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NICe代表理事の増田紀彦が、NICe正会員・協力会員・賛助会員、寄付者と公式サポ ーターへ送っている【NICe会員限定スモールマガジン増田通信】の中から、一部のコラムを抜粋して掲載しています。
増田通信より「ふ~ん なるほどねえ」186 登録を見送った「1週間無料体験版」―― 利益と損失の天秤



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<最近の法則> 登録を見送った「1週間無料体験版」―― 利益と損失の天秤
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まずは2つの質問から。

Q1:あなたに以下の選択肢が提示された。あなたはどちらを選ぶ?
●A:10人中10人が無条件で80万円もらえる。
●B:抽選で10人中8人が100万円をもらえるが、2人は1円ももらえない。

Q2:次に以下の選択肢が提示された。今度はどちらを選ぶ?
●A:10人中10人が無条件で80万円没収される。
●B:抽選で10人中8人が100万円を没収され、2人は1円も取られない。

実験の結果、Q1では、堅実性の高い「A」を選ぶ人が多くなっている。
ところがQ1で「A」を選んだほぼすべての人が、
Q2では、一転、ギャンブル性の高い「B」を選んでいるのである。

人は利益を得る場面では、それを確実にすることを優先し、
損失を被る場面では、それを最大限回避することを優先する傾向がある。

上記の組み合わせから導き出される結論は、
「得をするより、損をしたくない思いの強い人が多数である」ということだ。

このセオリーは、プロスペクト理論と呼ばれている。

以下は私の話。
先日、超特急で2つのPDFファイルを結合する必要に迫られた。
ところが、アドビとのPDF編集契約が切れていて、作業を進めるには、
あらためて年間契約もしくは月間契約をしなければならない。
悩みつつも、サイトの製品案内にしたがって契約画面に進むと、
「1週間無料」のキャンペーンが告知されていた。

「おっ、しめた。取り急ぎ使うのは1回だけだから、
無料の体験版に申し込んで、終わったら解除すればいいんだ」。
初めはそう思った。だが、少し考えて、申し込みを見送った。

私のことだから、解除を忘れる可能性は十分あるし、
覚えていても、解除の手間が面倒で放置するかもしれないと思ったのだ。

一見、アドビの「1週間無料体験版」は、
見込み客に「利益」を提供する形で販売を促進しているようだが、
期間経過後の有償への切り替わり方や、解除の方法が不明瞭なために、
かえって不安を生じさせてしまっているのである。

要するに私は、「1回無料」の利益より、
「後の有償化」という損失の危険を重視し、それを回避しようとした。
まさに、プロスペクト理論どおりの心理である。

人は実に勝手なもので、
本来、有償のサービスであることを知っているにもかかわらず、
1週間だけでも無料で使えるとなると、
その後の支払いを損だと感じてしまう。

ここが「注意ポイント」。
集客を狙った値引きサービスや無料サービスは、ひとつ間違えると、
本来の価格で購入してくれるはずの顧客を失う危険があるということだ。

では、そうしたキャペーンは愚策なのだろうか?
いやいや、そうとも言えない。要は、やりようである。
例えば、アドビの無料お試し期間が1週間ではなく、2カ月間だったら、
たぶん私は申し込んでいただろう。
確定できる利益の大きさが、損失の不安を上回るからだ。

皆さんも無料キャンペーンを計画する際には、顧客の心の中で、
利益と損失の天秤が、どちらに傾くのかをよく考えてほしい。

【おまけ】無料のPDF結合サービスは、実はネット上にたくさんある。

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増田紀彦NICe代表理事が、毎月7日と14日(7と14で714(ナイス)!)
に、NICe正会員・協力会員・賛助会員、寄付者と公式サポーターの皆さん
へ、感謝と連帯を込めてお送りしている【NICe会員限定レター「ふ〜ん
なるほどねえ」スモールマガジン!増田通信】。
第186号(2019/1209発行)より一部抜粋して掲載しました。
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