増田通信より「ふ~ん なるほどねえ」253 見せっこ
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補助金申請などに際して作成したものの、
不採択になってしまった事業計画書……。
それっきりお蔵入りしていることも少なくないだろう。
そんな「残骸」を、買い取るサービスを計画している会社がある。
その会社から私に届いたメールには、
「不合格になった事業計画書を1万〜3万円で買い取り、
弊社サービス内で公開し、
次に申請される経営者さんの参考にできればと思っております。
不合格になった方にとって、少しでも『足し』なれば……」と書いてあった。
続けて、「弊社が中心になり、失敗体験を集約し、
成功ノウハウとして公開したいと思っています。
いかが思われますでしょうか。ぜひご意見いただけると嬉しいです」とのこと。
申し訳ないが、ご意見をする気にはなれない。
事業計画書は、自らのビジネスの、いや、自らの人生の未来を懸け、
あらんかぎりの知恵と情熱を込めて作成した、
いわば、経営者にとっては自分の分身のような存在だ。
それを、「1万~3万円」で買い取るなど、失礼の極ではないだろうか。
だが、わずかな金銭で計画書を入手しようという魂胆はさておき、
採択されなかった計画書を一定数集めることで、
共通する弱点や問題点を抽出できる可能性は高く、
それが「採択される計画書づくり」のヒントになることは確かだ。
実際、昨年度から実施されている「事業再構築補助金」申請に使われ、
結果、不採択となった事業計画書を、私はたくさん見てきた。
一方、採択された計画書も、数多く目を通した。
面白いことに、不採択案件の中には、
「落ちて当然」のものもあれば、「このレベルでなぜ落ちるのか?」と、
首を傾げるような精緻な計画も含まれているし、
半面、採択案件の中には、
「受かって当然」のものもあれば、「このレベルでなぜ受かるのか?」と、
首を傾げるような甘くて、隙のある計画も含まれている。
要するに、ザッと見ただけでは、
合否の本当の理由は推測しきれないのが実際だ。
しかし、必ずどこかに「落ちる理由」と「受かる理由」が潜んでいるはず。
それを抽出するためには、やはり一つでも多くの材料を集め、
比較・分析することが一番の近道だ。
そういう意味では、この会社、とてもいいところに目を付けている。
「残骸」は、実は「宝の山」なのだ。
その宝を生み出した人々に、敬意を払ってくれれば、文句はなかったが。
そこで思った。
NICeのような起業家のネットワークを活用すれば、
不採択でも採択でもいいので、提出した事業計画書を互いに見せ合い、
分析検討会を開くことができるだろうと。
互いを尊敬し、互いを応援したいと思う者同士の取り組みである。
頭脳交換会のようなスピーディーの展開にはならないが、
書類をじっくりと眺め、脳に汗をかき、
そこから「お宝」を抽出し合う作業も、それはそれで楽しくかつ有意義だ。
ああ、私は「1万~3万円」を払うことなく、
素敵なアイデアを頂戴してしまった(笑)。
「ただ」でもらったままは気が引けるので、
メールを送ってきた会社に、少し「ご意見」を送ろうと、今、翻意した。
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増田紀彦NICe代表理事が、毎月7日と14日(7と14で714(ナイス)!)に、
NICe正会員・協力会員・賛助会員、寄付者と公式サポーターの皆さんへ、
感謝と連帯を込めてお送りしている【NICe会員限定レター「ふ〜んなるほどねえ」スモールマガジン!増田通信】。
第253号(2022/9.14発行)より一部抜粋して掲載しました。
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