vol.167【増田紀彦の視点・第103回 首相が語る「人への投資」とは?】
・
■□■───────────────■□■
Vol.167 2022.6.21
つながり力で起業・新規事業!メールマガジン
起業支援ネットワークNICe https://www.nice.or.jp
■□■───────────────■□■
このメルマガは、NICeの活動に参加された方々、
またはNICe代表理事・増田紀彦と名刺交換をされた方々、
および全国の起業家、経営者、農林水産事業者、起業・創業希望者、
地域振興関係者、中小企業支援・創業支援機関、一次産業支援機関の方々へ送信しています。
┃目┃次┃ ┃ ┃ ┃ ┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【1】「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」
厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、
増田代表が送る、視点・分析・メッセージ
第103回 首相が語る「人への投資」とは?
【2】 最新情報
増田通信より「ふ~ん なるほどねえ」243
<最近の刺激> 「生観戦」は、非日常のかたまり ほか3本
【3】 活動予定 NICeの主な勉強会
【4】 お知らせ
NICeな仲間の活動情報
■□■───────────────■□■
「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」
第103回 首相が語る「人への投資」とは?
■□■───────────────■□■
【日本経済の内情が滲む、首相のロンドン講演】
5月5日にロンドンで行われた岸田首相の講演には、
今後、日本政府がどのような分野にお金を投じていくのか、
あるいは、どのような取り組みを優遇するのかなどの情報が満載だった。
とくに「4本柱」として語られた、
「人への投資」、「科学技術・イノベーションへの投資」、
「スタートアップ投資」、「グリーン、デジタルへの投資」のなかには、
様々なビジネスチャンスが潜んでいる。
ところが、冒頭の「人への投資」を読み進めると、
首相の勢いとは裏腹に、日本経済の抜き差しならない状況が浮かび上がってくる。
今回のコラムでは、岸田首相が語る「人への投資」について考察し、
チャンスとピンチを整理して、
私たち小規模事業者が進むべき道を探っていこうと思う。
【「賃上げは困難」と、遠回しに認める首相】
まずは人に対する「フロー投資」について見ていく。
「フロー面での人への投資といえば、まずは賃金です。
賃金が伸びなければ、消費にはつながらず、次なる成長も導き出せません。
生産性を上昇させるとともに、それに見合った形で賃金を伸ばすために、
賃上げ税制を導入するなど、官民連携して賃上げの社会的雰囲気を醸成します」。
いろいろ語ってはいるが、要は最後の一言にあるように、
「雰囲気を醸成する」という、成り行き任せの方針になってしまっている。
もともと期待してはいなかったテーマだが、
「やはり打つ手はなしか……」と、嘆息せざるを得ない。
事実、介護職や看護職の賃金引き上げも「お小遣い程度」と揶揄されながら、
その後、何ら改善策を示すでもないし、
結局のところ、最低賃金の引き上げという形式的な取り組みに終始している。
むしろ、いたずらな最低賃金の引き上げは、
かえって状況を悪化させかねないことは誰でも知っている。
円安や原料価格・輸送コストの上昇に苦しむ企業が、
従業員の賃金を引き上げざるを得なくなれば、
非正規労働者や業務委託労働者、あるいは外国人労働者への切り換えを進める。
結果、日本の低賃金労働者人口はかえって増えてしまう。
「日本の総理大臣唯一の金融出身者」と自負する岸田首相が、
この展開を予測できないはずがない。
つまり、岸田首相は「わかっていない」のではなく、
本当のところ、所得向上につながる賃上げは難しいと諦めているのだろう。
【「食い扶持は自分で稼げ」の大号令】
一方、人への「ストック投資」については、このように話している。
「職業訓練、学び直し、生涯教育などへの投資が重要です。
政府として、すでに3年4000億円のパッケージを導入していますが、
今後さらに教育訓練投資を強化し、人的資本の蓄積を推進することで、
労働移動、雇用流動化を積極的に支援していきます。
とくに兼業・副業の推進とともに、リスキリングに力を入れます」。
もともと兼業・副業については、
令和2年の安倍首相(当時)の所信表明でも語られていたが、
その直後から新型コロナ感染症の国内拡大が深刻化し、
もっぱらリモートワークの推進などに力点が置かれたため、
一時的に棚上げになっていたテーマである。
が、2年半の「待機期間」を経て、
あらためてこの項目が語られたことは重要な意味を持つ。
先に紹介したフロー投資と重ね合わせて解釈すれば、
日本政府の「働き方観」が鮮明に見えてくる。
つまりは、こういうことだ。
「現在の仕事を続けていても、給料は上がらないでしょう。
なので、成長分野やニーズのある分野で働けるようになってください。
でも、給料だけを当てにしていてもダメです。
副業や兼業を行って、自分の食い扶持は、自分で確保しましょう」。
我が意を得たりだ。私も副業・兼業大賛成。
とくに利益が上がっていない企業に勤務する労働者は、
賃上げを願ったところで実現性は低いし、
最低賃金の引き上げは、すでに触れたように、
経営者を追い詰め、逆に低賃金労働者への切り換えにつながりかねない流れだ。
であれば、副業・兼業の解禁というより、
副業・兼業の促進こそが、経営者・労働者双方にとってのメリットになる。
【副業・兼業は、人生100年時代の必須キャリア】
ただし、私が副業・兼業を推進すべきと主張するのは、
「当面の収入の確保手段」にとどまらない意味を持つと考えるからだ。
いわゆる「人生100年時代」への備えである。
年金制度に黄信号が灯ってきた今、
いわゆる後期高齢者になっても働き・収入を得続けることが求められてきた。
だが、定年退職まで、勤務先で割り当てられた仕事だけをこなしていて、
急に新しい仕事ができるだろうか?
なので、一定の賃金が保証されているうちに、
副業・兼業という「実証実験」を通じて、
自分がやれること、やりたいこと、
反対にできないこと、したくないことなどを、
自覚しておくことが大切になる。
大儲けはしなくても、長く、楽しく続けられそうな仕事を見つけておく。
現代の日本における「将来への備え」とは、こういうことだろう。
また、その実験を通じて、起業を考える人が増えれば素晴らしいことだ。
【金融投資で個人資産を増加せよという方針】
岸田首相の発言の続き。
「もう一つ重要なストック面での人への投資が、『貯蓄から投資』です。
我が国個人の金融資産は2000兆円と言われていますが、
その半分以上が預金・現金で保有されています。
この結果、この20年間で米国では家計金融資産が3倍、
英国では2.3倍になったのに、我が国においては1.4倍にしかなっていません。
ここに日本の大きなポテンシャルがあります」。
なるほど。日本人の資産増加率が低い分、伸びしろは大きいという理屈だ。
そしてこう続けた。
「NISAの抜本的拡充や国民の預貯金を資産運用に誘導する新たな仕組みの創設など、
政策を総動員して『資産所得倍増プラン』を進めていきます」。
すでに、首相の発言どおりで、政府は「つみたてNISA」の投資可能期間を、
現行の2037年から2042年まで5年延長する方針を打ち出している。
「つみたてNISA」は、年額最高40万円を20年間にわたって投資でき、
その期間に得た利益については非課税とする制度だ。
たとえばフルで積み立てた場合は40万円×20年間で800万円になり、
仮に利回りが10%であれば、合計880万円が非課税資産になる。
通常なら投資で得た利益には20%課税されるので、
80万円の利益から16万円が差し引かれてしまうが、
それが免除される分、資産形成がしやすいという話だ。
だが、どうだろう?
金融庁は以前、日本人の老後資金は2000万円不足すると言っていなかったか?
積立額が20年で800万円+αでは、半分にも満たない。
それに、そもそもの話だが、
NISAは貯蓄ではなく投資である以上、20年後には元本割れしている可能性もある。
また、NISAで出した損は、他の所得と損益通算ができないルールがあり、
節税メリットもないので、損をした場合は、文字通りの損になる。
岸田首相は、そういうリスクを取れと、国民に言っている。
【そもそも毎月、投資をできる人がどれだけいるのか?】
とはいえ、結果的に『貯蓄から投資』は、不発に終わると私は見ている。
年額40万円を20年間にわたって積み立てられる人が、
それほどいるとは思えないからだ。
実際、6月5日に発表されたJNNの世論調査では、
「今後、貯蓄を投資に回そうと考えるか」との質問に対し、
●投資に回そうと思う23%
●投資に回そうと思わない40%
●投資に回す貯蓄がない34%
という結果が出ている。
しかも物価上昇による実質賃金の下落もますます懸念される昨今、
「投資に回す貯蓄がない」人は、さらに増えていく趨勢だ。
余談だが、個人事業主や法人役員を務めている人で、
多少なら毎月の積み立てを増やせるという人は、
中小企業基盤整備機構が取り扱う小規模企業共済を新たに始めるか、
始めている人は、増額をしたほうがよほど得だ。
【投資に頼らず、つながり力で明日を切り拓こう!】
あらためて岸田首相の「人への投資」の中身をまとめるとこうなる。
●賃上げをすべきという「社会的雰囲気を醸成する」。
→政府としては実のある措置は講じない。
●人材の能力強化を図り、副業や兼業も奨励する。
→その政策に乗れる民間企業にはメリットがある。
●個人の貯蓄が投資に回るように措置を講じる。
→NISAを取り扱う証券会社にはメリットがある。
(→そのおかげで政権は、金融市場から嫌われずに済むメリットがある)
要するに、
「新たな能力を獲得しようとする人や、副業・兼業に挑戦する人、
また、金融投資が可能でそれを恐れない人たちに対しては、
政府としても出来る限りの支援をするが、
そうではない人たちのことは、支援できない」という話だ。
こう書くと、岸田首相が冷たい人のように思われるかもしれないが、
これは首相の人柄の話ではない。日本経済の実情についての話である。
であれば、私たちは、投資などとという不確かなものに頼るのではなく、
自らの適性を認識し、能力を鍛え、それを評価してくれる人々を見つけ出し、
その人々と手を携えて成長市場を探し、あるいは画期的な商品を開発して、
明日の仕事と生活を主体的に切り拓いていくべきだ。
政府が「貯蓄から投資へ」を訴えるなら、
私は、所得アップと心豊かな人生を掴むためには、
あらためて「つながり力の強化」を訴えたい。
<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>
■□■───────────────■□■
NICe最新情報 /info
■□■───────────────■□■
《Mr.NICe》 6月14日更新
増田通信より「ふ~ん なるほどねえ」243
<最近の刺激> 「生観戦」は、非日常のかたまり
/archives/51993
─────────────────────
《Mr.NICe》 6月7日更新
増田通信より「ふ~ん なるほどねえ」242
<最近の熟慮> 国境なきつながり力
/archives/51987
─────────────────────
《NEWS》 6月6日更新
NICe日記大賞2022 発表! 5月の月間大賞
「それは 進化の邪魔してないかな」
/archives/47672
─────────────────────
■□■───────────────■□■
NICeの活動 イベント、勉強会等のお知らせ
/real_schedule
■□■───────────────■□■
「職場備蓄管理者 認定資格講座」
一般社団法人 防災備蓄収納プランナー協会主催
7月7日 東京都、8月5日 WEB、9月27日 東京都、
10月4日 WEB、11月17日 大阪市
https://bichiku-shunou.or.jp/qualification/qualification-manager/
─────────────────────
「防災備蓄収納2級プランナー講座」
一般社団法人 防災備蓄収納プランナー協会主催
6月21日 東京都、6月22日 大阪市、6月29日 西宮市、
7月8日 WEB、7月21日 大阪市、WEB、8月3日 WEB、
9月9日 WEB、9月27日 大阪市
─────────────────────
「防災備蓄収納1級プランナー講座」
一般社団法人 防災備蓄収納プランナー協会主催
6月28日・29日 福岡市、7月27日・28日 東京都
9月6日・7日 東京都、9月14日・15日 大阪市
─────────────────────
夏休みに親子で参加
「分類マップ・防災備蓄収納カード講座」
一般社団法人 防災備蓄収納プランナー協会主催
8月2日 千葉市
https://bichiku-shunou.or.jp/qualification/qualification-mapcard/
─────────────────────
上記はSNS登録を問わずご参加いただけます。
これまでのNICe開催レポートはこちら
/real_all
■□■───────────────■□■
お知らせ NICeな仲間の活動情報
動画チャンネル「経営改善は、脱!どんぶり勘定」
■□■───────────────■□■
メルマガvo.91の「先輩経験談 あるある!ピンチ&リカバリー」に登場いただいた
株式会社アイユート(愛知県名古屋市)代表取締役の服部正雄さん。
/archives/46521
どんぶり勘定になりやすい中小の建設業経営者の
お役に立ちたいとの思いで、動画チャンネルを開設し、
100回継続を目指しています。
このたび折返しの50回に達しました!
チャンネル登録よろしくお願いします。
「経営改善は、脱!どんぶり勘定」
https://www.youtube.com/channel/UCTworFvKRj_5vRBMp1OvHOA/about
〇●〇───────────────〇●〇
┃ ┃ ┃ ┃ ┃編┃集┃後┃記┃ ┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛━┛
2号前のメルマガでご紹介した、熊本県八代市の岡初義さんの、
い草『寝ござAndo』クラウドファンディング。
なんと目標1030%達成とのこと、おめでとうございます!
https://www.makuake.com/project/matsubatatamiten02/?fbclid=IwAR2W4L-o2-GMRfNjdSKTA3c39MW1krskTCbLjhxI0MJJus0wk55085uiYxI
我が家でも、岡さんの寝ござを愛用していますが、
爽やかな薫りと心地よい肌触りは、まさに夏の癒しです。
ちょうど今朝、今季初となるホトトギス(時鳥)の声が聴こえました。
風鈴と寝ゴザを出すタイミングを知らせてくれる初夏のさえずり。
毎年この声で、夏がいよいよ始まるなぁと思います。
みなさんも、どうぞお元気で、夏をお迎えくださいね。
次号の「つながり力で起業・新規事業!」NICeメルマガは、
7月11日頃の配信予定です。
(NICe広報・岡部)
┌────────────────────┐
増田紀彦代表およびNICe会員への講演・取材
依頼は
こちらのフォームにて受け付けています
└────────────────────┘
┌────────────────────┐
NICeのSNSは登録も利用も無料です。
登録ご希望の方はこちら
ご不明点はこちらQ&A、またはメールにてお問い合わせください
Email :jimukyoku@nice.or.jp
└────────────────────┘
┌────────────────────┐
メルマガのバックナンバーズ
一覧はこちら
/archives/22957
メルマガの
登録および解除はこちら
└────────────────────┘
■□■───────────────■□■
つながり力で、日本経済と地域社会の未来を拓く!
■ 発行: 一般社団法人起業支援ネットワークNICe
■ 〒152-0001 東京都目黒区中央町2-6-8-1F
■ URL:https://www.nice.or.jp
■ TEL&FAX (03) 6316-9029
■ Email: jimukyoku@nice.or.jp
■ 代表理事 増田紀彦
□───────────────□
Copyright(C) NICe
□───────────────□