増田通信より「ふ~ん なるほどねえ」271 予想外の仕事を依頼された時
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<最近の判断> 予想外の仕事を依頼された時
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私が講師を務めた起業セミナーの受講生から、電話がかかってきた。
その人はエンディングプランナー。いわゆる終活のお手伝いをする人だ。
起業セミナーが修了してほどなく彼女は開業し、
地元の新聞にも取り組みが紹介された。
新聞記事の掲載から数日後、
彼女のもとに「まさかの相談」が舞い込んだ。
国内外にいくつもの拠点を有する有名企業の経営者から、
「あなたに、私の自叙伝を作ってほしい」と言われたのだ。
前向きな彼女は、専門外だとことわりを入れたうえで、
その経営者に会い、意向を確かめた。
経営者は本気だった。彼女は心を打たれた。
とはいえ、出版など見当もつかない。そこで私に相談をしてきた。
読者の方々の中にも、彼女と似た経験をした人がいるのではないだろうか。
自分の専門や担当はこれこれだと思っているところに、
思いも寄らない仕事の依頼や打診がきて困惑したことが。
そのオーダーを断るべきか、断らないほうがいいのか、迷いに迷う。
そんなときの決断の基準は何か?
「できるか、できないか」ではない。「やるべきか、やらざるべきか」だ。
そのオーダーが、自社の事業領域にかかるテーマなら引き受ける。
そうではないなら、引き受けない。
仮に、喉から手が出るような好条件を提示されたとしても、
事業領域外のオーダーなら、引き受けない。
むろん、オーダーを引き受けられそうな代役を探す努力はすべきだろう。
事業領域をどこまで設定するかは経営理念次第。
例えば焼鳥屋なら、居酒屋など他の飲食店業態も領域内だが、
考えどころは、その先。
「接客業を通じて人々の幸せに貢献する」という理念があるなら、
娯楽サービスを事業領域に入れることもできるし、
「食を通じて人々の幸せに貢献する」という理念があるなら、
食品製造業を領域に入れてもいい。
エンディングプランナーである彼女の場合、
「人生のより良い仕舞い方を通じて、人々の幸せに貢献する」のだろうと思う。
であれば、福祉、医療、葬祭、相続、不動産、税務、家財整理など、
隣接する事業分野は相当数ある。
当然、彼女も今挙げたような事業分野はフォローしているだろう。
だが、自叙伝の出版には気付かなかった。
実際には、自社の周辺事業なのに、
業種的に遠いせいで、その事業が自社にとっての周辺事業だと気がつかず、
その方面の知識も人脈も持っていない。
だから、突如、依頼がきて慌ててしまうということになる。
そうならないよう、日頃から異業種の研究に励んで、隠れた周辺業種を認識し、
そのうえで、どこまでを自社の事業領域にするか、
経営理念と照らし合わせながら、検討を重ねることが大切だ。
それでも、事前には気付けないニーズが必ずある。
そういう時は、意外な依頼をしてきた相手に最大限の感謝を伝えつつ、
「今の今は、完璧にできるとは言えないが、
私(我が社)は、それをやるべきだと気付かせて頂いたので、
ぜひとも、チャレンジさせてほしい。
ネットワークを駆使して専門のスタッフも用意する。
もちろん、最終責任は私が持つ」。
そう伝えるのがいいだろう。
最終的に依頼者がどのような判断をくだすかはわからない。
いずれにしても、自社の事業領域の穴に気付かせてもらえることは収穫だ。
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増田紀彦NICe代表理事が、毎月7日と14日(7と14で714(ナイス)!)に、
NICe正会員・協力会員・賛助会員、寄付者と公式サポーターの皆さんへ、
感謝と連帯を込めてお送りしている【NICe会員限定レター「ふ〜んなるほどねえ」スモールマガジン!増田通信】。
第271号(2023/6.14発行)より一部抜粋して掲載しました。
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