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厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、NICe増田代表理事が送る、視点・分析・メッセージ 。21日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
聖地と聖地を結ぶ、令和の『港町ブルース』を



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 「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

第115回 
聖地と聖地を結ぶ、令和の『港町ブルース』を
 
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【うそっ? 高円寺って地名だったんだ】

吉田拓郎の名アルバム『元気です』。
入手してから、もう50年。

ヒット曲『旅の宿』をはじめ、若き拓郎の才能がほとばしる楽曲がビッシリ。
中でも強烈なインパクトを私に与えたのが、『高円寺』という短い曲。
イントロのギターリフが、とにかくかっこいい。
と、言いつつ、当時の私は高円寺を地名だと思っていなかった。

二番の歌詞に「高円寺」が出てくる。

 ♪君は何処に住んでいたのですか
  高円寺じゃないよね

私は、「君」と呼ばれる女性が、付き合い始めたばかりの男性から、
「まさか、お寺には住んでないよね」と、確認されているのかと思った。

私の人生は、昔も今も、無知蒙昧な自分との闘いの連続だ。

それはともかく、高円寺が東京の地名と知った私は、
興味津々、鉄道を乗り継いで同地へ出かけた。

中央線の轟音や町を闊歩するヒッピー風のお兄さんやお姉さん、
それこそ、室内からギターを掻き鳴らす音が聴こえてくるアパートなどを目にし、
心底、興奮した。来て良かったと思った。
人生初の「若者の街」との遭遇だったからだ。


【残念。見つけられなかった「山手のドルフィン」】

高円寺以降も、私は曲の歌詞につられ、あちこちへ出かけた。
荒井由実(現・松任谷由実)の『海を見ていた午後』の中で、

 ♪山手のドルフィンは 静かなレストラン
  晴れた午後には 遠く三浦岬も見える

と描写された風景を眺めたくて、横浜まで出かけたものの、
とうとう、そのレストランを見つけられず、クタクタになったり、
グレープ(さだまさし&吉田政美のデュオ)の『縁切寺』の歌詞、

 ♪源氏山から北鎌倉へ
  あの日と同じ道程で
  たどりついたのは 縁切寺

に惹かれ、当時お付き合いしていた女性を誘って
そのコースを、ワクワクしながら歩いてみたりした。

今、思い出したが、その時、彼女は終始浮かない表情をしていた。

ああ、そうだったのか。
縁切寺って、男女の縁を切る場所のことか。
今さら気付いても遅すぎる……。

私の人生は、昔も今も、軽佻浮薄な自らとの闘いの連続だ。


【アニメの聖地の求心力に続け】

いったい、何の話をしているのかと、訝られる読者もいるだろう。

日本の観光産業の今後について話したくて、
若さ丸出し、もしくは、バカさ丸出しの昔話をつらつらと書いた。

昨今は、「アニメの聖地」と呼ばれる場所に、
国内はおろか、海外からもファンが出かけてくる。

『君の名は。』の飛騨や、『心が叫びたがってるんだ。』の秩父とか。
もちろん、まだまだある。
私は『ゲゲゲの鬼太郎』の聖地・鳥取県境港市に3回お邪魔している。

アニメは日本が誇る文化にして、一大成長産業である。
それと観光とが結びつくことは、素晴らしい。
まさに、異業種のつながり力による需要創造だ。

そのコラボの幅をもっと広げる意味で、
あらためて、音楽と観光のつながりを強化できないかと考えている。


【訪日外国人の少なさにも増して、訪問先の偏りが課題】

6月初旬、令和5年版の観光白書が公開された。
令和4年度の観光状況と、令和5年度の観光施策について、
A4判150ページ以上に渡って言及している。

読み進むうち、ちょっと驚くデータにでくわした。
外国人観光客の受け入れ数が、
私の印象よりも、圧倒的に低かったのだ。
諸外国と比べると、その低調ぶりたるや、侮れないレベルだと感じる。

コロナ禍のピークだった2020年(令和2年)において、
日本は世界ランキング25位だった。
このランク自体、上位とは言い難いが、
翌2021年(令和3年)には、ベスト30に入れないどころか、
「ランキング外」にまで転落してしまっている。

ちなみに2021年のベスト3は、
フランス4840万人、メキシコ3190万人、スペイン3120万人だ。
さらに見ていくと、10位のアラブ首長国連邦が1150万人、
20位のドミニカが500万人、30位のブルガリアが230万人。
ランキング外となった日本は、わずか25万人。

加えて、外国人観光客の日本での訪問先にも課題を感じた。

外国人の延べ宿泊者数を地方別に分けたデータが掲載されている。
関東が857万人泊(全体の51.1%)、近畿が391万人泊(同23.3%)。
この2地域だけで全国の外国人延べ宿泊者数の74.4%に達している。
要は、東京、京都、大阪に集中しているということだ。
日本の大都市集中問題は、インバウンドにも同じ影を落としている。

ただでさえ少ない外国人観光客である。
宿泊先分布を見る限り、
インバウンドが、地方経済に貢献する展開には、およそなっていない。


【客観的に見れば、やはり日本は遠い未知の島】

日本は他国よりコロナの水際対策が強かったせいもあるだろうが、
来訪数の少なさや、訪問先の偏りを目にする限り、
やはり、徒歩や自動車や鉄道で国境を越えられる大陸の国々と比べ、
極東の島国である日本は、
「まだまだ遠く、まだまだよくわからない国」なのかれしれない。

そういう地理的なハンデを克服するために、
交通の利便性の強化や、宿泊施設の魅力アップなどは確かに大事だ。

だが私は、そもそも、「遠くても行きたい日本」にならなければと思う。
来日動機を形成させるためのコンテンツの拡大と魅力のブラシュアップ、
そして効果的な発信が優先ではないかと。

具体的には、「聖地巡礼観光の強化」を推進すべきと考えている。
もちろん、四国のお遍路さんのような、本当の意味での巡礼も有力だが、
ここで私が言おうとしているのは、アニメの聖地巡礼を筆頭にした、
「様々なテーマでの聖地巡り」のことである。


【聖地巡礼は、多様なコンテンツで訴求可能】

例えば、プロ野球の佐々木朗希選手も、
いずれはメジャーリーガーになるだろう。
そうなれば、大谷翔平選手や菊池雄星選手も含め、
岩手県は、スーパーベースボールプレイヤーの輩出地だと、
アメリカ大陸のベースボールファンからも目されるはずだ。

そのタイミングで、盛岡球場を舞台にMLB公式戦が開催されようものなら、
もう、日米が大騒ぎになるのは確実。
やがて、日本の野球ファンがベーブルースの生家を訪ねるように、
アメリカのファンが、岩手県内を巡ってくれる可能性も出てくるだろう。

もっとも、この思い付きは、仮に実現したところで応用が利かないし、
実際には、かなりの課題をクリアしないと実現自体、難しい

やはりアニメと並ぶ、強力な聖地コンテンツは、音楽に見出すべきだ。


【世界中が聴きたくなる楽曲→世界中から来たくなる楽曲】

最近はミュージックビデオがあるから、
ロケ地などが聖地になるのかもしれないが、
半面で、「歌詞の中の聖地」が減っている印象がある。

歌詞が内面世界を中心に描くようになり、
その分、場所などの外的世界が重視されなくなったのかもしれない。
「目に映る世界」は、それこそPV(MV)に任せればいいということか。

だが、やはり、優れた楽曲の中で歌われる、とある町の物語りは、
多くの人の心を打つ普遍的なコンテンツだと私は思う。
日本人に限らず、それは世界中の人々に届くメッセージになる。
また、歌詞を英語やスペイン語、中国語などの大言語で書けば、
ストレートに、その魅力が世界に到達する時代だ。


【聖地と聖地を結ぶ、巡礼型観光を!】

もっとも、これまで私が紹介した曲は、
国内のどこか1か所を取り上げるにとどまっている。

一方、その昔、ドリフターズが歌った『いい湯だな』や、
森進一が歌った『港町ブルース』には、何か所もの町が登場する。

日本全国の温泉地や港町を、北から南へと移動しながら紹介する、
点ではなく、線で日本の魅力を歌い上げるコンセプトだ。

『いい湯だな』では、「ここは北国 登別の湯」に始まり、
上州草津の湯、紀州白浜の湯、南国別府の湯などが紹介されていく。

『港町ブルース』では、函館、宮古、釜石、気仙沼と南下し、
各地の港を経て、最後は鹿児島に到達する。

この視点を、あらためて評価すべきではないだろうか。

東京や京都、大阪に限定せず、日本の津々浦々を移動する、
現代版の「聖地巡礼歌」を、世界に発信できたらと思う。

「地域の活性化は地域に任せる」ではダメだ。
それでは、点と点とが結びつかない。

広い視野で、日本の各地が有する多様な魅力を、
ひとつの線で結んだ楽曲が発信ができれば、
訪日観光客数や滞在日数、何より地方への来訪数が増加するはずだ。

わかりきっていることだが、音楽の力はすごい。
この力を生かさない手はないはず。

日本経済は、昔も今も、優柔不断な自らとの闘いの連続だ。

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>


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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.190 
(2023.6.21配信)より抜粋して転載しました。
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