増田通信より「ふ~ん なるほどねえ」191 「one world」の苦悩
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<最近の難題> 「one world」の苦悩
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もう30年近く前だが、中国を一人旅した。
驚いたことが山ほどある、というより、日々のほぼすべてが驚きだった。
そのひとつが料理。
メニューは大方、漢字で書かれているが、
時折、「虎」という字が入る料理を見かけることがある。
実際に虎の肉を使っているのではなく、猫の肉を使った料理だ。
食料市場に出かけた時も、籠に鮨詰めになって売られている猫を見た。
犬や蛇やハクビシンを食す習慣があることは事前に知っていたが、
まさか、猫まで食べるとは……。
「野味」(ジビエ)を謳うレストランへ出かければ、
店頭には生きたアルマジロや孔雀や亀なども並べられている。
勇気を出してその店に入ったが、結局は淡水魚の揚げ物と炒飯を食べた。
やはり、「その手のもの」には、手が出せないのが正直なところだ。
さて、大問題になっている新型肺炎は、
市場で売られていたコウモリが感染源だと言われている。
日本人の中には、「そういうものを食べる中国人が悪い」、
という趣旨の発言をする人もいるが、私はそうは思わない。
それを言うのなら、日本の鯨食文化への批判も受け入れるべきだ。
食は民族の暮らしの中核を為す文化であり、
他民族が、安直に良い悪いと言うべき事柄ではないと思う。
むしろ問題の要因は、異なる文化(食文化)を持つ人々が、
いとも簡単に他の文化圏へ移動できることになったことだ。
春節になると、中国人が大挙して日本にやってくるなど、
以前には考えられないことだった。
国境を超える多国籍企業の伸長で、世界中にマネーが広がった。
その金を狙って、どの国も入国制限を緩め、外国人を呼び込もうとする。
そのために大型かつ高速の旅客輸送手段もどんどん増える。
渡航先や渡航方法に関する情報も、ネットに満載になる。
かつて未知の世界だった「外国」は、今では遠くも何ともない。
いわば、別々の部屋に暮らしていた人々が、籠の中の猫さながらに、
ひとつの部屋にぎゅうぎゅう詰めで暮らしているのが現代世界だ。
トラブルが起きないほうがおかしい。
新型肺炎の蔓延は、そういう時代への警鐘とも思える。
日本は、これから移民の受け入れを開始していく。
異なる文化を持つ人々と一緒に生きていくことの重さに、
政府も産業界も、そして私たち市民も、もう一度、思いを至らせるべきだ。
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増田紀彦NICe代表理事が、毎月7日と14日(7と14で714(ナイス)!)
に、NICe正会員・協力会員・賛助会員、寄付者と公式サポーターの皆さん
へ、感謝と連帯を込めてお送りしている【NICe会員限定レター「ふ〜ん
なるほどねえ」スモールマガジン!増田通信】。
第191号(2020/0214発行)より一部抜粋して掲載しました。
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