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NICe代表理事の増田紀彦が、NICe正会員・協力会員・賛助会員、寄付者と公式サポ ーターへ送っている【NICe会員限定スモールマガジン増田通信】の中から、一部のコラムを抜粋して掲載しています。
増田通信より「ふ~ん なるほどねえ」23 「一を聞いて十を知る」危うさ 




誰から聞いたか、今となっては思い出せないが、その誰かが言うには、
「例え話に頼らないのが真の知識人」だと。竹中平蔵氏の説らしい。

この言葉、めちゃくちゃ響いた。

例え話を聞かされると、例えの巧さのほうに意識が奪われてしまい、
問題の本質が曖昧なまま、答えがわかったような気になってしまうのだ。
だから、この話を聞いた瞬間に、自分もかくあるべしと心に決め、
講演などではいっさい例え話を使わないようにしてきた(つもり)。

ところがである!

先日、何気なくつけていたテレビに、カルロス・サンタナが出ていて、
彼がレポーターの質問にいろいろ答えるのだが、
その時々で使う例えが、実に素晴らしいのである。芸術の域なのだ。

もしかすると、サンタナって誰? という人がいるかもしれない。
名前は知らずとも、彼の奏でるギターを聴いた事のない日本人は稀だろう。
聴けば、「あっ、このメロディ知っている」となること請け合いである。

それだけの成功者であるサンタナも、最初はいろいろ苦労したそうだ。
故郷のメキシコからサンフランシスコに渡り、
水を得た魚の如く、好きなブルースのバンドを結成したのだが、
当時のアメリカはブルースバンド全盛時代。とても日の目は当たらない。

「僕たちは満員のエレベーターに乗り込んでしまったようだった」

うまいことを言うなあ。
その混雑から脱出すべく、彼はオリジナルの音楽を目指すようになる。

ブルースとラテンとロックの融合をベースに、
様々なジャンルの音楽のエッセンスを曲づくりに取り入れていくのである。

「クリスマスツリーがあって、それに、いろいろ飾りつけるようにね」

またまた、うまい!

「例え話はしない」という私の信条は、
次々と繰り出されるサンタナの言霊によって、感動的なまでに崩壊した。
「これは困ったことになった」と思ったが、
時間を置いて考えたら、いとも簡単に頭の中が整理できた。

竹中氏曰く、例え話に頼らないのは、「真の知識人」である。
サンタナは「真のアーティスト」であって、べつに真の知識人ではない。
だから、そこに問題も矛盾も対立も、な~んにもなかったのである。

限定した事柄に通用するロジックにもかかわらず、
たまたま、それが自分にとって大きな意味や大きな価値を持つと、
そのロジックが、すべての物事に当てはまると錯覚してしまう……。

「例え話」の是非を論じるより、「人の話」を正確に理解することが先決。

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増田紀彦NICe代表理事が、
毎月7日と14日(7と14で714(ナイス)!)にお送りしている
【NICe会員限定レター/「ふ〜ん なるほどねえ」スモールマガジン!】
増田通信・第23号(2013/03/07発行)より、抜粋してお届けしました。
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