第23回 第三の高齢者マーケット
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増田紀彦の「ビジネスチャンス 見~つけた」
第23回
第三の高齢者マーケット
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知事選は現職・小池百合子氏の圧勝だった。
その結果には驚かないが、テレビの街頭インタビューを受けた若い女性が、
「彼女についていけば安心」と、投票理由を語っていたことが気になった。
そう言えば、5月に「必要不急」の用事があってしばらく大阪にいた際、
いきつけの居酒屋の女将さんが、
「私らは吉村さん(知事)の言うことやったら、何でも聞きます」と、
東京の女性と同じようなことを言っていたのを思い出した。
ピンチの時代に、強いリーダーシップを発揮する人が人気を博すことは、
特別珍しいことではない。
ただ、コロナ禍という、未経験の事態が広がるなかで、
自分で物事を考えて行動する人が一気に減ってしまった気がする。
いやいや、もともと日本人は、自分で考えたり、自分で決めたりはしないよ、
というご指摘もあるだろう。
そうだとすれば、「考えず、決めず、エラい人に従う」ことが、
恥ずかしいことではない、という空気が蔓延してしまったのかもしれない。
そもそも、「不要不急の外出」を避けよと言われて、
具体的に、どこへ、何のために、どのように出掛けるのがダメなのか、
反対に、いいのか、みんなちゃんと考えていただろうか?
「それがよくわからないから、とりあえず家に閉じこもる」。
そういう人も少なからずいただろう。
実際、取ろうとする行動が、
不要不急なのか、不要至急なのか、必要不急なのか、必要至急なのかは、
それぞれの人の立場や事情によって異なるものであり、
政府や自治体が事細かに決められるものではない。
だからこそ、わかりにくい呼びかけになるのであり、
だからこそ、自分自身で考えて決めるしかないのだ。
そのうえで、一連の日々を通じて「なるほど」と思ったことがある。
高齢者の日常行動には、不要不急な事柄が多いということだ。
現役を退き、経済活動や社会活動、あるいは家庭に対する責任がない、
もしくは少ない場合、「せねばならない」ことは確実に減少する。
なので、「出掛けない」と決めたら、本当に出掛けずに済む人もいる。
私の父が、まさにそうだ。
緊急事態宣言が出される前から「外出を自粛する」と独自に宣言し、
言葉どおり、それから何カ月もの間、一歩足りとも外に出ず、
むしろ、その籠城状態を何日間継続しているか、
という記録の更新にやり甲斐を見いだしたらしく、
1カ月、2カ月と記録を伸ばすたび、嬉しそうに電話をしてきて、
そのことを自慢していたほどである。
ちなみに後から聞いた話だが、
父は同じ内容の電話を親戚中にかけまくって威張っていたらしい……。
くだらないことに異常な意欲を見せるのは、増田家の血筋だったか。
それはともかくとして、
気の毒なのは、普段の買い物から、公共機関や金融機関の用事、
薬局での薬の受け取り、郵便物の投函、ゴミだし、洗濯物干し、
玄関の掃除、庭の水撒きなど、
屋外の仕事をすべて押しつけられた母である。
さすがに、まいった母から連絡があったので、
注意しようと父に電話を入れたら、話の展開を察知したらしく、
私が注意をする前に電話を切りやがった父である。クソッ。
しかし目標未達で、おめおめと引き下がる私ではない。
私は父にZoomを教え込んだ。
新し物好きの父である。まんまと私の作戦に引っかかってくれた。
画面を通じて、「ちゃんと歩かないと血栓ができるよ」と、
私から耳の痛い言葉を浴びせられても、黙って聞くしかないのである。
なぜなら、父にはZoomへの「参加」の仕方だけ教えて、
「退出」の仕方を教えなかったからだ。ワッハッハッ。まいったか!
というわけで、今回は、高齢者の行動支援市場についての話題。
これまで高齢者市場を分類する際には、介護や介助を必要とする層と、
それを要しない元気な層に分けて考えるのが一般的だった。
ところが、コロナ禍の影響で、第三のセグメントともいうべき、
「元気だが、外出を控えて自宅に籠もる層」が誕生したのである。
冗談めかした話を続けたが、高齢者が感染症を恐れる気持ちはわかる。
だから今後しばらく、もしかすると、かなり長期に渡って、
第三のセグメントが日本中に存在すると考えてもいいと思う。
この人たちのニーズは何か?
つまり、この人たちがお金を使ってくれる理由は何か?
恥を承知で晒した、私の父や母の話が、多少はヒントになるはずだ。
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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.116
(2020.7.13配信)より抜粋して転載しました。
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