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NICe増田代表理事が送る、新たなビジネスチャンス発見法と実現へのヒント。11日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
第21回 取るに足らない「転売ヤー」



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    増田紀彦の「ビジネスチャンス 見~つけた」
 
     第21回 取るに足らない「転売ヤー」

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自宅に常備している小麦粉の残りが少なくなってきたので、
スーパーの売り場を覗いてみたら、ひとつもない。
そういう状況が起きていると、ニュースで見聞きはしていたが、本当だった。

もっとも、小麦粉の品切れは、
ニュースなどで言われている、「転売ヤー」の行動が主因ではない。
小麦の生産量・輸入量、小麦粉の製造量・流通量は、そんな小さなものではない。

転売ヤーが、数千人、数万人と束になって買い占めたところで、
市場に及ぼす影響など、微々たるものだ。

では、何が影響しているのか?

その前に、小麦粉の原料となる小麦は、どこからやってくるかご存じだろうか?
日本国内で生産される量は、国内流通量全体のわずか数%に過ぎず、
90%以上が、アメリカ、カナダ、オーストラリアの3カ国から送られてくる。

昨年、オーストラリアは異常な乾燥に見舞われ、
アメリカやカナダも干ばつ気味だったため、
今年に入ってから、これら3カ国からの輸入量が減少している事実がある。
加えてコロナ禍により、食料供給の自国優先主義も台頭してきた。

もっとも、こうした事情は長期的に見れば、懸念材料ではあるが、
今の今に関して言えば、国内備蓄量は十分と言える。
つまり、原料不足が現在の品不足の理由ではない、ということである。

結論。小麦粉不足を招いた最大の理由は、私たち自身だ。
外出自粛により、家庭内での食事の機会が増加し、
それにともなって、小麦粉の消費量が急増したためである。

しかしそれなら、増産すれば済むと考える人もいるだろう。
もっともな考えだ。
実際、日清製粉も日本製粉も昭和製粉も、増産能力は十分あるという。

ところが、そこに「商売の仕組み」が絡んでくる。

コロナの国内感染拡大が本格化してきたと見るや、
小麦粉を扱う問屋が、我先にとメーカーからの仕入れ量を増やしたのである。
自らモノを作らない問屋の生命線は、「先々何が売れるか」を見抜く力だ。
その目は正しかった。
多くの家庭が、以前よりも小麦粉を求めるようになったのだから。

ところが、この流通の在り方に問題がある。
メーカーは、問屋に小麦粉を出荷する際、
20㎏入りの小麦粉袋60袋を1セットにし、
それをパレットと呼ばれる、物流専用容器に積み込んでトラックに載せる。

小麦粉を受け取った問屋は、パレットごと倉庫に保管する。
つまり納品が済んでも、パレットはメーカーに戻らない。
ひとつのパレットに積み込んだ60袋が捌けるまでは、倉庫に留まる。
そうなると、メーカーは増産したところで、出荷する術がないのである。

であれば、新たにパレットを購入すればいいのでは?
と、思う人もいるだろうが、パレットの購入価格は一基4、5万円。
1000個、2000個と増やしていけば、瞬く間に億単位の出費になってしまう。
そもそも、無くなったのではなく、一時的に戻ってこないだけの話であり、
新規に購入する必然性もない。

かくして、小麦粉の出荷量は増えない。
困った話である。
だが、困った話こそ、ビジネスチャンスの源泉だ。

パレットを買いたくないメーカーに、一時的にレンタルするサービスが出てきた。
あるいは、スピーディーに戻してもらえないパレットを、
メーカーに代わって回収してまわるサービスも人気があるそうだ。
さらには、パレットにGPS発信機を取り付けて、
所在が有耶無耶にならないよう、管理するサービスも登場したと聞く。

川下(消費者寄り)で起きている問題は、
川中(流通)に、さらに川上(生産)へと遡上して要因を探ると、
実像がハッキリしてくる。

「小麦粉が足りない。では、買い占めて高く売ってやろう」。
こんな行動は、ビジネスではない。単なる迷惑行為だ。

ビジネスとは、課題を解決することで感謝され、お金を得る行為である。

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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.112
(2020.5.11配信)より抜粋して転載しました。
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