増田通信より「ふ~ん なるほどねえ」229 事業の再構築は、コロナの収束を見込んで計画する
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<最近の進言> 事業の再構築は、コロナの収束を見込んで計画する
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福島県のいわき信用組合さん主催の「事業再構築セミナー」で講師を務めた。
9月13日に4回シリーズの最終回が終了。
すべてオンラインでの開催だったが、
参加者の熱意は、ディスプレイ越しにも十分伝わってきた。
事業再構築といえば、事業再構築補助金を思い浮かべる人が多いだろう。
だが、私のセミナーの主旨は、
「むしろ闇雲に補助金を取りにいくことなかれ」である。
大型の設備投資やシステム投資、建物の取得などをせずとも、
言い換えれば、ほとんど資金を投じることなく、
達成可能な事業再構築方法はいくらでもあることを、実例を挙げて説明した。
もちろん、新たな事業を生み出すために、
不可欠かつ有効な投資だと判断するのなら、お金を使うことには反対しないし、
そうであれば、その費用の3分の2(場合によっては4分の3)を補助してくれる、
国の制度を活用することにも反対しない。
大事なことは、コストをかけるにせよ、かけないにせよ、
新たに取り組む事業(再構築事業)が、
本当にその企業の今後を支える事業となるのかどうかだ。
事業再構築補助金は、コロナ禍によって、
売り上げなどに大きな打撃を受けた企業を対象とし、
この機会に新たなビジネスモデルを作り上げることを支援している。
それでは、どういう取り組みなら支援の対象になるのか?
経済産業省は親切に、
様々な新分野展開や業態転換、業種転換などのモデルケースを公表している。
その中の2つの例を紹介する。
【その1】
宿泊施設や観光施設を対象とする建設業が、
新たにアクリル板などのプラスチック加工製品の製造に着手。
【その2】
観光バス事業を営む企業が、
新たに高齢者施設向けの送迎サービスを開始。
確かにどちらの業種も、コロナの影響をもろに受けており、
何らかの転換を図ることが急務だろうし、
どちらの新規事業もニーズは存在している。
ただし、そのニーズはいつまで続くのか? である。
ワクチン接種が進み、集団免疫が広がってきた場合、
飛沫感染防止用のアクリル板の需要が継続するだろうか?
私は、そう何年も続かないと思う。
一方、バス会社が取り組む高齢者施設向けの送迎サービスは、
運転手が一定の介護職資格を取得すべきであるとか、
高齢者だからこその事故や急病にどう対応するのかなどの、
課題やリスクはついてまわるが、
それでもニーズが急速に衰えることはないだろう。
事業再構築補助金は、計画において3~5年後の成長をうたう必要がある。
仮に今、補助金を申請し、採択・交付となった場合、
補助事業期間は2022年1月から12月になり、
翌2023年1月から5年後の2027年の末の段階で、
国が示す最低限の成長を達成することが求められている。
2027年の年末である!
コロナが昔話になっていてもおかしくない歳月だ。
今の今、こういうニーズがあるから、それをとらえて事業にする、
という発想では、事業再構築計画に説得力を持たせることは無理だ。
事業再構築補助金は、少なからぬ数の中小企業経営者を、
「よし、何とか次の手を打とう」という気持ちにさせたことは間違いない。
それは成果だ。
ただし、この補助金はコロナに苦しむ企業を救済する政策ではない。
コロナに屈しない、強い中小企業を育成するための制度である。
コロナの収束を見込んだ事業の再構築計画が、
補助金を申請する企業にも、しない企業にも求められる昨今である。
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増田紀彦NICe代表理事が、毎月7日と14日(7と14で714(ナイス)!)に、
NICe正会員・協力会員・賛助会員、寄付者と公式サポーターの皆さんへ、
感謝と連帯を込めてお送りしている【NICe会員限定レター「ふ〜んなるほどねえ」スモールマガジン!増田通信】。
第229号(2021/0914発行)より一部抜粋して掲載しました。
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