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厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、NICe増田代表理事が送る、視点・分析・メッセージ 。21日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
脱! 目先の利益&小手先の対応



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 「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

 第87回 
 脱! 目先の利益&小手先の対応
 
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【株価はついに3万円の大台に乗ったが……】

2月15日午前の東京株式市場で、日経平均株価がついに3万円台に乗った。
あのバブル経済の末期以来、実に30年と6カ月ぶりだ。
懐かしくもあるが、またか……という、一抹の不安もある。

もともと世界中の余ったマネーが東京市場に流れ込み、株価は上昇の一途。
先高観の強さは承知していたが、3万円台到達は思ったより早かった。

前週末の米市場で主要3指数が揃って過去最高値を付け、
投資家の心理が上向きになったことや、
トランプ弾劾裁判がいとも簡単に終了し、
米政府が景気対策に集中できると見込めたこと、
原油高が続いていること、国内製造業の業績がおおむね良いこと、
さらにはファイザーのワクチンが日本で早々に承認されたこと、
こうした要因が複合した結果の「大台乗せ」だったと考えられる。


【不安を拭えない遺伝子組み替えワクチン】

もっとも、皮肉な視点ではあるが、
株式市場に流れ込んでいる原資が、
世界のコロナ禍景気対策資金である以上、
コロナが収束すれば金余りも収束するため、株価下落も十分あり得る。

また、ファイザーワクチンの承認は、諸刃の剣の面もある。
すでにアメリカでは55人以上、スウェーデンでは33人以上、
ノルウェーでは29人以上、イスラエルでも多数が、
ワクチン接種後、短期間で死亡していることが確認されている。
もちろん、これらの方々の死因と、
ワクチンとの因果関係が証明されたわけではないし、
むしろ、「その程度」の死亡割合は折り込み済みの範囲かもしれない。

しかし、史上初の遺伝子組み替えワクチンが、
人類に何をもたらすのか、まだまだ不透明であることは間違いない。
コロナ禍一転、ワクチン禍にでもなれば、
株価の暴落は確実だろうし、そもそも、株価どころの話ではなくなる。

株価は経済状況を反映する重要な指標ではあるが、
それは多分に「目の前の光景」を根拠にして上下する性質があり、
経済の本当の状態を映し出しているとは言い難い。


【上がったり下がったりのGDPに惑わされない】

さらに2月15日、内閣府は20年10月-12月期のGDP速報値について、
前の3カ月と比べてプラス3.0%、
このペースが1年間続いた場合の年率換算でプラス12.7%になると発表した。

これは、GoToキャンペーンで個人消費がプラスに転じたことや、
輸出が好調だったことによるが、
この指標もまた、「だから何?」と言わざるを得ない。

そもそも、「前の3カ月と比べれば、良くなった」という話で、
たとえば前年同期比で言えば、マイナス4.8%であり、
コロナ禍前の水準にはほど遠い状況だ。

また、ご存じのとおり、再びの緊急事態宣言発令により、
個人消費の増加に貢献したGoToキャンペーンも停止しているし、
飲食店やカラオケ店に対する営業時間短縮の要請や
都道府県をまたぐ移動の自粛などの要請もあり、
21年1月-3月期のGDPが再びマイナスに転じることは明白である。

コロナ禍においては、たったひとつのニュースが、
景況を良いほうにも、悪いほうにも、大きく傾けてしまう。
そのたびに、喜んだり落ち込んだりしていては、それこそ身が持たない。

苦しい時ではあるが、今の困難に耐えつつも、
私たちは、より長期的な構想を抱く必要がある。


【中小企業淘汰政策などより大事なこと】

政府の長期的な経済政策の方向性は、
「生産性向上のために中小企業の淘汰をはかり、構造改革を実現する」、
というものである。

この政策に対する批判は以前に何度も行っているが
生産性を向上させるということは、
商品の供給を現状より高めるということである。

しかし、日本経済を長く苦しめているデフレは、
まさに商品供給の過剰、言い換えれば需要の小ささに起因しているのであり、
なのに、そのトレンドを増長させるとは、実に不可思議である。

また、中小企業や小規模企業の淘汰が進めば、
当然、地域経済に大きなダメージを与えることになる。

要は弱肉強食だ。
資本主義とはそういうものだが、
国民を守る立場の政府が、それをあえて後押しする必要があるのだろうか。
それこそ、株価やGDPが上昇したとしても、
その蔭で、普通の暮らしや、ささやかな幸せを奪われる人が出ることに、
政府は痛みを感じないのだろうか?

ほかにやるべきことがあると、私は思う。


【やはり来た。福島沖を震源とする大地震】

2月13日の深夜、福島県沖を震源とする、M7.4の地震が発生した。

東京にある私の自宅でも大きな揺れだった。
初めは小刻み。それがなかなか収まらず、むしろ揺れはどんどん強くなる……。

「10年前と同じような揺れ方だ」。そう思って、正直、恐怖を感じた。

震源は、やはり福島県沖だった。

深夜だったが、すぐに福島県各地の仲間たちに電話を入れた。
みんな無事だったが、やはり10年前の出来事の記憶と重なり、
強いショックを受けている人たちも少なからずいた。

あの3.11のあと、専門家のひとりが、
「今回の大地震の余震は、130年ほど続くだろう」と述べていた。
人間の有する時間と、地球の有する時間とでは物差しがまるで違うのだ。


【地震列島日本のイの一番は国土強靱化】

前々回のこのコラムで私は「備える門には福来る」と題し、
コロナ禍だけに目を奪われることなく、
繰り返し発生する自然災害への備えを強化しようと呼びかけた。

が、まさか、その2カ月後に、
これほど大きな地震が起きるとは思っていなかった。
と、いうのは、本当の気持ちではない。

「起きてほしくない」と願っていたが、本当のところは、
「いつまた大地震が来てもおかしくない」と思いながらの執筆だった。

すでに常識となっているが、
日本列島は今、地震活動期に入っている。
つまり、何度でも大きな地震が繰り返されるということだ。

2月13日の地震の震源は55kmと深かったため、
大きな津波は起きなかったが、
仮にもっと震源が浅ければ、どんな事態になっていたか……。

政府がやるべきこととは、やはり一にも二にも国土強靱化だ。


【国土強靱化で国民の命と地方経済を守るビジョンを】

政府は、今年度まで実施している国土強靱化緊急対策について、
来年度から5年間延長し、事業規模15兆円を計画しているという。
事業を打ち切らなかったことは正しいが、
5年間で15兆円はあまりに少ない。倍でも3倍でもいい。

ちなみに、この方針に対して野党は、
「それよりもコロナ対策費だ」などと主張していたが、
まさに、目の前の光景しか見ていない姿勢であり、残念極まりない。

コロナ対策はもちろん重要だが、
日本列島が抱える大きな問題を放置して、明日を語ることなど不可能だ。

なおかつ、自然災害のもととなる、海岸や河川、山地は地方に多い。
これらの地域の防災力を高めることは、
国民の命を守る要諦であると同時に、
全国くまなく公共事業の経済効果が波及することにもなり、
「生産性の低い中小企業を淘汰する」などと言わなくても済むようになる。

民需の停滞している経済状況下においては、
官需、すなわち政府の財政出動こそが、経済活性の原動力だ。

不幸中の幸いというか、2月13日の地震では、死者は出なかった。
が、もし、発生が土曜日の深夜ではなく、
平日の日中だったら、大変な事態になっていただろう。

私は、地震の恐ろしさを忘れ始めている日本人への警告だと受け止めた。

目先の利益。小手先の対応。
私たちは、いい加減そういうものを良しとせず、
長期的な視点で豊かな日本のあり方を考えるべきではないだろうか。

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>

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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.136
(2021.2.22配信)より抜粋して転載しました。
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