増田通信より「ふ~ん なるほどねえ」280 戸籍の謎
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<最近の発見> 戸籍の謎
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世の中には知らないことがたくさんある。
先日も、仕事関係の届出に際して、以下の書類を添付しろと役所から言われた。
(1)住民票
(2)身分証明書
(3)登記されていないことの証明書
むろん(1)の住民票はわかる。問題は(2)と(3)だ。
身分証明書?
って、運転免許証とかパスポートとか、そういうもの?
結論から言うと、全然、違っていた。
これは、本籍地のある役所が交付する「身分証明書」のことで、
実際に和歌山の町役場から取り寄せてみたら、
本当に「身分証明書」と書いてあった。
もっとも、この「身分証明書」には、
顔写真が載っているわけでもなく、現住所すら載っていないので、
世間一般で求められる身分証明書の代わりにはならない。
では、何が書いてあるのか?
本籍、筆頭者氏名、本人氏名、生年月日に加え、以下3項目が書いてあった。
1.禁治産又は準禁治産の宣告の通知を受けていない
1.後見の登記の通知を受けていない
1.破産の通知を受けていない
ふーーーーーーーーん。
「身分証明書」というのは、こういうことを証明するものなんだ……。
法務や行政にかかわる人なら、もちろんご存じの話だろうが、
私は、こんな書類が世の中に出回っていることなど、まったく知らなかったし、
この証明書を逆に読めば、
禁治産・準禁治産や後見、破産は、戸籍に記載されるということであり、
そういうルールがあることすら知らなかった。
戸籍なんて、形骸化した書類だと思い込んでいたが、
家族関係以外のこういう情報も載るわけか……。で、次。
(3)の「登記されていないことの証明書」。何だ、これは?
登記と言ったら、不動産登記か商業登記のことだと思うが、
いったい、何が「登記されていない」のか?
というか、不動産でも法人でも、
登記してあることを証明する機会はあるが、
「されていない」ことを証明するなんて、わけがわからん……。
しかも、調べてみると、「登記されていないことの証明書」は、
九段にある東京法務局の本局でしか交付しないとのこと。
「何をもったいつけてやがるんだ」と毒づきながら、
仕方なく、九段まで出かけてみて、わけがわかった。
本局には、不動産登記と商業登記のほかに、後見登記という部門がある。
要するに、「登記されていないことの証明書」とは、
「後見登記されていないことの証明書」なのだった。
でもそれって(2)の「身分証明書」で、すでに済んでいる話では?
とも思ったが、たぶん(あくまでたぶん)、
(2)では、「後見の登記の通知を受けていない」と、
漠然とした書き方しかしていないのに対し、
法務局のほうは、「被後見人・被保佐人になっていない」と、
もうちょっと踏み込んで書いてあるから、そのへんが違うのだろう。
ついでの話だが、戸籍について調べているうちに、
「戸籍謄本」とはべつに、「戸籍の全部事項証明書」なるものがあることも知った。
「また、証明書か」と思って、さらに調べるうちにズッコケた(古い)。
「戸籍謄本」と「戸籍の全部事項証明書」は、同じものだった。
違いは、前者は紙で管理。後者はコンピュータで管理。それだけのこと。
いやいや、間怠っこしいことこの上ない。
マイナンバーカードを無理やり普及させるより、
戸籍にかかわる、わかりづらい名称や単語を考え直し、
戸籍がどんな役割を持っているのか、国民の理解を図ったうえで、
戸籍制度のあり方を議論するほうが先決ではないか、そう痛感する出来事だった。
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増田紀彦NICe代表理事が、毎月7日と14日(7と14で714(ナイス)!)に、
NICe正会員・協力会員・賛助会員、寄付者と公式サポーターの皆さんへ、
感謝と連帯を込めてお送りしている【NICe会員限定レター「ふ〜んなるほどねえ」スモールマガジン!増田通信】。
第280号(2023/11.07発行)より一部抜粋して掲載しました。
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