増田通信より「ふ~ん なるほどねえ」245 痩せ細る思考パターン
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<最近の危惧> 痩せ細る思考パターン
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起業であるとか、経営であるとか、
私にとって日常的なテーマの範疇ばかりで頭を使っていると、
思考の幅が、痩せ細っていくような不安に襲われる。
もちろん、起業や経営の奥深さは言うに及ばずであり、
いくらでも学んだり、考えたり、実践したりを繰り返せるのだが、
善くも悪くも、長年、その世界にかかわってきたせいで、
「持論」のようなものが出来てしまい、
その持論に沿って、個々の案件や課題を考えるクセが付いている気がする。
みなさんは、そういう感覚を抱くことはないだろうか?
業界や業務にかかわる知識と、それ以外の知識の差の話ではなく、
課題解決に当たっての「答えの見つけ方」が、パターン化していないかどうかだ。
今の時代、知識を獲得するのは容易だが、
世の中がいくら便利になったところで、
自らの思考パターンが増えたり、柔軟になったりすることはない。
そこで私は、物事を考える道筋を潤沢にすべく、
時々、以下のような脳トレに取り組んでいる。
例えば、数年前に、
「年金支給額を減額する法改正は、生存権を保証した憲法25条に違反する」、
という訴訟が相次いだことがあったが、いずれも各地裁で退けられた。
ではなぜ、「裁判所は訴えを退けたのか」について考えてみる。
次に逆で、裁判所が訴えを認めたことにして、その理由を考える。
「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の
向上及び増進に努めなければならない」と、憲法25条は書いている。
この条文を読む限り、「国は努力する」という話であり、
年金制度の将来的なピンチを考えて減額を決めた法改正は、
「努力を放棄した」ことには当たらない。
だから裁判所の判断は正しい。と、まずは考える。
今度は反対に、法改正は「最低限度の生活を営む権利」を侵害しており、
国は別の方法で年金制度を維持するための努力をすべきだと、考える。
このあと、さらに両者の意見をたたかわせる。
年金法改正の話はあくまで例であって、扱うテーマは何でもいい。
要は、相反する立場に立って、物事をあれこれ考える作業は、
「持論」や「思想」や「主義」や「信条」や「思い込み」から、
自らの思考を解き放ってくれるのではないかと思うのだ。
「そんなことをしているヒマなんてない」と言われそうだ。
私もそんなヒマはないのだが、
思考パターンが固定化していく最大の理由は、
まさに、その「ヒマがない」ではないかと危惧する所以である。
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増田紀彦NICe代表理事が、毎月7日と14日(7と14で714(ナイス)!)に、
NICe正会員・協力会員・賛助会員、寄付者と公式サポーターの皆さんへ、
感謝と連帯を込めてお送りしている【NICe会員限定レター「ふ〜んなるほどねえ」スモールマガジン!増田通信】。
第245号(2022/5.16発行)より一部抜粋して掲載しました。
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