている」のが、
この青みかんのエキスだそうで、重要な保湿成分だと書いてあった。

青みかんとは、まだ糖度が上がってこない若いみかんのこと。
時折、食用として出される青いみかんもあるが、それとは違い、
本来、黄色くなってから商品になるものを、あえて早摘みしたものだ。
ゆえに、とてもではないが、口に入れられるような代物ではない。

なにしろ硬い。カッチンカッチンだ。
私の実家もみかん栽培を手がけていたのでよく知っているが、
まだ青いみかんは、さながらゴルフボールで、
もし、それが飛んできて頭にでも当たれば、大変な事態になるのである。
もっとも、青みかんが高速で飛んでくることは滅多にないが(笑)。

軽口はさておき、ここからが大事。
青みかんは、「生鮮食料」としての価値は有していないが、
別の商品としての価値であれば、すでに有している、という視点である。

言い換えれば、時間をかけ、手間をかけなくても、
「金になる」ものは、実はいろいろあるかもしれないという話だ。

もう一度、早摘み青みかんに話を戻す。
これを活用した別の商品もある。

山口県周防大島の『瀬戸内ジャムズガーデン』が開発した、みかんジャムだ。
柑橘類の皮を活用したジャムをマーマレードと呼ぶのはご存じのとおり。
オレンジマーマレードやレモンマーマレードは有名だが、
みかんのジャム(マーマレード)は、
同店が売り出すまで、この世に出回っていない製品だった。

なぜ、なかったのか?

マーマレードの美味しさは、甘味とコラボするピールの苦さにある。
ところが残念なことに、みかんの皮には苦みがないからだ。

周防大島と言えば、温州みかんの一大産地。
その島でジャム専門店を営むのに、みかんのジャムがないのは、
どうにも悔しい。どうにかできないものか……。

そんな店主や柑橘類生産者たちの思いはほどなく叶う。
青い段階の、あのカチカチのみかんの皮を使えばいいのだと。
熟す前のみかんの皮は、実は苦いのである。

かくして、みかんマーマレードの誕生となったが、
喜んだのは、店主や消費者だけではなかった。
むしろ、誰よりも喜んだのは、生産者たちだったかもしれない。

そりゃそうだ。
夏のうちに出荷できるということは、
作業も減るし、農薬散布の回数も減るからコストも下がる。
しかも、出荷直前のみかんが台風などによってダメになる心配もない。
何より、秋冬まで待たずに売上が立つ。
まさにいいことづくめである。

「柑気楼」と契約しているみかん生産者も、
おそらく同様のメリットを感じているはずだろう。

話は一転、マイクロソフト(MS)の「Officeシリーズ」に飛ぶ。
OutlookやExcelを使用していると、時折不具合が生じることがある。
そんな時、そのエラーをMSに報告するというメッセージが現れる。

「なぜ客のオレがメーカーに協力しなきゃならないんだ」と、
腹を立てて、報告をキャンセルする私だが、
世の中の少なからぬ人々は、素直にMSに情報を提供しているだろう。

要するに、MSは未完成のアプリを堂々と商品として売り出し、
問題があったからといって詫びるでもなく、それどころか、
その問題を顧客に報告させて完成品に近づけようとしているのである。

生真面目な日本人気質にもとづけば、あり得ない考え方だが、
実際、市場がそれを許容しているのだから、文句を言ってもしょうがない。

というわけで、本日の結論。

商品=完成品という固定観念から解放されること。
「未完」もしくは「途中」も、見方を変えれば十分、商品になる。

ちなみに私は子供の頃、カブトムシを町の子供に売りつけたりしたが、
販売期間の短かさが、どうにも口惜しかった。
あの頃、「孵化させる楽しみ」を訴えて、
幼虫の段階から売り出す視点があれば、もっと儲かっていたはずだ。


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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.141
(2021.5.11配信)より抜粋して転載しました。
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