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vol.224【増田紀彦の視点・第132回 「緑の島」の小さな声】



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Vol.224           2025.1.21
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および全国の起業家、経営者、農林水産事業者、起業・創業希望者、
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  ┃目┃次┃ ┃ ┃ ┃ ┃ 
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【1】「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

 厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、
 増田代表が送る、視点・分析・メッセージ
   
 第132回 
 「緑の島」の小さな声
 
【2】 NICeニュース

 増田通信より「ふ~ん なるほどねえ」307号
 <最近の感知> 違いの分からない男
 ほか5本
 

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 「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

   第132回 「緑の島」の小さな声
   
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2期目を迎えた米国トランプ大統領の発言が世界を脅かしている。

そのひとつが「グリーンランドの買収」である。

トランプ大統領は1期目でもグリーンランド買収を口にしていたが、
今回はデンマーク政府が買収に応じないのなら、
デンマーク製品に対して高い関税をかける、
あるいは軍事的な圧力をかける、などと踏み込んだ発言をしている。

大統領がそこまで言う理由は何なのか?

ひとつにはレアアースの存在、
もうひとつには中国やロシアとの軍事的観点と言われている。
おおむねそういうことだと私も思う。

とはいえ、私たちはグリーンランドについて、
どの程度のことを知っているのだろうか。

メルカトル図法の世界地図を見慣れている私たちは、
日本を中心にしてはるか東側にアメリカ大陸があり、
はるか西側にグリーンランドがあるような「勘違い」をしがちだし、
そこにどのような人々がいて、どのような生活を営んでいるのかも、
ほとんど理解していないのではないだろうか。

この機会に私たちはグリーンランドについて知り、
そこに集約されている現代世界の課題と向き合うべきだと思った。


【デンマークよりニューヨークに近いグリーンランド】

まず、グリーンランドの位置について。

世界最北の陸地と言われるだけあり、同地の大部分は北極圏に属している。
また、世界最大の島でもあり、面積は日本の5.73倍に達する。
西・西南側の大半はカナダと接していて、
そのためグリーンランドとカナダとの領土紛争も長く続いていた。

島の東・東南側はアイスランドに近く、北極点を挟んだ対岸はロシアになる。

ちなみにグリーンランドの中心都市ヌークからは、
デンマークよりもアメリカのニューヨークのほうが近い。

可能なら、地球儀で北極点を中心に北半球を俯瞰してみてほしい。
少なくともグリーンランドとアメリカが、
思っているよりも近距離にあることに気付くはずだ。


【住民の9割は日本人と風貌が近いイヌイット】

グリーンランドにはおよそ5万6000人が暮らしていて、
その88%がカラーリットである。

カラーリットとは、グリーンランドに暮らすイヌイットのことで、
カナダに暮らすイヌイットと区別するための呼称だが、馴染みやすさを優先し、
ここではカラーリットについてもイヌイットと表記する。

さて、イヌイットと聞いて、みなさんはどんなイメージが浮かぶだろう。
防寒服を着込んで犬ぞりを走らせ、アザラシなど海獣の猟に励む人々。
それでおおむねあっているが、厳密に言うと、
最近はワケあって、犬ぞりの利用が減少している。ワケについては後述。

また、イヌイットと日本人の風貌が似ていると感じている人もいるだろう。
両者ともモンゴロイドなので、その認識は当たっている。


【「野菜や果物を食べないのに健康」の謎】

イヌイットについて、ひとつ興味深い話題を提供したい。

グリーンランドは極寒の地であり、農業を営むことができない。
野菜や果物から摂取するビタミンなどの栄養は健康維持に不可欠だが、
彼らが食べるのは主にアザラシなどの肉や魚類だ。

こんな食生活を送っていれば、糖尿病や心筋梗塞などの心配が高まる。
ところがグリーンランドのイヌイットの中には、
そうした病気を抱える人がほとんどいないことが明らかになっている。

彼らは「キビヤック」という独自の発酵食品を作って食べる。
それにビタミン類が豊富に含まれているのだそうだ。

「キビヤック」は、内臓や肉を取り除いたアザラシの胴体の中に、
海鳥を数百羽分詰め込み、縫合して地中に数年間埋めて熟成させたもので、
相当臭いらしい。食べてみたいような、みたくないような……。

それはともかく、風貌に加え、発酵食品を健康維持に活用するなど、
日本人との共通点を知ると、彼らとの距離が急速に縮まる気がする。


【いまだ根強いデンマーク人のグリーンランド差別】

グリーンランドはデンマークに属している。
今でこそ自治州に「格上げ」されているが、
1953年までの200年以上はデンマークの植民地にされていた。

長く続いた植民地時代の負の遺産は、
いまだにグリーンランドのイヌイットを苦しめているという。
偏見、差別、無視、抑圧、排除……。

グリーンランドの若者の多くは、地元の小中学校・高校を卒業した後、
デンマークの大学などに進学するが、ここで多くの人がその実態を痛感する。

「自分たちはデンマークのことを知っているが、
デンマークの人はそもそもグリーンランドのことを知らない」と。

このような事情を理解していない私たちは、
トランプ大統領がデンマークを引き裂こうとしているように見えているが、
当のグリーンランドの人々の思いは違う。

実際、グリーンランド自治政府はトランプ政権との対話を行うと声明しているし、
中には、アメリカの自治州になるほうがいいと考える人もいる。
もちろん多くの人は、デンマークでもアメリカでもなく、
自分たちの「国」は、自分たちで治めたいという思いが強い。

だから、トランプ発言が契機となり、
デンマーク政府が記者会見をせざるを得ない状況を作り出し、
結果、国際社会がグリーンランドに目を向けるようになったことは、
「それはそれで良かった」と評価する人も少なくないという。


【犬ぞりが走らなくなった「緑の島」】

さて、グリーンランドでは、犬ぞりが使われなくなったと書いた。
地球温暖化の影響で陸地を覆っていた氷が解け出し、
目的地まで自動車で移動できるようになったからだ。

また、氷の融解は海上交通にとっても好都合で、
オーロラ見学などのために、各地から船舶が押し寄せる状況だ。
もっとも押し寄せるのは観光船ばかりではない。
中国やロシアの潜水艦にとっても氷塊の消滅は大助かりである。

何より分厚い氷の層が消えていくことで、陸地の掘削が容易になり、
埋蔵されているレアアースやレアメタルの採掘が可能になった。

グリーンランドは、文字通り「緑の島」へと変貌しつつある。


【気候変動を加速させるレアアース採掘】

気候変動の大きな要因が、工業化にあることは誰でも知っている。
グリーンランドを含む北極海の氷の融解を放置し、
そこから鉱物資源を取り出してハイテク産業を強化すれば、
地球温暖化が一層進むことは目に見えている。完全な悪循環。

グリーンランドの問題の本質は、アメリカに売られるかどうかではなく、
温暖化を奇貨として、大国がこぞって資源獲得に奔走し、
自然環境とイヌイットの生活・文化を破壊し、
さらには気候変動を加速させてしまうことである。

デンマークの首相が「グリーンランドは売り物ではない」と言っていたが、
だったら、その言葉を、すでに現地に進出している、
外資系の資源採掘企業にこそぶつけるべきだろう。


【危ぶまれる伝統的な食生活と住民の健康】

一旦、日本の話をする。
沖縄県は長く「長寿の島」と言われてきた。しかし今では、
「働き盛りの有所見率(健診結果で異常値が認められる人の割合)が、
12年連続で日本一になってしまっている。
戦後の食生活の急速な欧米化が一因であることは間違いないだろう。

それと同じことが、この先グリーンランドにも起こるかもしれない。

氷がなくなれば、アザラシやセイウチなどもいないくなり、狩猟はできない。
そうなれば、例の発酵食品「キビヤック」も作れない。
狩猟を断念する人々は、
氷がない「おかげ」で広がる鉱工業や観光業を手がける企業で働き始める。
そして、受け取った給料でアメリカなどから輸入した小麦や牛肉を買って食べる。
やがて、生活習慣病を患う人々が増えていく……。
同じモンゴロイドとして、彼らの健康も心配だ。


【トランプ大統領ばかりに目を奪われず、もっと視野を広げよう】

この1月、アメリカのロサンゼルスで大規模火災が発生した。
偏西風の異常な蛇行が影響している。

山地から沿岸部へと吹き下ろす通称「サンタ・アナの風」に、
蛇行してきた偏西風が合流し、ハリケーン並の強風を引き起こしたのである。
偏西風の蛇行は、北極海の氷の減少によってもたらされている。

「よその国がどうなろうと知ったことか。アメリカファーストだ」。
そう主張する人の国の膝元で人命や財産が失われた。

トランプ大統領は山火事と北極海温暖化の因果関係を認めないだろうが、
実際、資本主義の欲望のツケは、
グローバルサウスの環境破壊にとどまらず、
環境を破壊し続けてきた大国自身にもジワジワと及ぶようになってきた。

トランプ大統領が何をどう考えようと、
人類が最優先すべきは気候変動対策である。

そのためにも、グリーンランドのイヌイットをはじめとする、
環境と調和して生活と産業を築き上げてきた世界の民族に目を向け、
彼らの見識を学び、主張に耳を傾けることが大切ではないだろうか。

私たちは今、トランプ大統領とどう付き合い、どう向かい合うのか、
そればかりに気を取られているが、持続可能な経済を実現するためには、
大国の言い分だけでなく、世界各地の人々の声を聞き取ることが必要だ。
たとえ、それがどんなに小さな声だとしても……。

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>



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(NICe広報・岡部)
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