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厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、NICe増田代表理事が送る、視点・分析・メッセージ 。21日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
個人消費は、もう抑えられない



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 「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

 第93回 個人消費は、もう抑えられない
 
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【もはや「座敷わらし」か「籠の鳥」か】

不要不急の外出や、県境をまたぐ移動の自粛が呼びかけられて久しい。
さらに「宣言」の延長や適用地域の拡大も決まった。やれやれ……。

オフィスこそ東京にあるものの、福島県や茨城県、
愛知県や大阪府を主戦場とする私としては、ほんと出かける先がない。

実際、ダイアリーを遡ってみたところ、
東京五輪が開会した7月23日を最後に都内での用事はまったくなく、
東京を離れたのも、8月4日に日帰りで福島県白河市へ出かけた1回だけ。

コロナ以前は、自宅より出張先で寝泊まりするほうが多いくらいだった私が、
今では座敷わらしの如く、四六時中、自宅にへばりついている。

当然、日用品の消耗頻度もすごい!


【ただし、スーパーへは日参状態】

サニタリー用品は言うまでもなく、
コーヒー用フィルターや布巾類の消耗もハンパない。
とくに驚かされるのが、調味料、食器用洗剤、サランラップの減り方である。

外泊をしなくなったうえに、東京都は飲食店での飲酒ができず、
「食事=飲酒」の私としては、外へ出かける理由がなく、
結果、朝も昼も晩も、自宅で食事を摂っているからだ。

当然、食材や食品、飲料の購入頻度も赤丸急上昇。
しかも、従来なら購入しなかった「お高い品」や、
なくても困らない嗜好品の類もジャンジャンバリバリ買っている(笑)。

こんな私のような人が、全国にはごまんといるはず。
であれば、スーパーは、さぞや儲けているだろう。

が、待てよ。
外出を控えるのであれば、
食材や日用品をネットショップで購入する人が多いかもしれない……。


【特需ではない。スーパーは、コロナに脅かされない業態】

ところが、どっこい。
成城石井が昨年8月に実施した、
コロナ禍における食品スーパーの利用意識調査の結果を見ると、
89%の人が、食品購入はネットより食品スーパーを重視すると回答している。
その理由のトップは、「生鮮食品は直接見て手に取って購入したい」である。
確かにそうだ。

実際、日本チェーンストア協会によれば、
2020年度の既存店ベースの売上高伸び率は前年度比0.7%増で、
実に5年ぶりの増収になったという。

しかしその期間は、営業時間短縮や休業するーパーもかなりあったし、
食品以外、例えば衣料品などの売上高は相当落ち込んだはずである。
それでも業界全体としては、この好調ぶり。

巣籠もり需要による「コロナ特需」というより、
「コロナに脅かされない業態」の強みゆえだと私は思う。


【髭は剃らないし、ワイシャツも着ないし……】

一方で、私のかつての主要支出項目である、
交通費や宿泊費、外食費や交際費、遊興費などは軒並み減少した。

また、地味だが実感として激減しているのがクリーニング代だ。
サンタの背中の袋並みに大量の洗濯物を持ち込んだ日々が懐かしい。

髭を剃る回数も減り、
剃刀の替え刃やシェービングフォームも買い換えずに済んでいる。


【4~6月期実質GDPでプラスに転じた個人消費】

長々と、私の愚にもつかない暮らしぶりをお読み頂き恐縮である。
個人消費の内容やスタイルが、1年半以上続くコロナ禍により、
どう変わり、あるいは、どう変わらないかの一例とご理解頂きたい。

むろん、性別や年代、地域や働き方の違いなどによって変化の中身も異なるが、
間違いなく言えることは、コロナ禍によって、
売れる商品とそうでない商品の差が拡大しただけでなく、
売れる業態とそうでない業態の違いも鮮明になりつつあることだ。
いわば、個人消費の「二重の二極化」である。

さて、内閣府は8月16日に、2021年4~6月期の実質GDP速報値を発表した。
マイナス成長だった1~3月期と比べれば年率1.3%増ではあったが、
コロナ前の水準にはまだ達しない。景気回復は、もう少し先だ。

それでも短期的に見れば、4~6月期はプラスに転じており、
それに貢献したのが、前期比0.8%増を記録した個人消費である。


【人々の消費行動は、決して理性的ではない】

西村経済財政・再生大臣が記者会見で「複雑な思い」と述べたように、
政府が呼びかける外出自粛に応じる人が多ければ、
本来、個人消費はマイナスになるはずである。だが、実際は逆だった。

経済活動を抑制した反動による「リベンジ消費」という見方もあるが、
私は決して一過性の現象ではないと思う。

多くの人が、もう、消費意欲を抑えられない段階に来ている。

実質GDP速報値発表前、多くの経済専門家たちは、
こぞって個人消費は引き続きマイナスになるとの予測を公表していた。
東京都などに3回目の緊急事態宣言が出されたことなどを加味したのだろう。
だが、事実は小説より奇なり。
多くの人の消費意欲は、プロの予測を超えるレベルに達したのである。

もとより人々の消費行動は、決して理性的ではなく、
例えば「年度が変わったから」とか、「桜前線が北上したから」など、
客観的には説明しづらい理由で、消費を増やしたりする。

また、行動経済学においては、人間はよく考えてものを買うというより、
直感的に買って、その後で意味付けをしているとも説明される。

要するに、人々は本能的に消費をしたい生き物なのだ。
そういう本能がなければ、そもそも経済など成立しない。


【消費拡大に影響する短期的要因もあるが……】

むろん個人消費増加の背景の一因には、
アメリカ経済や中国経済の回復動向を受け、
製造業を中心に輸出や設備投資が増加傾向となり、
これら企業の景況感が良好なことから、
勤務する人々や取引先に安堵感が広がっていることはあるだろう。

また、私のように、
以前は会社の経費で飲み食いすることが多かった人が、
その機会を失って家計支出を増やしている影響もあるかもしれない。

だが、そうした短期的な要因よりも、
私はやはり、本能の抑制限界論を主張したい。


【数百万年かけて形成された本能が、1、2年で変わるか?】

「サピエンス消費」という言葉をご存じだろうか。
まだ、広く知れ渡ってはいない理論かもしれないが、
人間進化のプロセスから、人々の消費行動を解明しようとする研究テーマで、
日本では、クロス・マーケティンググループが先達である。

この研究の全容を紹介することはとうていできないが、
例えば、こんな一節に「なるほど」と膝を打ちたくなる。

『狩猟採集生活に適応して進化した心の構造や働きは、
遺伝子を残すために有利であったわけだが、
必ずしも現代の消費社会においても同じように有利であるとは限らない。
したがって、そこで誤作動が生じることも多い。
例えば商品を手にして得られる「お得感」や、
心が満たされる「ごほうび感」といった脳が感知する快楽は、
進化的に備わった心が仕向けた結果だが、
現代社会においては、肥満や買物中毒といった副作用も起こしうる』。

なかなか興味深い考察ではないだろうか。
人類の本能は、数百万年間という時間を掛けて形成されてきたものである。
それがコロナ禍の1年や2年で変化するわけがない。
そう考える方が自然だと私は思う。

ゆえに人々の消費は、必ず息を吹き返す。もう、抑えることはできない。

ただし、何が売れるか、どういう売り方が好まれるか、
そこはしっかりか検討すべきポイントである。
スーパーの強みでも触れた、
「コロナに脅かされない業態や商品とは何か」を、あらためて考えてみたい。

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>

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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.148
(2021.8.23配信)より抜粋して転載しました。
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