第45回 「洗えない」という思い込み
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増田紀彦の「ビジネスチャンス 見~つけた」
第45回 「洗えない」という思い込み
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P&Gが300人の母親を対象に行った調査によると、
「マットレス購入後、一度もケアしていない人」が72.3%にも達するそうだ。
ケアをしていない主な理由は、
「ケアの方法がわからない」
「重くてケアできない」
「シーツや敷きパッドなどで汚れないようにしているから」など。
しかし専門家によれば、使い続けたマットレスには菌が付着し、
汗などの湿気で増殖する可能性が高いとのこと。それはそうだろう。
実際、研究期間で6年10か月使用したマットレスを測定したところ、
10cm×15cmの範囲に630個の菌がいるケースがあったそうで、
これをシングルベッドの大きさに換算すると、約8万個いる計算になるとか。
うーむ。
最近、健康食品のCMで、
「この製品の中に乳酸菌が100億個!」などというフレーズを耳にするせいか、
「8万個」という数字を眺めても、イマイチ、ピンとこないが、
少なくとも、放置していればカビも出るし、ダニなどが棲み着くことは間違いない。
マットレスは清潔であることが、やはり望ましい。
ところが、調査結果にあるように、
多くの人は、どうしたらいいのか、わからない状態だ。
なるほど、なるほど。だから、
木村佳乃さんと秋山竜次さんが夫婦役で出演している、
あのファブリーズ(P&G製品)のCMにつながるわけだ。
「マットレスは洗えないから」と、母親がファブリーズを噴射しまくり、
家族全員が大喜びするというストーリー。
でも、本当のところ、マットレスは洗える。
もちろん、家庭であの大きな物体を洗浄するのは容易じゃないが、
マットレス洗浄専門のプロに頼めば済む話だ。
「マットレス購入後、一度もケアしていない」人が72.3%ということは、
反対から見れば、ケアしたことがある人が27.7%いることになり、
この中の一定の人が、プロに洗浄を依頼した可能性がある。
だがやはり、この方法を知っている人は少ないだろう。
洗うべきものでありながら、
洗う必要性を認識していない、
あるいは認識していても、どうすればいいかわからない、
だから洗っていない……。
こういう話は、マットレスに限ったことではないと思う。
であれば、ビジネスチャンスだ。
例えば仏壇。
家庭で洗浄できるだろうか?
私が起業独立情報誌『アントレ』の編集を手がけていた頃、
仏壇を泡で洗浄する技術を開発した人物の話を聞いたことがある。
特殊な技術を要するが、ニーズは大きい。
ということで、確かフランチャイズ展開に乗り出したと記憶している。
仏壇から連想するのが墓石だ。
長い年月、風雨にさらされた石材やコンクリートに、
白い花が咲いたようなシミができるが、これがまた容易には落ちない。
水酸化カルシウムが原因となる「エフロレッセンス」という現象で、
通常の洗剤などで必至にこすっても、まず、無駄骨だ。
いや、エフロの洗浄に限らず、墓石や墓地の一般的な清掃すら、
最近は困難な人が増えている。
「墓石の清掃が大変」で思い出すのは、やはり高齢者だ。
特別なものの清掃や洗浄に限らず、
自宅内や庭の掃除も一苦労だろうし、
大物衣類や寝具などの洗濯も簡単ではないだろう。
だから、ハウスクリーニングや衣類クリーニングのニーズがあるわけだが、
実は、高齢者の多くが、クルマの洗浄・清掃も困難という話を聞いた。
前回のコラムに続いて、またまた洗車である。
この高齢者向け洗車だが、
単に「できないことをサポートする」だけにとどまらない価値がある。
というのも、「汚れているクルマほど、事故率が高い」という説があるからだ。
身体機能の低下などによる高齢ドライバーの事故が問題になる昨今だが、
上記の説に則れば、クルマの内外をキレイにすることで、
事故の発生率を低減できる可能性が出てくるわけである。
生活上、運転免許の返納が適切ではない高齢者に対して、
積極的に洗車サービスを提案するビジネスには、必ずニーズがある。
おそらく、洗うべきなのに、洗えない、洗っていないものは、
この世にまだまだ、たくさんあるだろう。
そうそう、たとえば衣服にしたって、
汚物や吐瀉物が付着した場合、一般のクリーニング店では、
受け付けないことになっている。
こういう、絞り込まれたニーズも見逃せない。
クリーニング・ビジネスの可能性は、果てし無く広い。
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「つながり力で起業・新規事業!」
メールマガジンVol.174
(2022.10.11配信)より抜粋して転載しました。
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