vol.147【増田紀彦の「ビジネスチャンス 見~つけた」第35回:「残存者利益」に横入り】
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Vol.147 2021.8.11
つながり力で起業・新規事業!メールマガジン
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【1】シリーズ増田紀彦の
「ビジネスチャンス 見~つけた」
第35回 「残存者利益」に横入り
【2】先輩経験談
あるある!ピンチ&リカバリー
第27回 栁沼美千子さん(福島県)
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増田紀彦の「ビジネスチャンス 見~つけた」
第35回 「残存者利益」に横入り
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福井県福井市に本拠を置く三谷商事という会社がある。
東証2部上場企業である。
全国的な知名度は高くないかもしれないが、
業界関係者はもちろんのこと、
福井県民なら、まず知らない人はいない地元の超優良企業だ。
相場の「そ」の字も読めない私ではあるが、
それでも、三谷株の売買では、まずまずの利益を得た。
もっとも、かれこれ15年以上前の話だが。
その当時、北陸新幹線の延伸計画が話題になっており、
セメントや生コンの販売シェア日本一の三谷にとっては、
またとない躍進のチャンスだと私は考えたのだ。
もちろん、北陸に建設する新幹線の工事資材なのだから、
北陸の商社が取り扱うだろう、という程度の考えではなかった。
ご存じのように、戦後日本の地方経済は、
公共工事によって牽引されてきたわけだが、
2001年に発足した小泉内閣は一転、
財政再建を掲げて歳出削減を断行すると言い出し、
公共事業費を一気に10%もカットしたのである。
この流れは民主党政権時代にも引き継がれ、20年を経た現在も続いている。
こうなれば、建設業関連は軒並みピンチだ。
実際、小泉ショックにより倒産した建設関連企業は数知れず。
しかし!
日本からいっさいの工事が消えてなくなるわけではなく、
誰かがセメントや生コンを製造し、誰かが販売することは間違いない。
その誰かとは、逆風に耐えて生き延びた企業である。
そして、その誰かは、競争相手の少なさを追い風にして、
有利な事業展開を図ることができる。
こういう市場における独占的状態を、残存者利益と呼ぶ。
つまり私は三谷商事が残存者利益を獲得すると予測したのである。
とはいえ、結局のところ、
どのような要因で三谷の株価が上がったのかは明言できないし、
新幹線延伸計画はほどなく、延期となってしまった。
が、とにかく「安く買って高く売り」を何度か繰り返して、
ちゃっかりお小遣いを稼いだのは事実である(ラッキー)。
話題は現在に移る。
かつての建設業のように、今、にっちもさっちも行かなくなっているのが、
宿泊業や飲食店業である。
つい先日、ある地方都市のショッピングモールを視察したところ、
こっちもあっちも「空き物件」の張り紙が出されていて驚いた。
中には、地元でも有名な飲食店が入っていた建物もあり、
聞けば、「とうとう今年の5月で力が尽きた」とのこと。
ちなみに、その物件の隣にある店舗の経営者に声をかけてみると、
「うちもあと2カ月で閉店する」と。
コロナ禍に耐えられなかった飲食店の実態を肌で感じた。
しかし!
宿泊業や飲食店業もまた、この世から消えるわけではないし、
消費者ニーズが衰えてしまうこともない。
実際、休業要請や時短要請を無視して、
遅い時間まで酒類を提供している飲食店が、いかに儲かっているかは、
ニュースなどで多くの人が知るところである。
その経営方針の「良い・悪い」の議論ではなく、
競争相手が減れば、それだけ利益が大きいという事実に注目してほしい。
この現象も、ある意味での残存者利益である。
まあ、そうしたヤンチャなやり方を推奨する気は毛頭ない。
だが、ニーズが存在しながら、競争相手が減少している業界には、
チャンスが広がっていることは間違いないのだ。
宿泊業の買収もすでにあちこちで進んでいる。
また、飲食店業であれば、初期投資もそれなりにとどめられるので、
異業種からの参入や新規の創業分野としても魅力がある。
ちなみに、廃業した飲食店の多くは、
厨房設備や客席などを撤去する「原状回復費用」が捻出できず、
それらを「残置物」として、そのまま店内に置いていくケースが多い。
これらを新規購入しようとすれば最低でも数百万円、
さらに内装などの造作工事費を合わせれば、
たいがいは1000万円を超える費用をかけているはず。
それが、ただで手に入るのである。
中には、「固定資産の有料譲渡」を主張して、
次の店子にそれらを買い取るよう要望する元経営者もいるかもしれないが、
撤退からすぐに後釜が見つからない場合、そうした方法はまず断念する。
というわけで、
「残存者利益」が出そうな業界に目をつけ、そこにちゃっかり横入りする。
そういう視点も頭に入れて、次の挑戦を構想してもいいタイミングだ。
昨今の報道を目にしていると、
アフターコロナはまだまだ先のように思えてしまうが、
半年や1年も経てば、それなりに収束していてもおかしくはないだろう。
事業を準備するための期間として考えた場合、
半年や1年など、あっと言う間である。
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「先輩経験談 あるある!ピンチ&リカバリー」
第27回
できること・したいこと、捨てる勇気。
体に良い食&震災を乗り越えた情熱で、新事業へ転換
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起業したては誰もが新人。独立してから遭遇する、
始動して初めてわかる、直面するピンチや悩みの数々。
そんな「起業あるある!」事例から学ぶシリーズ。
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栁沼美千子さん 2007年開業
福島県須賀川市
料理研究家、「MANA」代表
「MANAピクルス」販売
すかがわ観光物産館flatto
https://sukagawanote.jp/2021/06/20/sukagawa_information_6-2-2/
道の駅たまかわ こぶしの里
http://www.kobushinosato.com/
鏡石まちの駅 かんかんてらす
http://www.kankanterasu.jp/
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2013年、第1回NICeなビジネスプランコンテストで、
自然酵母のこだわりのパンづくりと、
編み組細工技術の保全のための10年計画を発表し、
初代グランプリに輝いた料理研究家の柳沼さん。
その後、着々と計画を進め、料理と編み組指導もしながら、
砂糖を使用しないキクイモパンも商品化させ、
県内の病院や空港、百貨店など販売網を拡大。
2016年には、東京の京王百貨店 新宿店で開催された
『みちのく いいもん うまいもん』で対面販売を行い、
多くの支持と評価を広げてきた。
ところが、2020年夏、パンの販売も編み組も、辞めたと言う。
どうしたというのか?! 大ピンチ?
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「いえいえピンチと思っていません、ワクワクしています(笑)。
新たな事業を立ち上げたのです。ピクルスです。
自宅に併設していたパンの工房だと、自然酵母のパンづくりと、
ピクルス製造を同時にはできない、と保健所に言われてしまって。
じゃ、パンは辞めよう、編み組もこの際、と、きれいさっぱり。
えっ? 誰かに相談したかって? しませんよー(笑)。
だって、やるのは自分ですもの。
自分がやりたいと思ったこと、できることを、どこまでできるか、
挑戦したくなったのです、それが地場産ピクルス。
決断するのは早かったですよ。
私のベースにずっとあるのは、“体に良い食”です。
ここ数年、加工商品のアドバイザーも務めていて、
自分で徹底してこだわったピクルスをつくりたくなったのです。
震災前に農業短期大学で農業を学び始めてから、
自分でも栽培を始め、いろんな農家さんとのご縁も広がっていました。
ちょっとの傷や変形があるだけで、出荷できない、廃棄されてしまう。
地元の美味しい農産物がもったいなさすぎる!との思いがずっとあったのです。
じゃ、やろうと。
醸造酢は、地元で8代続く老舗・太田酢店さんのお酢で、
食材の仲間は、地元の生産者さんをはじめ、
震災後に受講した『ふくしま6次化創業塾』で知り合った受講生も。
昨秋には、クラウドファンディングにも初挑戦して、
おかげさまで無事目標金額を達成することがきでました。
今は、季節ごとに旬の地場産野菜や果物をピクルスにして、
地域の物産館や道の駅で販売しています。
振り返れば、起業して最大のピンチは2011年の大震災でした。
この世の終わりかと思いました。
ご近所は全壊しているし、自宅の中も工房もめちゃくちゃ。
情報はなく、海外の知り合いから国外避難を勧められたり。
地割れで畑作業もできず、パンの材料も入手できない。
何より一番は気持ちですね、しばらくパンをつくる気すら起きませんでした。
少しずつ気持ちが前向きになったのは、震災から半年後、
6次化創業塾に参加してからです。講師はNICeの増田さんで、
そこでいろいろな受講生と仲間になって、
微力な私にもできることは何だろうと考えるようになり、
仲間と一緒にと、少しずつ前向きな気持ちになっていきました。
こんな小さな私にでも何かできるのでは?と。
私のパンを食べていただいて、
意気消沈している人に何かしら力を、元気を、少しでも
与えられたら良いなというのがパワーの源でした。
美味しいよという一言で、私もよしっ!次もがんばろう!と思えて、
その積み重ねでここまで来たでしょうか。
信じて、研磨して、つくって、アピールして、共感して喜んでいただく。
6次化創業塾で学んで燃えた心の火を、今も灯し続けている感じです。
どんな状況でも、大切なのは、まずは自分が動くことかなと実感しています。
動けば何かが変わりますし、どんなに小さな一歩でも、
動けば風が動いて、人を巻き込むし、人にも巻き込まれていきます。
出会ってきた人たちも、出合ってきた経験も、すべて活かして、
新たな挑戦、これからピクルスで頑張っていきます!!」
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あなたの挑戦を応援しマッスー☆
ワンポイントガイド
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柳沼さんが暮らす須賀川市は福島県の内陸部に位置します。です
ので津波が押し寄せることはありませんでしたが、建物の倒壊が
相次ぎ、ダム湖も決壊して多くの方の命が奪われました。その恐
怖と被害を経て、彼女が「頑張ろう」とやってきたのが、「ふく
しま6次化創業塾」でした。講師を務めたのは私です。震災発生
からまだ半年程度の時期でした。そんな折りに、「福島県産の農
産物や食品を売ろう」という勉強会です。受講生も私もまさに命
懸けの取り組みでした。ところが一人だけ、何事もなかったよう
にニコニコしている人がいるのです。それが柳沼さんでした。
この世に、こんなポジティブな人がいるのかと、驚いたものです。
でも、時を重ねる中で、彼女の強さの秘密がわかってきました。
決して能天気なわけではありません(笑)。彼女は、元気を得るた
めに、どんどん人と関わるのです。そして、もらった元気を今度
はどんどん返していきます。その繰り返しによって、彼女の周囲
には前向きな空気が広がっていくのです。この10年、柳沼さんを
見ていて、それがよくわかりました。辛い時や苦しい時、人と会
うのがイヤになることもあります。でも、その辛さや苦しさを乗
り越える力を与えてくれるのは、結局、人です。自然災害には、
容易に抗することはできませんが、再起はできます。人と人が力
を合わせれば……。そのことを、身をもって教えてくれた柳沼さ
んこそ、我が人生の師です。(ますだ)
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┃ ┃ ┃ ┃ ┃編┃集┃後┃記┃ ┃
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先輩経験談に登場いただいた柳沼さんと
初めて会ったのは震災翌年、福島市で開催したNICe大宴会でした。
復興を願い、場を盛り上げようと、全国からお越しのみなさんには
コスプレを推奨したのですが、室内とはいえ、外は小雪が舞う真冬の2月。
そんな中、笑顔と元気をふりまいて場内を沸かせてくださったのが、
華やかなフラガール姿で参加くださった柳沼さんでした。
お会いするたびに、柳沼さんに惚れ惚れし、驚かされることばかりです。
食へのこだわり、パンの美味しさはもちろん、
そのお人柄、行動力、誰に対しても温かく、愛が溢れていらっしゃること。
そして、今回の取材で、さらに驚きました。
パンづくりの天才と評された実績も、編み組細工の指導・職人の実績も捨て、
ピクルス1本に絞ったとは! 潔さと勇気に、鳥肌が立ちました。
柳沼さんのご経験と技術、つながりと愛がたっぷりの「MANAピクルス」
ぜひみなさんもご賞味くださいね。
「つながり力で起業・新規事業!」
次号のNICeメルマガは、8月23日頃の配信予定です。
(NICe広報・岡部)
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