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NICe代表理事の増田紀彦が、NICe正会員・協力会員・賛助会員、寄付者と公式サポ ーターへ送っている【NICe会員限定スモールマガジン増田通信】の中から、一部のコラムを抜粋して掲載しています。
増田通信より「ふ~ん なるほどねえ」293 「譲渡制限」だけで大丈夫?



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<最近の助言>  「譲渡制限」だけで大丈夫?
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読者の中には株式会社の代表者やオーナーも多いと思う。
ところで、その会社の株式には、譲渡制限が付されているだろうか?

原則として株式会社の株式の譲渡(売買)は自由だが、
小規模な会社の多くは、
「当会社の株式を譲渡により取得するには、当会社の承認を要する」、
といった文言の規定を定款に記載し、登記している。

なぜ、そうするのか?
株式がよからぬ第三者に渡ってしまうと、
経営に悪影響が及ぶ危険があるからだ。

例えば親友に発行株式の4割を引き受けてもらい、
残りの6割は自分が保有しているとする。

ところが後に二人の間に深刻な仲違いがおこり、
親友は、あろうことか半グレにその株式を売ってしまったとしよう。

「でも、自分は6割(過半数)の株式を持っているから大丈夫」、
というわけにはいかない。
決算の承認や役員の選任などは、確かに過半数の承認で議決できるが、
定款の変更や営業の譲渡などの重要な事項は、
3分の2以上の株数の承認がなければ議決ができないからだ。
6割(60%)では、3分の2(67%)に届かないから、どうにもならない。

仮に、その半グレが問題を起こさなかったとしても、
今度はその半グレが、もっとたちの悪い人物に株式を譲渡するかもしれない。
それだけは避けたいと思い、今さらながら株式に譲渡制限を付そうと考える。

だが、株式を譲渡制限株式にする定款変更を行う場合はさらにハードルが上がり、
総会を開催して4分の3(75%)以上の承認を得る必要がある。
半グレが首を縦に振るはずはないから、譲渡制限は付せないだろう。

そういう決まりがあることを知っている半グレが薄ら笑いしながら、
「おたくの株を誰かに売っちゃおうかなあ」などと言い出したら、
夜もオチオチ眠れない羽目になり、
結局は、その半グレからとんでもない高値で株式を買い取ることになる。

というわけで、自分以外の人物に株式を引き受けてもらうなら、
あらかじめ定款に、すべての株式に譲渡制限を付す旨を記すべきである。

では、譲渡制限を付していれば、完全に安心なのか?
そうとも言えない。
前出の株式4割を所有している親友にもう一度登場してもらう。

今度は仲違いすることなく、平穏な日々を送っていたとする。
ところがある日、親友が急逝し、そのために株式が相続されることになる。

以下は大事なポイントだ。
仮にその株式に譲渡制限を付していたとしても、
相続による株式の取得は妨げられないのである。
運悪く、相続人がよからぬ人物であれば、結局、ピンチに立たされる。

両者が合意して買い取れればいいが、相続人はよからぬ人物。
簡単に交渉が進むとは思えない。

とはいえ、打ち手はある。
そうなった場合、強制的に買い取ることを可能とするルールがあるのだ。
買い取り価格は裁判所で決定する。
手続きはちょっと面倒だが、ひどい事態に陥ることは回避できる。

ただし、相続人から強制的に株式を買い取るためには、
これも、あらかじめ定款に規定を設けておくことが必須だ。

「当会社は、相続その他の一般承継により当会社の株式を取得した者に対し、
当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる」などと記載する。

株式の譲渡制限を設けている会社は多いと思うが、
「相続人等に対する株式の売渡し請求」を定款に記載している会社は、
けっこう少ないのではないだろうか。

念には念を入れて損はない。
定款に1項目加えるだけで、不測の事態に対する不安を払拭できるのだから。

なお、合同会社の持分(出資分)については、譲渡制限を付せない。
というか、譲渡制限する必要がない。
そもそも合同会社の場合、他者に持分を譲渡するためには、
「出資者全員の承諾を要する」という決まりがあるからだ。
つまり、最初から譲渡が制限されているということである。

では、合同会社の出資者が亡くなり、持分が相続されたら?

この点も心配はない。
合同会社の持分は、相続の対象にはならない。

合同会社の出資者が死亡した場合、
その段階で出資者は出資者ではなくなるのが合同会社のルール。
(ただし、遺族が出資分の払い戻しを合同会社に請求することは可能)

あとあとのことを考えると、小規模な会社を設立するなら、
株式会社より合同会社のほうが、心配がなくていい。そんな気がしてきた。

会社の設立は、自己と社会とをじかに結ぶ素晴らしい方法だが、
時間が経過することによって、会社にもいろいろな課題が生じてくる。
そうした課題に先回りして手を打っておくことも、起業家の務めの一つだ。

あなたの会社の定款には、
リスクを回避するための条項がどれだけ記載されているだろうか?

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増田紀彦NICe代表理事が、毎月7日と14日(7と14で714(ナイス)!)に、
NICe正会員・協力会員・賛助会員、寄付者と公式サポーターの皆さんへ、
感謝と連帯を込めてお送りしている【NICe会員限定レター「ふ〜んなるほどねえ」スモールマガジン!増田通信】。
第293号(2024/6.7発行)より一部抜粋して掲載しました。
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