第24回 「そこそこソーシャル」でいこう!
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増田紀彦の「ビジネスチャンス 見~つけた」
第24回
「そこそこソーシャル」でいこう!
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5月のゴールデンウィークの頃だったか、ネットニュースを眺めていたら、
福島県の漬物会社が、とんでもないネーミングで商品を売り出している、
という記事にでくわした。
「おおっ、『香の蔵』さんじゃないか」。
香の蔵は、東日本大震災当時、全国にも名前が知られることとなった、
福島県は南相馬市にある、県内有数の漬物販売店だ。
経営するのは菅野漬物食品で、
ここの生姜の味噌漬けやチーズの味噌漬けは、絶品中の絶品である。
以前、私の講演を聞きに来てくれた同社の菅野社長は懇談の席で、
「私は大の酒好きで、いいツマミがほしいと考えているうちに、
チーズの味噌漬けに行き着いたんですよ」と教えてくれたことが思い出される。
記事を読むと、コロナ禍の影響で、香の蔵も業績が悪化しているとのこと。
あの震災や原発事故を乗り越えてきた同店でも、やはり厳しいのか……。
しかし話は面白いことになっていく。
香の蔵のセット商品のネーミングがすごいと話題沸騰中とのこと。
『あまりん坊将軍セット』
『お願いします、買って下さいセット』
『余ってしまって、さあ大変!セット』
販売側の気持ちがストレートに表現され過ぎていて、正直、びっくりした。
ここが学習ポイントの一つ目だ。
言うまでもなく、単品の商品であれば、こんなネーミングはできない。
「期間限定」×「セット商品」だから、できるワザである。
詰め合わせの内容、販売時期、販売動機などをモチーフにすれば、
賛否両論になるとしても、強い訴求力を持つネーミングを実現できるし、
それが話題性を高めて認知度を広げることにもつながるのである。
では、このすごいネーミングのセット商品はどこで販売していたのか?
自粛期間中で、店舗には人が来ないはず……。
販売を手がけたのは、『ふくしま!浜・中・会津の困った市』という、
オンラインショップである。
https://iandu.shop-pro.jp/
ここまでのポイントをまとめると、販売チャネルにオンラインを選択した場合、
インパクトの強いセット商品が消費者の耳目を集めるということである。
では、このショップを運営しているのは誰か?
福島県いわき市で活躍する、いわきユナイト株式会社である。
同社の植松社長も私がよく知る人物で、誠実な人柄が実に魅力的だ。
その植松社長らしい、取り組み開始の動機がサイトに掲載されているので、
以下、引用したい。
「ふくしま!浜・中・会津のお取り寄せ」は
2020年4月にスタートしました。
これまでは自社でプロデュースした商品を中心に販売してきましたが、
新型コロナウイルスの影響によって、
弊社を含め、福島県内の多くの事業者が
出荷停止、売上激減などに陥ってしまい、
これを乗り切るために当ショップで
福島県内の多くの事業者の商品を販売し始めたことがきっかけです」。
どうだろう?
大言壮語するわけでもなく、
歯の浮くようなキレイゴトを並べているわけでもない。
率直に、自社も困っていると記したうえで、
大同団結を押し進めた経緯が書かれている。
ここが学習ポイントの二つ目であり、今回のコラムの核心だ。
曰く、「ウイズコロナの時代の営業は、ソーシャルであれ!」である。
無条件に、「困っている人を助けよう」と考えて行動する人は、そう多くない。
しかし、「どうせ買うなら、困っている人たちから」と考える人は確実にいる。
助け合いの精神は、まだまだ廃れていない。
「この事業は(この取り組みは)、コロナ苦境に対抗するためのもの」。
そういう、社会性を持ったスタンスで事業を進めることが今の時代は肝要だ。
ただし、「社会性のハードル」を上げすぎないことも大切である。
応援したくても、容易に応援できないような事柄を要求するのは禁物。
例えば、日常的な消費範囲の金額を大きく超える商品を購入してもらおうとか、
金銭支出だけなく、何らかのアクションもしてもらおうとかは、壁が高い。
「ほどほど」の応援をオーダーするのがミソだ。
また、立派すぎる話も自らの首を締めかねないので気をつけたい。
「世のため人のため」を訴えすぎると、胡散臭くなってしまう危険があるし、
またそうすると、自らの利益を後回しにせざるを得ない展開にもなりかねない。
だから、いわきユナイトの、
「自社も困っているし、周りも困っているので、一緒に頑張る」、
というメッセージが、実に適切・適格なのである。
曰く、「ウイズコロナの時代の営業は、そこそこソーシャルであれ!」である。
この時代、困っているのなら、正直に困っていると言おう!
ただし、泣き言で終わってはダメ。
困っている状況を打破するために、こういう取り組みを考えた。
なので皆さん、よろしくお願いします、と、前向きに訴えていこう!
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「つながり力で起業・新規事業!」
メールマガジンVol.118
(2020.8.11配信)より抜粋して転載しました。
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