第31回:「いいにおい」が漂う商売
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増田紀彦の「ビジネスチャンス 見~つけた」
第31回 「いいにおい」が漂う商売
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横浜市の海岸近くや三浦半島の各地で異臭事件が相次いでいる。
多くの人が「ガス臭い」と証言するにおいの原因は何なのか?
昨年10月、異臭現場から採取した空気の分析が行われ、
イソペンタンなどガソリンに含まれる物質が検出されたが、
検出物質の濃度は、人間がにおいを感じるほどの濃度ではなかった。
専門家の多くは、「どうやら硫黄系らしい」とコメントしている。
もっとも硫黄系物質は、自然由来のものあれば、人工のものもあり、
結局、いまだ原因の特定には至っていない。
「時々においがする」だけなら、我慢するという手もあるが、
そのにおいが、重大な問題の発生を示す信号だとしたら、無視できない。
原因の解明と対策に、今以上に注力してほしいと願うばかりだ。
そう、においは信号なのだ。
信号といえば、交通信号機が思い浮かぶ。
しかし、世界広しといえども、嗅覚式信号機はいまだ登場していない。
バラの香りが漂ったら進め、排水溝のような悪臭が漂ったら止まれ……。
あるわけないよな(笑)。
もっとも、そんな信号機が導入されたら、私はおおいに困惑する。
「うそっ、何も感じないの? 変なにおいがするでしょ」。
その言葉を、60年を超す人生の中で、何度女性から浴びせられたことか。
先に言っておくと、この問題は、私個人の能力の問題ではない。
ご存じの方もいるだろうが、嗅覚能力は男女の差が甚だしい。
言うまでもなく、においに敏感なのは女性である。
実際、アロマテラピーに関心を寄せたり、職業にしたりする人の多くが女性だ。
この男女差については、昔から知られているようで、案外そうでもなく、
2017年発表のマウスを使った実験結果に基づく論文で認知された。
ちなみにその実験では、性腺(オスは精巣、メスは卵巣)を除去した場合、
オスもメスも、嗅覚がほぼ同じ精度になるということも判明している。
つまり、嗅覚の男女差とは、性ホルモンの違いに起因しているということだ。
そう考えると、女性の調香師や料理人たちが、
「生理中は匂いや味のチェックを避ける」という暗黙のルールにも納得がいく。
とはいえ、男性である私だって、何も嗅ぎ分けられないわけではない。
好きなにおいもあれば嫌いなにおいもある。
ちなみに私が好きなにおいのベスト5は以下。
第1位 よ~く干した布団に顔を埋めた時のにおい
第2位 石油(とくに灯油)のにおい
第3位 沈丁花(じんちょうげ)の花のにおい
第4位 焙煎したての珈琲豆のにおい
第5位 正露丸のにおい
2位と5位は、むしろ悪臭と言う人もいるだろう。が、私は好きなのだ。
好きなものはしょうがない。文句があるなら、私の大脳辺縁系に言ってくれ。
ちなみに「金(カネ)のにおい」も嫌いじゃない(笑)。
反対に、嫌いなにおいのベスト5も書こうかと思ったが、
たとえば、アルミ皮膜塗装工場のクロム系のにおいとか、
メッキ工場の甘ったるいシアン系のにおいとか書いても、
嗅いだことのない人はピンと来ないだろうし、
そもそも悪臭系統は、有機物の腐敗と密接で、
書くこと自体が躊躇われるような具体例も少なくないので、割愛する。
と、言わざるを得ないほど、においは私たちの脳内において、
「怖いこと」や「危ないこと」と密接にリンクしているのである。
そういう意味では、冒頭でも触れたように、においは重要な信号だ。
なので、無闇矢鱈に脱臭や消臭に励むのは考えものである。
が、恐怖や危険と潜在意識でつながる不快なにおいは、
できるだけ嗅ぎたくないのも正直なところだ。
では、どうすればいいのか?
まずは、においの発生源となる物質の管理をきちっとすること。
簡単に言えば、掃除や整理を怠らないことだ。
次に、物理的な方法や化学的な方法でにおいを取ること。
物理的方法とは、活性炭や珪藻土のような、無数の穴があいた物質を使って、
においの原因となる物質を吸着する方法のことで、
業界では、この方式を「脱臭」と呼んでいる。
一方、化学的方法とは、たとえばアルカリ性の物質に酸性の物質を加え、
中和さてしまうといった類のことで、こちらは「消臭」と呼ばれている。
なお、私の知り合いに、
物理的方法と化学的方法を同時に発揮する素材を開発した人がいる。
もし、興味のある人がいたら、私まで一報を。
そういうわけで、脱臭や消臭のための素材や製品は多く開発されているが、
私はそれらの技術や素材が、悪臭の発生源に対して効果的に投入されている、
とは、どうにも言い切れない気がしている。
悪臭発生源を列記すると、
産業廃棄物などの焼却、工場の煤煙や排出空気、排気ガス、トイレ、
汚水(排水溝や汚水槽など)、飲食店などから出る調理のにおい、
畜舎、生ゴミ、タバコ、香水や化粧品、ペット、生活臭、体臭……。
他にもあるだろうが、
個人向け、家庭向け、事業所向けなどに分けて考えてみると、
まだまだ対策の隙間が見つかりそうな気配である。
というわけで、「におい取りビジネス」の成長性について言えば、
結構「いいにおい」が漂っているのである。
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「つながり力で起業・新規事業!」
メールマガジンVol.139
(2021.4.12配信)より抜粋して転載しました。
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