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NICe増田代表理事が送る、新たなビジネスチャンス発見法と実現へのヒント。11日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
第63回 体験型の小さなブックカフェ



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増田紀彦の「ビジネスチャンス 見~つけた」

  第63回 体験型の小さなブックカフェ
   
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与謝野鉄幹の『人を恋うる歌』は、私の座右の詩だ。

「友を選ばば 書を読みて 六分の侠気 四分の熱」。

詩歌の細かな解釈はさておき、鉄幹同様、私も読書家に心惹かれる。

かつて、野元君という友人がいた。
残念ながら30代での早世だったが、
ふらっと、どこかの町の書店に足を運んだとき、彼のことを思い出す。

彼との待ち合わせ場所は、いつも書店のフロアだったからだ。
お互い東京在住なので、
新宿の紀伊國屋書店や八重洲ブックセンターあたりが多かった。

まだスマホはおろか携帯電話もない時代。
どちらかが約束に遅れれば、どちらかが待ちぼうけを食うことになる。
そんなとき、書店が集合場所なら、
「待ち時間を有効に使える」というのが野元君の考えだった。

彼の薫陶を受けた私は、
以降、ほかの人との待ち合わせでも、この方法を用いるようになった。

お目当ての本があっての書店訪問ではないので、
いきおい、フロアをぶらつくことになる。

これが、面白い。
本の森の散策。もしくは知の探検。
インクの匂いは、頭脳のフィトンチッド。
分類上手の書棚は、未知の世界へのガイドボード。

ふと、腕時計に目をやると、待ち合わせ時間が迫っている。
「たのむ。もう少し遅れてきてくれ」。そう念じるほど、ハマる。

もちろん、散策しただけで店を出ることはない。
確実に何かしらの本を買い求める。
ある種の知的高揚感が、購買意欲に火を点けるから。

しかも本はコスパがいい。
文庫本なら1000円未満、書籍でも2000円あれば何とかなる。

言い換えれば、「知的空間への入場料+実際の書籍の購入代金」が、
わずか1000円や2000円で済むという話だ。

逆に言えば、欲しい本が決まっていて、
それだけを購入し、さっさと店舗を後にするくらいなら、
ネット書店を利用するほうがリーズナブルだろう。

つまり、街の中にあるリアル書店は、
一種の体験サービスを提供することで競争力を担保する業態と言える。

経済産業省の言葉を借りれば、
「街中にある書店は、多様なコンテンツに触れることができる場であり、
創造性が育まれる文化創造基盤」ということになる。
やや大仰な説明だが、言わんとするところは概ね私と一緒だろう。

というわけで、今回は書店開業のススメ。

とはいえ、資本の小さな企業や個人事業主が、
散策できるほどのフロアを有する店舗を開くなど、現実的ではない。

ならば、どうする?

散策はできなくても、そこで何らかの感動体験を提供できればOK。

昨今、増えているブックカフェは、
今すぐその場で、なおかつ、ゆったりとした気分で、
購入したばかりの本に目を通せる、という体験を売りにしている。
(中には購入前の本を持ち込める店舗もある)

ただし、それだけで、どれほどの黒字を出せるか、
ありていに言えば、どれだけ赤字を抑えられるか、悩ましいところだ。

そこで、もうひとつ価値を付加したい。
例えば、サークル活動をプラスする。

読書会、学習会、交流会、茶話会、懇談会、ゲーム大会……。
書店が扱うテーマに沿った催しを開けば、同好の士は集まる。
書店やカフェの通常営業時間終了後に、店内で開催すればいい。
ゆくゆくは店外での活動も実施できるかもしれない。

ご存じのように、書籍類の粗利益率は小さい。
その点、サークル活動は実質原価ゼロ。
会費(参加費)がそのまま利益になる。
しかも、店内で飲食もしてもらえるなら、売上はさらに伸びる。

「どんな本を扱うか」という選択は重要だが、
マーケティングを重視するなら、
比較的高齢な人たちが好むジャンルを検討したい。

時間があり、お金があり、知的好奇心があり、
なおかつ、喋りたいことが沢山ある人たちは、理想のターゲットだ。

かくいう私も、今月、高齢者の仲間入りを果たす。
あてもなく、広い書店を歩き回るのもだんだん億劫になってきた(笑)。

なので、私の関心事にそぐう小さなブックカフェで、
本を開いたり、黙考したり、趣味の合う人たちとのやりとりを楽しんだり……、
そんなことに現(うつつ)を抜かしたいと思い始めている。

体験型の小さなブックカフェ。
これからの日本に、間違いなく受け入れられる業態である。

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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.220
(2024.11.11配信)より抜粋して転載しました。
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