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厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、NICe増田代表理事が送る、視点・分析・メッセージ 。21日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
備える門には福来る



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 「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

 第85回 
 備える門には福来る
 
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【確かに難しい、次の一手の打ち方】

コロナ一色の2020年も、残すところわずかとなった。

新年はどんな年になるのだろう? 
春になって桜が咲く頃には、感染拡大が収まるのだろうか?
今度こそ、卒業式や入学式はできるのだろうか?
オリンピックやパラリンピックは大丈夫か?
ワクチン接種はいつから? そもそも安全なのか?
治療薬は……、すぐには無理だろうなあ。
結局、いつまで、この状況が続くのだろう?
もしかして、もっと事態が悪化することもあるのでは?
そうなったら、仕事や生活は、どうなってしまうのだろう?

多くの人が、数えきれない不安の種を抱えて迎えた年の瀬。
起業家や経営者にとっては、さらに悩ましいことが山積みだ。

売上をいかに確保するか、従業員はこのままでいいのか、
原価や賃料をはじめ、コストをどう考えるべきか、
もとより、現在の業態や事業内容を続けていて良いのだろうか……。

企業経営のどこを切っても難問ばかりだ。
難問の難問たる所以は、
逼迫した現状への対策だけでは済まないところにある。

経営者の重要任務は、「次の展開」を予測し、準備し、
市場の変化から取り残されないように手を打つことにある。
しかし、この先の予測がどうにもつかない。
こんな状況で、次の一手を決めるのは、確かに難しい。


【今、国が取るべき政策は需要の創出である】

確かに難しいが、だからと言って、何もしないわけにもいかない。
むろん、「自助」を強く打ち出す国にすがるのも的外れだ。

前々回のこのコラムでも指摘したように、
政府は中小企業や小規模企業の淘汰を是とする政策に舵を切った。

市場ニーズに応えられない企業が退場を余儀なくされるのは当然だが、
政府は、そこではなく、生産性の高低で企業を評価し始めた。
「規模が小さいほど生産性が低い、だから合併を進めろ」と。

しかし、今、生産性を上げることに何の意味があるのだろう。
医療用品や衛生関連用品に限ればそうかもしれないが、
経済全体を見回せば、コロナ不況が大きく広がっており、
家計も企業も積極的な消費をするような流れではない。
つまり、デフレがまたぞろ進行する展開である。

なのに、生産性を上げて供給力を高めるとは、どういう考えなのか?
それではますます供給過剰になり、物価の下落が増すばかりだ。
正直、私には理解ができない政策である。

もっとも、政府が大胆な財政出動を何年間かに渡って実施する、
つまり、政府が責任を持って需要を作り出すというのならわかるが、
そういう話も聞こえてこない。


【あの竹中平蔵氏でさえ、新たな国債発行を訴えるのに】

最近、縮小財政論の旗手である竹中平蔵氏がテレビ番組で、
「財政均衡論は間違っていた。あと100兆円の国債を発行しても大丈夫」と、
従来の主張と180度異なる意見を述べて、話題となっている。

私の主張と竹中氏の意見が一致するなどあり得ないと思っていたので、
心底驚いたが、現実の問題として世界を見渡せば、
コロナ対策のために赤字国債を発行してダメになった国などなく、
その事実を突きつけられて、間違えを認めざるを得なくなったのか、
あるいは、何らかの意図があってそう発言したのかは不明だが、
とにかく、あの竹中氏をしてそう言わしめる時代にもかかわらず、
政府はまた財布の紐を締めにかかっている。

繰り返すが、生産性向上を訴える前に、需要の創出を図ることこそが、
日本経済の急務だと私は考える。


【2021年に向けて複数のシナリオを】

さて、政府に対する注文ばかり並べていても埒があかない。
あらためて、起業家や経営者が、この時期に何をすべきかである。
先々の予測がつかない以上、複数のシナリオを用意することだ。

A案は、来年の比較的早い時期にコロナ陽性者が減少傾向になり、
ワクチン接種に関する具体的な方針が発表された場合のプランである。

もっとも、A案のありようは業種によって異なる。
現在、時短要請を受けて苦しんでいる飲食店やカラオケ店、
あるいはGoToに振り回される観光関連業などは、
コロナ以前の状態に戻る前提で計画を立てることも可能だ。

しかし、コロナが収束したとしても、元には戻らない業種もある。
印鑑関連業がそうだし、都市部のオフィスビル賃貸業もそうだ。
脱ハンコ文化や在宅ワークは、確かにコロナによって促進されたが、
元々存在していたニーズであり、実際に取り組んでみたら、
そのメリットの大きさに多くの企業が気付いてしまったのである。
経緯がどうあれ、多くの人が「便利」や「得」と思ったことは、
ほぼ、そのまま定着するのが歴史の常である。

また中には、半分は従来の形式、半分はコロナ以降の形式というように、
新旧両方の業態を要求される業種もあるだろう。
実際、私が手がけるセミナーや研修は、
現状、オンラインとオフラインが半々であり、
こうした状態はコロナの収束とは無関係に、今後も継続すると予測する。

自社の事業が直面している変化が、元に戻る変化なのか、
そうではないのか、まずはここを見極めることが必要。
そのうえで、落ち着き始めた市場に対してどう働きかけるのかを考え、
そのためのアイデアや資源を今のうちに準備しておく。これがA案だ。


【コロナが鎮静化しない前提のB案も用意する】

対するB案は、2021年も今年同様、
コロナ禍が鎮静しない状況を想定したプランだ。

そんなことは誰一人望んでいないが、そうならない保証はない。
とはいえ、それならそうで、考えようはある。
この1年間を振り返ってみると、苦境に立たされる企業を尻目に、
何の影響も受けていない、あるいは、
むしろ成長したという企業が少なからず存在するのも事実だ。

そういう企業は何をしていたのか、誰を狙っていたのか、
いわゆる成功事例を徹底的に研究し、
その中から自社が導入できそうなポイントを見つけ出すことだ。

また、そうした攻めの挑戦と並行して、
既存事業の縮小・撤退作戦も立案しておく必要がある。

攻めたり守ったり、押したり引いたりするのが企業経営だ。
新たなフィールドにチャレンジするためには、
既存事業のどこか、あるいは全てに見切りをつけることが前提である。


【最悪のシナリオも想定しておけば、慌てることはない】

このあと私は「縁起でもない」ことを書く。
書いたらそうなるとか、書かなかったらそうならないとか、
そんな非科学的なことを言う読者はいないだろうが、
私自身、こんなことは起きてほしくないと念じながらのC案である。

コロナが収まらない中、再び三度、
日本列島が大規模な自然災害に見舞われるケースを想定したプランだ。

今の今はコロナ感染症がクローズアップされているが、
あの東日本大震災からの10年間、この国の国土と人々の生活が、
自然災害に脅かされなかったことなど、一度でもあっただろうか。

天災は忘れた頃にやって来る。
コロナ禍への対応で頭がいっぱいになっていたとしたら危険だ。
防災の準備はできているか? 連絡手段は確保できているか?
備蓄はあるか? それを活用できるよう整理収納しているか?

私たちは、阪神淡路大震災を経験し、東日本大震災を経験し、
熊本大地震を経験し、その他、数多の自然災害を経験してきた。
そこから得た教訓や対処法を思い起こし、現実的に備えるべきである。
コロナ禍だからこそ、余計にそこをしっかりやっておきたい。
そして、そうなった時の自社の方針を定めておくことだ。

備えあれば憂い無し。

A案、B案、そしてC案の3つを準備し、きたる2021年に挑もう。
その精神と策があれば、新年は必ずいい年になる!(非科学的だが)

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>

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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.132
(2020.12.21配信)より抜粋して転載しました。
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