第54回 キッチンカーだけが移動販売じゃない
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増田紀彦の「ビジネスチャンス 見~つけた」
第54回 キッチンカーだけが移動販売じゃない
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私の弟の幼なじみたちの話。
彼らもそろって定年退職し、
示し合わせたかのように地元に戻ってきた。
とはいえ、60歳そこそこ。気力も知力も体力もある。
というわけで、「みんなでいっちょうやるか!」と、
始めたのがクレープを販売するキッチンカー。
たしか3人か4人でチームを組み、
交替制で、あちこちへ出店しているという。
この方法、とてもよい取り組み方だ。
「始めやすく、続けにくい」と言われるキッチンカーの、
続けにくい理由は主に3つ。
1.儲からない
2.体力がもたない
3.飽きる
1と2は、見当が付くかもしれないが、
私は3の「飽きる」が、
経営者の事業継続意欲を蝕む大きな要因だと思っている。
ご存じない人も多いと思うが、キッチンカーは、
積み込んである給排水タンクの容量によって、
提供できる品数や車両内でできる作業に違いがある。
タンク容量の種別は、40L、80L、200Lの3通り。
例えば車内で、野菜を洗ったり、切ったり、
下味を付けたりするような、いわゆる仕込み作業は、
200Lのタンクを備えていないと認められない。
初期投資額を考えれば、軽トラ程度で始めたいが、
その大きさでは200Lタンクを設置することは難しい。
ということは、仕込み作業は別の場所で行う必要が出てくる。
だが、自宅キッチンでの作業は、食品衛生法で禁じられている。
そうなると、自宅を改装して新たに業務用キッチンを設けるか、
別の場所にキッチンを確保するしかない。結局、お金がかかる。
しかも、まだ壁がある。
40Lは取扱い品目が1品目、80Lは2品目までに規制されている。
つまり40Lだと、
ピザとクレープの両方を販売することはできない。
ピザならピザだけ、クレープならクレープだけを売ることになる。
そして、ある日、「もう、ピザは(クレープは)見たくない」。
そんな気持ちに襲われる。
飽きるというより、ウンザリすると言ったほうがいいかもしれない。
だから、弟の友人たちのように交替制で営業すれば、
疲れないし、飽きないから、続けやすくなる。
もちろん、生活に余裕のある彼らだから選択できた方法ではある。
というわけで、自分一人でキッチンカービジネスを始めて、
成功させるのは、想像以上に大変なことだと心得てほしい。
とはいえ、打つ手がないわけではない。
販売する食品を、自らが作らず、仕入れればいい。
自分で調理をせず、弁当屋でもパン屋でもいいので、
食品製造許可を取っている事業者から仕入れを行えば、
売りたいものを、売りたいだけ、売ることが可能だ。
実際、コストコのビジネス会員になれば、
コストコから弁当や惣菜やその他の食品を仕入れ、
それに一定のマージンを付加して販売することもできる。
「そんなことが許されるの?」。許される。
コストコは小売業だけでなく、卸売業も営んでいる。
そもそも移動販売の商品は、何も「食べ物」だけではない。
北海道には、墓石を展示する大型トレーラーが走っている。
正確に言えば、「墓石の移動展示場」だ。
道内のあちこちを移動するわけだが、
開催地は、開催日の前日の新聞折り込みチラシで告知する。
過疎地域が多い北海道の人には、ありがたい商売だろう。
一方、都会ではこんなアイデアが人気を博している。
「移動ピアノ教室」。
集合住宅街などに出向き、
荷台のコンテナのなかでピアノを弾いてもらうサービスだ。
これなら、ご近所から「うるさい」と文句を言われる心配もない。
集合住宅といえば、コロナ禍の最中、
缶詰専門の移動販売車が首都圏のマンション群に出店していた。
まさに「外出自粛=ビジネスチャンス」である。
また、高齢者などを対象にした移動美容室や理容室も見かけるし、
山梨県では、移動フラワーショップが人気という話も聞いた。
つまり、需要があるのに、供給が足りない商品やサービスを、
需要がある人たちのそばへ出向いて提供すればいいのである。
キッチンカーに人気が集まる昨今だが、
何を売るかは、いくらでも考えようがあるのが移動販売だ。
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「つながり力で起業・新規事業!」
メールマガジンVol.194
(2023.9.11配信)より抜粋して転載しました。
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