増田通信より「ふ~ん なるほどねえ」291 飲まない香港人、飲む日本人
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<最近の対比> 飲まない香港人、飲む日本人
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かつては「食在広州」と言われたそうだが、現代は「食在香港」である。
もっとも広州市と香港は鉄道一本で行き来できる近さだし、
どちらの料理もベースは広東料理だ。
広東料理は日本の中華料理の源流でもあり、
日本人の口に最も合う中華料理と言っていい。
だから「中華」に箸を付ければ、自ずと酒を嗜みたくなる。
ところが、広東料理のメッカである香港の人たちは、
まず、飲酒をしない。老若男女問わず、ほぼ飲まない。
食事時に口にするのは、湯(スープのこと)か茶かコーラか水だ。
中国大陸全体では、むしろ飲酒はポピュラーだし、
かつての香港の宗主国であるイギリスもしかり。
なのに、香港人は飲まない。
だから飲食店にも町中にも電車の中にも酔っぱらいはいない。
いたとしたら、それはおおむね日本人だ。
ずっと、不思議だった。
大勢で集まるのが好きで、お喋りが好きで、美食が大好きな彼らが、
なぜ、酒を飲まないのか?
アルコール分解酵素を持たない人が多いのだろうか?
そうかもしれないが、そのへんの事実はわからない。
で、私の推論。
飲んでいる日本人以上に、飲んでいない香港人のテンションは高い。
ということは、香港人はアルコールの「効用」を必要としていない。
そういうことではないのだろうか。
彼らは初対面だろうが、立場が上だろうが下だろうが、
いや、それどころか、相手が言葉の通じない外国人だろうが誰だろうが、
臆せず、ずんずんぐいぐい話し掛け、
勝手に言いたいことを言い、勝手に笑ったり怒ったりし、
勝手に飽きて、勝手に別の人とのコミュニケーションに没頭する。
日本人がその様子を見たら、それこそ酔っていると勘違いするほどだ。
だが、繰り返すが、彼らは一滴も飲んでいない。
逆に考えると、なぜ、多くの日本人は飲酒をするのだろう?
余分なお金を使うことなり、安全を脅かすことすらあり、
しかも長期的には健康を害するかもしれないというのに……。
それでも飲酒をするのは、シャイな人が多いからではないか。
アルコールの力を借りて、ようやくホンネを口にできる人が、
この国には、きっと多いのだ。
ちなみに私の気質は、ほぼ香港人と一緒。
だから飲酒をしなくても、人見知りはしないし、会話もできる。
ところが自分はそうであっても、相手がシャイなら、
相手のトーンに合わせる必要がある。
相手に合わせなければ……と、思う時点で、
こちらにも一定程度の緊張感が芽生える。
だから、私も飲む。そして相手も飲む。それで用意ドン!となる。
ゆえに、日本人の民族構成が激変でもしない限り、
アルコールビジネスは不滅である!
と、言いたいところだが、
人と人とが顔を合わせて何かをする機会が減っていけば、
シャイな人がシャイのままでも差し支えなくなるので、
アルコールに対する需要は減少する可能性も否定できない。
どっちに転ぶだろうか、日本の近未来。
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増田紀彦NICe代表理事が、毎月7日と14日(7と14で714(ナイス)!)に、
NICe正会員・協力会員・賛助会員、寄付者と公式サポーターの皆さんへ、
感謝と連帯を込めてお送りしている【NICe会員限定レター「ふ〜んなるほどねえ」スモールマガジン!増田通信】。
第291号(2024/5.07発行)より一部抜粋して掲載しました。
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