増田通信より「ふ~ん なるほどねえ」273 小規模事業者 vs 給与所得者
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<最近の危機> 小規模事業者 vs 給与所得者
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国家が国民を思うように操る代表的な手法が、分断策だ。
国民が一致団結して、時の権力者に抗わないよう、
国民同士がいがみ合うような状況を作り出す。
そのために、国民の中に潜む様々な差別意識や被害者意識を煽る。
マスコミを総動員し、時には「有識者」を使って、
「こういう人たちは実はとんでもない連中だ」。
「自分たちだけが甘い汁を吸っている」などと、
憎しみを増幅させるようなことを吹聴する。
最近、悪者にされているのが、
年商1000万円以下の小規模な会社や個人事業主たちだ。
この人たちは、消費税の免税事業者を選択できる。
つまり、消費税を国に納めなくていい立場にある。
ところが、近年、
国の意を受けた専門家や、さらには、事情をよく知らない人たちまでもが、
「免税事業者は、客から消費税を取っておきながら、
それを納めていないズルいやつらだ」などと言い出している。
あろうことか、その状態を指す「益税」という言葉まで出回ってきた。
詳しい話は別の機会に譲るが、
そもそも、「益税」などというモノは存在しない。誤解の産物だ。
だいたい、近代国家の日本で、
税金をポケットに入れられる、などという話があると思うほうがおかしい。
驚く人もいると思うが、
消費税は、「税」という名称がついているものの、
「その額は商品価格の一部である」という判決が、
すでに30年以上も前に確定している。
商品価格の一部、つまり対価であれば、
販売した人のものになるのは当然だ。だからズルなどではない。
ところが消費者は、てっきり自分が商品代金に加えて、
10%なり、8%なりの「税金」を支払っていると思い込んでいる。
事実は、消費税という名前の「代金」を支払っているに過ぎないのだ。
では、消費者が消費税を納めていないのなら、誰が消費税を納めるのか?
年間1000万円超を売り上げた事業者に限って、
「消費税」という名前で受け取った代金の中の一定額を、
税金として国に納める決まりになっている。
つまり、消費者から「消費税」を取ったか、取らないかは、
納税義務の有無とは関係がないのである。
しかし、インボイス制度導入を機に、
免税事業者(年商1000万以下の事業者)からも税収を得ようと考える人たちが、
免税事業者へのバッシングを巧妙に仕掛け、世論を作り出したわけだ。
さて、ここからが本題。
「益税だ、ズルだ」と、さんざん悪者扱いされ、
結果、インボイス強要で収入まで減らす羽目になる免税事業者が、
今度は雇用契約で働く人々を攻撃する側に回るかもしれない。
「そう言えば、給与所得控除っておかしくない?」。
「サラリーマンは、そんなに経費を使わないでしょ」。
「だったら、給与所得控除なんて廃止すべきだ」と。
「おいおい、冗談じゃないぜ」と思う人も少なくないだろう。
私も給与所得者の端くれなので、勘弁してくれと言いたい。
だが、これまでも各種の所得控除が廃止されたり、縮小されたりしてきた。
給与所得控除を廃止しないまでも、控除額の上限を引き下げれば、
かなりの税収アップが見込める。
かくして、小規模事業者と給与所得者のケンカが始まる。
というか、ケンカをするように仕向けられる。
その策略にまんまとはまり、「あいつらにこそ、増税すべき」といがみ合い、
結局、誰もが所得を減らしていくような国に未来はあるだろうか。
つながり力は、今や起業家のためにだけある言葉ではなく、
全国民に伝播すべき言葉だと感じている。
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増田紀彦NICe代表理事が、毎月7日と14日(7と14で714(ナイス)!)に、
NICe正会員・協力会員・賛助会員、寄付者と公式サポーターの皆さんへ、
感謝と連帯を込めてお送りしている【NICe会員限定レター「ふ〜んなるほどねえ」スモールマガジン!増田通信】。
第273号(2023/7.14発行)より一部抜粋して掲載しました。
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