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厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、NICe増田代表理事が送る、視点・分析・メッセージ 。21日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
各党の経済対策公約を一つにつなげる!



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 「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

 第129回 各党の経済対策公約を一つにつなげる!
   
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【争点が見えるようで見えない衆院選】

次の日曜日(10月27日)は衆議院選挙だ。

石破政権の発足からわずか8日後の10月9日、戦後最短で衆議院が解散。
そこから18日後に投票という短期間での選挙となる。

政局はすったもんだ続きだったが、
あっと言う間の解散・選挙という流れになったこともあり、
特定の政策や話題が国民の耳目を集めるような状況とは言い難い。

野党は政治パーティー資金や政策活動費を攻め口にしているが、
火花が散るような攻防にはなっていないし、
防衛や外交についても、「台湾有事」「アジア版NATO」「核共有」など、
物々しいキーワードが浮上しているにもかかわらず、焦点化する気配がない。
増税や減税の議論も不活発だ。

争点があるような、ないような、何ともボンヤリした衆院選である。


【政権発足・即解散は、肉を切らせて骨を断つ作戦か】

「国民の信を問う」と言うが、結局、何を問われているのかわかりにくい。
恐らく投票率も伸び悩むだろう。

むしろ、石破首相はそれを狙ったのかもしれない。

世論がへたな方向に動き出さないうちに選挙を実施すれば、
そこそこの議席を失うにしても、
公明党と合わせての過半数は獲得できると判断したのだろう。

いわば、肉を切らせて骨を断つ作戦だ。
骨は野党であり、肉は旧安倍派議員である。

もしくは「一石二鳥」と言い換えてもいいかもしれない。
今、選挙を実施すれば、野党に政権を奪取される心配はない。
一方で、獅子身中の虫である旧安倍派の勢力を削ぐことができる。

石破茂という人物について私は詳しく知らないが、
少なくとも情勢分析力は、歴代首相の中でも高いほうに位置すると感じた。


【総裁が高市氏や小泉氏でなかったことの意味】

自民党の総裁が仮に高市早苗氏に決まっていたら、
右派的な思想をめぐって賛否が分かれただろうし、
自民党内においては、積極財政を訴える数少ない人だけに、
経済政策や財政、税制をめぐる議論も活発化したかもしれない。

あるいは総裁が小泉進次郎氏に決まっていたら、
若い世代の政治への関心が高まっていただろうし、
その反作用で高齢世代の関心も高め、
結果として、次期衆議院選の様相も変わっていたかもしれない。

だが、自民党は最終的に、特定の色が薄い人物を総裁に選出した。
中国と揉めかねない高市氏を嫌うアメリカへの忖度もあったろう。

選挙の結果、自民党が「よし」とする数字を獲得できたとしたら、
それは石破氏の読みの成果であると同時に、
この状況で、こういう「地味な人」を矢面に立たせた、
自民党そのものの成果と言えるだろう。
老獪なり、自民党。


【一度冷静に公約を比較してみてはどうだろう】

いずれにしても、選挙前のムーブメントのようなものは、今ない。

私は、それはそれでいいと思う。
マスコミがいたずらに争点を煽らない今だからこそ、
各党・各候補者の公約や主張を調べ、見比べたうえで、
投票に臨めるわけだから。

一時的な世論やブームに乗って、
投票する候補者や政党を決めたりするより、そのほうが健全だ。


【各党の経済対策・物価高対策・政治資金方針は?】

では、今度の選挙に際し、各党はどのような公約を掲げているのだろう?
1.経済対策 2.物価高対策 3.政治資金 の3つに絞って紹介する。

●自民党
1.GX・DXに積極投資し、経済成長と地方活性化を目指す
2.低所得者世帯への給付。電気・ガス料金や燃料費の高騰対策
3.政治資金の透明化、政治倫理規範の強化

●公明党
1.適切な価格転嫁の推進による賃上げの実現
2.低所得世帯や年金生活者に対しての給付
3.政策活動費の廃止、政治資金を監視する第三者機関の設置

●立民党
1.「分厚い中間層の復活」に向け、最低賃金1500円以上に引き上げ
2.低・中所得世帯にエネルギー手当ての給付。「給付付き税額控除」の導入
3.企業・団体献金の禁止、政策活動費の廃止

●日本維新の会
1.現役世代や子育て世代をサポートし、消費を増やし経済を成長させる
2.消費税率8%に引き下げ。所得税と法人税の減税
3.企業・団体献金の廃止、政策活動費の廃止

●共産党
1.中小企業に10兆円規模の支援、大企業の内部留保に課税
2.消費税廃止を目指し、当面は税率5%に。インボイス制度の廃止
3.企業・団体献金の全面禁止、政党交付金の廃止

●国民民主党
1.賃上げを促進し、消費税減税と社会保険料の引き下げで手取りを増やす
2.所得税課税ラインの引き上げ(103万円から178万円に)
3.政策活動費の廃止、政治資金を監視する第三者機関の設置

●れいわ新選組
1.財政出動で「メイド・イン・ジャパン」を支え、製造業の国内回帰を目指す
2.消費税やインボイス制度の廃止。季節ごとの「インフレ対策給付金」の給付
3.政治資金の「調査特別委員会」の設置。官房機密費の使途公開


【与野党で異なる物価高対策や政治資金規制】

各党の公約を見比べると、物価高対策や政治資金については、
与党と野党との違いが際立っている。

物価高対策では、与党は基本的に給付で対処し、
野党の多くは減税や消費税の廃止などを打ち出している。
また、政治資金では、与党は企業・団体献金の是非に触れず、
野党はおおむね禁止・廃止をうたっている。

ところが、経済対策については、方針が分かれるというより、
それぞれに魅力のある政策が並んでいる印象だ。


【関連し、補完し合う各党の経済対策】

自民党の「GX・DXに積極投資」で「経済成長と地方活性化」が実現すれば、
立民党の「最低賃金1500円以上に引き上げ」も夢ではないし、
日本維新の会の「消費を増やし経済を成長させる」ことにもつながる。

それらをスムーズに進行・循環させるために、
公明党の「適切な価格転嫁の推進」や、
共産党の「中小企業に10兆円規模の支援」、
れいわ新選組の「財政出動で製造業の国内回帰を目指す」取り組みが有効だ。

そして最後は、
国民民主党の「手取りを増やす」政策で、国民経済を活性化させる。


【反対に言えば、バラバラでは意味のない経済対策】

お気楽なトーンで各党公約の関連を語ってみたが、
厳しく言えば、各党の経済対策を単独で実施するには無理があり、
それぞれを連結させなければ、どれも絵に描いた餅になってしまう。

立民党をはじめ複数の政党が賃上げを掲げているが、
そもそも賃金を支払うのは政府ではなく、民間企業であり、
できるかできないかは、ひとえに企業の経営状況・財務状況にかかっている。
それを政党が「公約」にすること自体、「何様だ?」と指摘したいところだが、
物価上昇率を超える賃金上昇が実現しない限り、景気が浮揚しないのは確か。

だとすれば、公明党が言うように、価格転化の適正化ルールを強化し、
下請け企業がそれなりの人件費を支払える状態にしなければならない。
もしくは共産党が言うように、その財源を大企業課税で確保し、
それを中小企業に分配するなどの具体的な制度が必要だ。

また、自民党が言う成長分野投資で地方経済を活性化させるためには、
れいわ新撰組が言う、製造業の国内回帰は必須だし、
日本維新の会が言う消費の拡大は、国民民主党が言う手取りの増加とセットだ。

経済はつながっている。
であれば、経済対策もつながりで考えなければならない。
政治の使命は、そのつながりを阻む要因を取り除き、改善することだろう。


【超党派の経済対策組織の設置を!】

選挙を行えば、当たり前だが、勝ち負けが生じる。

勝った政党は与党となり、掲げた公約の実現に邁進する。
いや、邁進して欲しいと願う。だが、その陰で、
負けた政党の「いいアイデア」が葬られてしまうとしたら、残念だ。

日本経済の再生・活性化を考えるなら、
特定の政党の方針だけにすべてを委ねるのではなく、
各党の経済政策通と関係省庁の精鋭、専門家がひとつの組織に集まり、
知恵を重ね合わせ、手を取り合って、
政策立案に当たってもいいのではないだろうか。

いわゆる諮問機関ではない。
立てた政策を実行する気概と権限を持つ新たな組織が欲しい。

超党派の経済対策組織など、常識的に考えればあり得ない。
それこそ自民党と共産党が協働するなど、夢の中の話かもしれない。
だが、「あり得る」ことに終始していて未来が開けるだろうか。
もう長い年月、足踏みを続ける日本経済だからこその、苦肉の一計である。

政治の世界にも、いや、政治の世界にこそ、
異なるものが知恵と情報と思いを共有・循環する「つながり力」が必要だ。

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>


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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.219 
(2024.10.21配信)より抜粋して転載しました。
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