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厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、NICe増田代表理事が送る、視点・分析・メッセージ 。21日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
サッカー日本代表に学ぶVUCA時代の組織戦略



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 「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

 第109回 
 サッカー日本代表に学ぶVUCA時代の組織戦略
 
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【当てにならない「来年の経済予測」】

毎年この時期になると、世界中の金融機関やシンクタンクが、
こぞって翌年の経済予測を発表する。

驚いた。今年はその内容が見事にバラバラなのだ。

確かに、昨年の今頃を思い出してみて、
欧米の2桁インフレや驚異的な円安進行など、
ほぼ誰も言い当てていなかったし、
その2か月後に、ロシアのウクライナ侵攻が発生することも、
国際的なコンセンサスではなかった。

つまり、何を予測しても「ありえない」とは言い切れない時代であり、
2023年の読み方が一致しないのも当然かもしれない。

実際、過去の延長で将来を語る方法に限界があることは、
FIFAワールドカップ2022「グループE」の結果を見れば明らかだ。

ちなみにサッカー日本代表の活躍は、
日本の社会と企業のあり方に重要なヒントを提供してくれた。
それについては、後半で記すことにし、話題を「予測困難」に戻す。


【旧統一教会問題の噴出など、誰も予測できなかった】

私自身も、昨年の12月のこのコラムで、
「きたる2022年を『日本のデジ・アナ元年』に」と訴え、
官民挙げてのポストコロナ経済活動に期待を寄せた。

ところが、7月の安倍晋三氏銃撃事件を契機に旧統一教会問題が噴出。
国葬儀の拙速さも批判を浴び、岸田政権への支持率は急降下。
国を挙げて産業力強化に取り組むどころの話ではなくなった。

長く続いたコロナ禍から抜け出し、希望の光が差す日も近い。
私はそんな予測を立ててみたが、大ハズレもいいところだ。


【現代は、紛れもなくVUCAの時代】

あらためて、世界は今、VUCAの時代に突入していると痛感する。

ご存じの方も多いと思うが、VUCAとは、
Volatility(変動性)
Uncertainty(不確実性)
Complexity(複雜性)
Ambiguity(曖昧性)
の4つの単語の頭文字を取った造語だ。

もちろんVUCAには、コイン同様、表と裏がある。
VUCAが深まるほど混迷も増すが、
コインをひっくり返せば、チャンスがあちこちに広がるということだ。

以下、VUCAの4つの性質について雑感を述べたい。


【変動性 ―― 成長市場が猫の目のようにくるくる変わる時代】

一つ目、Volatility(変動性)。
これが高まっていることは、多くの人が実感しているだろう。
為替や株価もしかりだが、成長分野やビジネスモデルの変化も激しい。

数年前まであれだけ注目された「民泊市場」は、
どこへ行ってしまったのだろう?
巨大市場に成長すると見込まれていたソーシャルゲームも伸びない。
もしかすると、メタバースも期待ほどではないかもしれない。


【不確実性 ―― 確実な答えが出揃うまで、待てない時代】

二つ目、Uncertainty(不確実性)。
すぐに思い浮かぶのがコロナ対策だ。

中国のゼロコロナ政策も転換を迎えたが、
本当のところ、どのような策が有効なのだろう?

日本の主要策は「ワクチンを打つ」だが、
効果の程度も、本当のところはわからない。

もっとも、不確実性はコロナ対策に限った話ではない。
テクノロジーやマーケティングが生み出した様々な「価値」が、
何に対してどれだけ貢献するのか、反対に、どんな影を落とすのか、
はっきりしたことがわからないまま、
私たちはその「価値」に価格を付けて、売買を繰り返している。

逆に言えば、不確実な物事が、確実なものに変わるまで、
誰も待っていられない、せっかちな時代なのかもしれない。


【複雜性 ―― 正と負の要因が絡まり合うグローバリゼーションの時代】

三つ目、Complexity(複雜性)。
これもテクノロジーの伸長と無関係ではない。
広い意味でのシステム構築のために用いる技術や素材や部品が膨大化し、
相互の関係性がわかりにくくなっているし、
それらの国際的サプライチェーンの拡大は、
何をどこで調達し、どこで作るのが最適なのか、
正解にたどりつくことを極めて困難にしている。

また、グローバリゼーションは市場も複雑化させた。
言語や法律、通貨、商習慣、価値観の異なる国や地域をまたぐ取引は、
正と負の要因が絡み、誰も成功法則を見つけることができないでいる。


【曖昧性 ―― 正解や定義への執着が、ピンチを招く時代】

最後はAmbiguity(曖昧性)。
「曖昧性」と訳されているが、辞書で確かめると、
「一つ以上の意味を持つ状態」や、
「複数の意味に理解される語や文」などと説明されている。
つまり、解釈が分かれる物事や状態のことだ。

もっとも、複数の解釈が成り立つ状態が問題なのではない。
むしろ、「ひとつの答え」に執着し過ぎるほうが問題だ。

したがって曖昧性の時代は、その曖昧さを受容できないことによる、
出遅れ、あるいはチャンスロスをもたらす危険を生む。
要件定義をしないと前に進めない組織習慣など、最たる例である。


【合言葉は、即断即決、即行動!】

以上、VUCAの4つの性質について語ったが、前半でも記したように、
VUCAの時代は、過去の実績や信用にかかわりなく、
誰でもチャンスを手にできる時代である。

ただし、チャンスを掴み、成功を遂げたとしても、
それが長続きすることはない。

つまり、VUCAの時代とは、
頻繁に方針を見直し、時には価値観自体を問い直し、
計画の完成を待たず、また、立てた計画に固執せず、
「今の状況」を見て、適切と思う行動を取るべき時代であり、
そういう姿勢を堅持することが肝要な時代である。

要は、即断即決、即行動!
ケースに応じて即撤退、即再挑戦! である。


【スピードを重視するあまりの独裁は、かえって危険】

ただし、「即断即決、即行動!」=独裁体制のススメではない。

一見、独裁は素早い決断と行動をもたらするように思えるが、
可能性や危険性の抽出、また、それらの評価の正確性において弱点がある。
ありていに言えば、情報不足や思い込みで物事を決めかねない危険がある。
しかも、独裁者は方針と状況とに齟齬が生じても、
すぐに改めようとせず、持論に執着する傾向もある。

その結果、思わぬピンチを呼び込むことや、
掴めるはずのチャンスを逸することが、往々にして起きる。
現に、そういう国があちこちにある。

だからこういう時代には、四方八方に目を配り、
集めた情報を忖度も遠慮もなく即座に共有できる組織が有用だ。


【サッカー日本代表は、なぜ、躍動したのか】

では、私たちは何に学び、何をすればいいのか?

ここでワールドカップの登場。
私は、日本対スペインの、三苫選手と田中選手の連携にヒントを得た。

二人は、言葉を交わさずとも、
試合中、互いがどのような動きをするかがわかるという。
まさに阿吽の呼吸。
それが、目にも止まらぬ速さの「即断即決、即ゴール!」を生み出した。

つまりは、集団内のメンバーについて、
互いがよく知っていること、そして互いを信頼していることが、
集団力の高さを生み出す源泉になる。

集団で仕事をし、成果を挙げようとするなら、
誰がどんな強みと弱みを持っているのかを全員で共有し、
他者の強みを引き出し、弱みを補うために、
自分が何をすべきかを全員が理解していることが大切だ。
そのレベルが高いほど集団力は強くなり、低いほど集団力は弱くなる。

「ドーハの歓喜」と言われたドイツ戦やスペイン戦での日本の勝利は、
日本代表の集団力の高さの証明である。


【集団内の相互理解・相互活用こそが、日本の武器】

ただし、PK戦に集団力は通用しない。

個人の身体能力やメンタリティは、
日本より外国勢のほうが上をいくのかもしれない。
それならそれで仕方ない。
日本は日本の戦い方で、力を着ければいい。
むろん、サッカーだけの話ではなく、ビジネスや政治もだ。

昨今、欧米流の個人主義が日本でも浸透してきたが、
私たちはやはり、集団の力で世界の強豪たちと競争すべきだろう。

そのために、集団内のコミュニケーション機会を、
もっともっと増やしていかなければならない。

他者の力量や特質を知り、それを成果に結びつけるための、
「雑談機会」の確保を含めた交流の時間と空間を、
制度的に設け、風土的に醸成していくことが必要だ。

VUCAの時代は、阿吽の呼吸の集団力を持つ組織が有利に立つ。

原点に立ち返り、
もう一度、集団力を養い、それを発揮すれば、私たちは必ず躍進できる。
これは予測ではなく、道理である。

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>

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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.179
(2022.12.21配信)より抜粋して転載しました。
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