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厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、NICe増田代表理事が送る、視点・分析・メッセージ 。21日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
安倍派叩きで暮れる「税」の年



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 「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

 第120回 安倍派叩きで暮れる「税」の年  
 
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【検察を甘く見ていた国会議員たち】

例えば道端にツバを吐く。
もちろん違法行為(軽犯罪法違反)だが、
よほど常習的かつ悪質でない限り、
「まあ、その程度のことは……」というのが、暗黙の了解だ。

永田町の一部の人々は、政治資金収支報告書の不記載を、
道端にツバを吐く程度のことと思っていたのかもしれない。
政界の常識は、市民感覚と大きく懸け離れている。

だが、そのチョンボが、結果的に天に唾する事態となった。

自民党安倍派や二階派に限らず、同党の国会議員たちの中には、
「この程度のことで特捜が動くのか」と、面食らった人もいるだろう。
だとしたら、甘い。検察の「プライド」を甘く見ている。

もっとも、報告書に記載するしない以前の問題として、
パーティー自体の妥当性が問われるべきだが、その議論は別の機会に譲り、
今回は「安倍派叩き」が、来年の日本経済にどう影響するのか、
その点に絞って筆を進めていく。


【それは、すでに「五輪汚職事件」から始まっていた】

私はかねてから、安倍派叩きが起きると予想していた。
それを確信したのが、東京オリ・パラに絡む汚職事件の摘発だ。

この事件では15人が起訴されたが、
中にはAOKIやKADOKAWAといった、大手企業のトップも含まれている。
この地位の人物にお縄を掛けたのだから、検察の意欲は推して知るべし。

五輪はいわば「国家繁栄のシンボル」である。
だが特捜は、安倍政権が打ち立てた「金字塔」に泥を塗る判断を下した。

一連の事件報道を目にしながら、私は「検察の本気」を実感した。


【検察人事介入に対するしっぺ返しか】

安倍氏が総理だった当時、検察庁への人事介入が問題になった。

「官邸の守護神」と呼ばれた東京高検の黒川検事長の退官時期を、
官邸が強引に半年間延長した件だ。
半年延ばせば、同時期に退官となる現総長の後釜に同氏を据えられる。
そういう算段だったのだろう。

これはいくらなんでもやり過ぎだし、
そこに、安倍長期政権の驕りを見た人も少なくなかったはずだ。
案の定、この目論見は反撃を喰い、頓挫した。

毎度おなじみ「文春砲」が、
黒川氏の常習的賭けマージャンをすっぱ抜いたからだ。
誰が文春にリークしたのか、見当は付く。

すでにこの頃から検察は、
安倍氏や安倍派を標的にする腹を固めていたのかもしれない。

とはいえ、安倍氏も実力者。やすやすとは攻められない。
と、思っていたところにあの銃撃事件。
「もはやボスはいない。いくぞ」と特捜。
その手始めが、東京オリ・パラ汚職の摘発だったと私は思っている。


【検察には、政界を左右する力がある】

安倍氏が政権に就いていた時代、
国会議員の汚職が摘発されることは、ほとんどなかった。
黒川氏の威光はそれなりのものだったのだろう。
だからこそ、「いつまでも好き勝手されてたまるか」という、
反発心を検察内部に醸成させてしまったのかもしれない。

今回の政治資金パーティー収入事件の経緯を見てもわかるように、
検察がその気になれば、特定の政治勢力を引き下ろすことも、
政権をひっくり返すこともできる。そういう力を検察は有している。

事実、現職総理大臣の身でありながら逮捕された、
田中角栄氏のロッキード事件をはじめ、
過去に何度も検察が政治に介入したことは知られている。

三権分立という言葉があるが、行政権の長である内閣は、
財界と財務省と検察庁の顔色を見ながら仕事をするのが実情だ。

だからこそ、安倍氏は黒川氏との蜜月を固めようと考えたのだろうが、
それが裏目に出たかたちだ。


【安倍派叩きに喝采を贈るエリート集団】

自民党の他派閥以上に安倍派叩きを喜んでいるのが財務省だ。

1円でも多く税金を集め、
1円でも歳出を抑えることが財務省の揺るぎない「正義」である。

しかし、総理大臣だった当時の安倍氏は、
消費税増税に待ったをかけ、10%への変更を二度も延期した。
財務省にすれば、さぞや苦々しく感じていただろう。

安倍氏は総理経験を重ねるうち、財務省が「正しい」と主張する、
増税と緊縮財政に対し、徐々に疑問を抱くようになったと回顧している。

その影響は、安倍派全体に伝播し、
今では安倍派=積極財政派(反増税派)と目されるほどになった。

積極財政とは、政府がより多くの事業を行い、予算を付け、
民間にどんどん資金を回していこうとする政策である。
民需が高まらない日本経済を活性化させるために、
国が「仕事」をつくることは、適切な判断だと私も思う。

だが、これを実行しようとすれば、財務省と真っ向から対立してしまう。


【財務省の国会議員手なずけ大作戦】

財務官僚出身の議員は別として、多くの国会議員は、
はじめから財務省の考えを100%正しいと思っているわけではない。
ところが、それがやがて、ひっくり返る。

そのカラクリを週刊現代のネット版「現代ビジネス」が、
わかりやすく記事にしているので、引用させてもらう。

(前略)
財務官僚が政治家を籠絡する手口として有名なのが、「ご説明」と
称する洗脳兼諜報活動である。省の中枢、主計局と主税局の課長以上
の幹部が永田町の議員事務所を訪れ、「日本は借金まみれで危機的状
況です」「少しでも改善するには、増税しかない」「賢明な先生なら、
わかっていただけるはずだ」と説く。議員が反論してきたら、即退散。
「なるほど、それは大変だ」と頷いたら「リスト」に入れる。
(中略)
大臣官房長と文書課長が中心となり、将来性や頭のデキも加味して、
『脈アリ議員』をリストアップし、重点的にご説明に回ります。一番
狙われやすいのは「世襲で、党や政府ではそこそこのポジションだけ
ど、あまり選挙に強くない」議員。「有望」な議員のもとには何度も
通い、資料を駆使して、増税と財政再建がいかに大切か説き続ける。
その過程で、議員の思想、知能指数、人脈、弱みや台所事情、喜怒哀
楽のポイントまで把握していく。(引用ここまで)

エリート集団の財務省職員が、ここまでするのだから、
籠絡される議員がいてもおかしくはない。

ただ、安倍派の議員は攻めにくかったはずだ。
その難敵を検察が攻めてくれたのだから、財務省としてはしめたものだ。


【緊縮財政論を利する「大阪万博叩き」】

残念なことだが、今回の事件を契機に、
積極財政派議員の声は小さくならざるを得ないだろう。

となると、当面の財政出動の「期待の星」は大阪万博だが、
これも今、安倍派並みに絶賛叩かれ中だ。

マスコミは万博を税金の無駄使いと言わんばかりだが、
何も集めた税金を火にくべて燃やすわけではない。
そのお金は企業に渡り、働く人たちに渡る。
そして企業も働く人も、そのお金を使うことができる。
政府の支出は、私たち民間の収入であることを忘れてはいけない。

そもそも万博の問題は建設費の問題ではなく、
この取り組みが国際連携や文化・科学の向上に資するかどうか、
そこが問われるべきだ。

そしてそれが果たせるなら、目先の収支など二の次だろう。
儲からなくてもやるべきこと、意義のあること、将来のためになること、
そういう事業にこそ、税金を使ってほしいと私は思う。
損得に縛られる民間ではできないことをするのが、政府ではないのか。

万博の責任者は堂々と言えばいい。
「税金を投じる価値がある事業なのだ」と。
言えないのなら言えるまで、内容の深化に心血を注ぐべきだ。


【「今年の漢字」に表れた国民の思い】

毎年恒例の「今年の漢字」に「税」が選ばれた。

振り返れば、防衛増税議論に始まり、インボイス制度導入や酒税増税、
トリガー条項問題、加熱式タバコの増税議論、
そして一回限りの所得減税と、確かに「税」の話だらけの1年だった。

「税」という字に込められた国民の思いを斟酌すれば、
「税金は上がる。社会保障費も上がる。
なのに所得は上がらず、物価だけが上がる。勘弁してくれ」だろうか。


【気を引き締め、つながり力で2024年に挑もう!】

2024年。
中国経済の停滞はより深刻化するはずだ。
円安から円高への反転も確実で、
輸出関連企業の業績も今年ほどは期待できないし、
同時にインバウンドも頭打ちになる。
春闘を経ても、なお手取りの増加が実感できず、
個人消費もジワジワと冷え込んでいく。
労働時間規制で収益を上げにくくなる業界も増える。
そういう中で積極財政派の国会議員たちが力を失えば、
経済の動きは一層鈍くなる。と、私はあえて厳しい予測を立てている。

覚悟を決め、気を引き締めれば、
生き延びるためのアイデアを練り、準備することができるからだ。
冒頭で紹介した、特捜を甘く見ていた国会議員たちの姿を、
私たち経営者は反面教師にすべきである。

2024年は、私たち小規模企業にとって真剣勝負の年になる。
あらためて自己(自社)の強みを発見・認識し、
他者とのつながり力を強化して、この1年を駆け抜けよう!

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>

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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.201 
(2023.12.21配信)より抜粋して転載しました。
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2024-11-25 04:37:40Mr.NICe
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