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厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、NICe増田代表理事が送る、視点・分析・メッセージ 。21日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
2024年を、企業と国家の大計元年に!



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 「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

第121回 2024年を、企業と国家の大計元年に!  
 
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【二転三転した、志賀原発の被災状況】

穏やかな気持ちが一瞬にして吹き飛んだ元日の夕刻。
大津波警報発令を告げるアナウンサーの声に緊張が高まる。

徐々に能登地方の様子が報じられてくる。
ところが、志賀原発の様子がわからない。

しばらくして「原発で火災発生」とのニュースが流れた。
だが、その後、「火災は勘違い」と訂正された。

津波に関しては、
「水位計に有意な変動は見られなかった」と発表されたが、
その後、「高さ1~3メートルの津波が複数回到達した」と、これまた訂正。

人間のすることだから間違えはあるし、
大地震直後の混乱という状況もわからなくはない。

ただ、ことは原発である。
福島第一原発の出来事を胸に刻んでいるのなら、
発表が、こうも二転三転するなど、ありえない話ではないか。

仮に志賀原発が大きな事故が起こしていたら、
こんな情報管理体制で、どう緊急避難を指揮したのだろう?
想像するのも恐ろしい話だ。

北陸電力や自治体、政府だけでなく、私自身も含めて、
日本列島に暮らす人間は、3.11を本当に教訓にしたのだろうか。
あまりにも甘い見立てで、この13年間を過ごしてしまったのではないか。


【かつて体験した福岡空港でのインシデント】

地震発生翌日の1月2日、羽田空港で大きな事故が起き、
海保職員の命が奪われた。

「ああ、やっぱり」。
ニュースを見た瞬間、私はそう口にした。

というのも、かつて私自身が似た経験をしたからだ。
かれこれ15年以上前の話。

その日、福岡市での講演を依頼された私は、
羽田からJALを利用して福岡空港へ向かった。

好天に恵まれ、福岡空港到着時刻も予定通りだったと記憶している。

アナウンスが着陸降下態勢に入ったことを告げ、
機内映像が滑走路に続く誘導灯を映し出した。
すでに車輪も出ている。

そろそろ着陸だ。そう思い、軽く身構えたときだった。
機体が離陸時以上の角度で急上昇し始めた。

何だ? 何が起きたんだ?

機体はなおも上昇を続け、
瞬く間に空港を飛び越し、玄界灘上空を西へと飛び続けた。
いったいどこへ行くつもりだ?

水平飛行に移ったタイミングで、CAがマイクを握った。

「お知らせします。
着陸予定の滑走路に別の機体が停止していることを、
機長が目視で発見し、回避しました!
みなさま、安全は確保されました。大丈夫です! 
心配はございません。大丈夫です! 繰り返します……」


【「滑走路での衝突寸前は時々あること」。そうなのか?】

危機一髪だった。

のちに航空業界に詳しい人から聞いた話では、
「福岡や羽田、新千歳では、時々あること」だと。
離発着が過密な空港特有の問題だそうだ。
そうは言っても、時々あるなど許される話ではない。

たまたま私は良好な視界と、機長の咄嗟の判断で命を救われたが、
あれが夜間飛行だったら、1月2日の羽田の事故と同様か、
それ以上の惨事に巻き込まれていたはずだ。

1月17日、JALの社長が会見し、
「管制と機長とのコミュニケーションがアナログであることが、
長年の問題だった」と、淡々と語っていた。

この人は自分の言っていることが理解できているのだろうか。
問題を知りながら、長年それを放置してきたと平気で言っているのだ。

1月2日の事故が、
「時々あること」の根本原因から目を逸らし続けた結果だったと、
あらためて知り、悔しさで胸がいっぱいになった。


【35年間、「政治改革大綱」を無視し続けた自民党】

地震や航空機事故、さらに芸能人のスキャンダルなどに押されて、
自民党のパーティ券疑獄への関心が薄れた印象があった。

ところが岸田首相は、「政治刷新本部」を立ち上げておきながら、
会合での結論を待たず、突如、「岸田派を解散する」と言い出し、
「じゃあ、何のための刷新本部だったんだ?」という、
ツッコミを入れられるかたちで、再び注目を集めることに成功(?)した。

そもそも、自民党はリクルート事件で受けた打撃を契機に、
政治改革大綱をまとめ、そこに、「パーティの自粛とあらたな規制」、
「派閥の弊害除去と解消への決意」などの項目を盛り込んでいる。

その決め事を35年間も無視し続け、
長年にわたって不明朗な収入と支出を繰り返してきたのである。

にもかかわらず、自民党総裁である岸田首相は、
そのことに対する正式な弁明も反省も処罰も行わないまま、
首相派閥を解散するという「奇襲」を仕掛けることで、
論点を有耶無耶にしながら、事件の幕引きをはかった。
あわよくば、自分だけ「いい子になろう」という腹なのだろう。

わかっていたことだが、自民党には過去の教訓など存在していなかったのだ。


【ダイハツよ、富士通よ、おまえもか……】

ダイハツの認証不正取得も大事件だ。

自動車は生命を託す機械であり、
検査に不正があって許されるはずもないが、
別の側面で言えば、自動車産業はあらゆる製造業や加工業の頂点にあり、
そこが崩れれば、雪崩を打って様々な業界が苦境に立たされるわけで、
経済と雇用を守る観点からも、自動車メーカーの不正は重大事案だ。

また、イギリスで報じられている、
富士通製品の欠陥が引き起こした大量冤罪事件も酷すぎる。
富士通子会社の幹部は、「システムに欠陥があることは知っていた」と証言。
知っていながら、700人以上の無実の人々が罪人にされていることに、
長年目をつぶり、口を閉ざし続けてきたのである。

昨年のビッグモーターや損保ジャパンの不正・不祥事が、
記憶に新しい中での相次ぐ企業の不祥事……。

振り返れば、ジェネリック医薬品メーカーの不正、
ジャニーズ事務所の性加害とそれに口をつぐんできたマスコミの不誠実、
少し遡れば、東芝やかんぽ生命、スルガ銀行の不正など、
経済を牽引し、人々の生活を支えるはずの大手企業や中堅企業が、
これでもかとばかり問題を起こし続けているのが日本の産業界だ。


【過ち防止策を立てても、それが機能しない日本】

政治家も経営者も、なぜこうも同じ過ちを繰り返すのか。

過ちを過ちと知りながら、
それを繰り返さざるを得ない「事情」が、
日本社会の隅々にまで広がってしまっているのかもしれない。

確かに個人は、程度の差こそあれ、同じ過ちを繰り返す。
だが、そうだからこそ、社会的な仕組みの力を借りて、
過ちを回避するよう、努めてきたはずだ。

その仕組みが麻痺している。
いったい何がそうさせているのか?

原発の問題、航空機事故の問題、自民党の問題、企業不正の問題。
すべてに共通するのは、カネだ。


【本当に、カネあっての政治や企業活動なのか】

カネが、過ちを防ぐための仕組みを麻痺させている。

どの事象を取り上げても、関係者は問題があることを知りながら、
その問題を軽視したり、放置したり、彌縫策で済ませたりして、
抜本的な改革に手を着けないまま時間を重ねてきた。

なぜなら、改革することでカネを得る機会が失われる、
あるいは、余計なカネが出ていくことになるからだ。

カネあっての政治であり、カネあっての企業活動。
この「確信」が揺るがない限り、
どんな過ち防止策も最終的には無力化してしまうだろう。


【カネが悪いのではなく、短期での儲け主義が問題】

もちろん、カネは必要だ。
カネのない桃源郷のような世界など、正直、イメージできない。

とは言え、カネだけを追えば、その反動で大切なあれこれを失い、
最後は、一番欲しかったはずのカネまで失うことになるのではないか。

カネは営々と、稼ぎ続けるものである。
稼ぎ続ければ、家庭も企業も国家も維持できる。

なのに、短期間に余るほどのカネを掴もうとするから、
無理が生じ、ひずみが生じ、不正を生み出してしまう。


【今の日本に必要なのは、過去にとらわれない大計】

「競争に打ち勝ち、資本を増殖させ、
さらにその力で競争に勝ち続けるためには、スピードが大事だ」。

そんな古典的な理屈で、短期成果主義を肯定する人もいるだろう。
だが、その考えを押し進めてきた結果を冷静に見つめてほしい。

どこかの国の首相が言っていたではないか。
「新しい資本主義をつくろう」と。

短期で儲けることを評価・賞賛する風土を改め、
長く豊かであり続けるための方途を探求し、立案する。
私が考える新しい資本主義への第一歩は、そういうものだ。

つまり私たちには大計が必要だ。

10年後、30年後、50年後、100年後、さらにその先……。
地球環境や人々の生活、そして企業活動を阻害する要因を抽出し、
それらにどう備え、どう乗り越え、成長と幸福をどうつかむのか。
そういう観点での議論を、国家国民挙げて行う時期が来ている。

元日から発生した様々な困難や問題は、
過去にとらわれない大計こそが必要なことを、私たちに突き付けている。

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>


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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.202 
(2024.1.22配信)より抜粋して転載しました。
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