第52回 事業も子どもも育てるもの
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増田紀彦の「ビジネスチャンス 見~つけた」
第52回 事業も子どもも育てるもの
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とにかく暑い。
東京は連日、真夏日だ。
子どもの頃は、「夏になる=学校が休みなる」だったから、
気温が上がってくるとワクワクしたものだが、
老体となった近年は、暑くていいことなんぞひとつもない。
もちろん、屁理屈を捏ねれば、いいことは捻り出せるし、
ビジネスチャンスの観点で言えば、むしろいいことだらけだ。
厳密な話をすれば、
気温上昇をネタにしたビジネスで成功したところで、
気候変動に目をつぶり続ければ、
そんなビジネスの利潤など吹っ飛ぶほどの損失が、
世界中に広がっていくことは間違いない。
この時代、
ぽろっと口から出る「暑い」という言葉の意味はとてつもなく重い。
さて、気候変動問題は別の機会に譲るとして、
今時の子どもたちは、待ち遠しい(はずの)夏休みに、
いったい何をしているのだろうと、興味が湧いてきた。
いや、興味が湧いたというより、ちょっと気になった。
楽しめているだろうか?
創造力や自主性を伸ばしているだろうか?
コミュニケーション力に磨きをかけているだろうか?
いい思い出をたくさん作っているだろうか?
夏休み中の私は、登校日とラジオ体操の時間を除けば、
あとはすべて自分がしたいことを、したい時にしていた。
たかだか1か月程度の自由時間ではあるが、
成長期の子どもにとって、
その1か月は大人の何年分にも匹敵する重要な時間だ。
私と森、私と川、私と海、
私と草花、私と昆虫、私と小動物、
私と友達、私とよく知らない大人、
私と商店、私とご近所さん、
私とお寺、私と神社、私と町工場、
私と本、私と駄菓子、
私とバット、私と自転車、
私とノコギリ、私とマッチ、
私と秘密基地、私とテレビ、
私と弟、私とお金、
そして私と私自身……。
親も教師もそこには介在しない。
向き合う物や事や人に対して、
どう接し、どう扱い、どういう結果を出すか、
すべてを自分で考え、自分で決め、
自分で動き、自分で働きかけ、
泣き、笑い、浮かれ、落ち込みながら、
処世の基礎を体得していったと自負している。
今時の子どもたちに、そういう時間や空間が、
果たして、どれくらい確保されているのだろう?
きっと、そういう時空間が自然発生的に広がることは、
もはや望めない気がする。
時代は変わるのが当たり前だ。
だから、意識の高い保護者や教育機関、地域などが、
意図してそういう時空間を用意することになるわけだが、
そこに一枚加わるべきなのが、企業や起業家だ。
何も立派な活動である必要はないと思う。
自らの経営資源を子どもたちのために有効活用できればいい。
とある飲み屋は、
常連客たちの御勘定に際し、
別途300円のお食事券の購入を勧めている。
客が買ったチケットは、店の壁に貼り付けられる。
翌日、店を訪れた子どもは、そのチケットを剥がして店員に渡す。
無料でカレーライス一皿が提供される。
子どもの居場所を、大人の経済活動が支えている。
とある駄菓子屋は、
店の奥にある一間を、
子どもたちが自由に過ごせる空間として開放している。
宿題に取り組む子ども、ゲームに興じるグループ、いろいろだ。
時折、子どもたちは部屋から出てきて、駄菓子を追加購入する。
お得意様を抱え込んでいるようなものだ(笑)。
かたや政府も子どもの居場所作りを推進しており、
居場所を設け、運営する「大人」に対し、
助成金や補助金をあてがっている。
それでいいのだろうか?
そこに持続可能性と愛はあるのだろうか?
「補助が終了したから居場所は閉鎖。ごめんねごめんねー」。
そんな大人の事情を突き付けられた子どもは、どう思うだろう。
何を学ぶ(学んでしまう)のだろう……。
子どもの居場所作りこそ、創造的であるべきだ。
大人(事業者)の知恵と資源を生かして作った居場所であれば、
制度や資金支援の有無に一喜一憂することはないし、
何より、「物事は、こうやって作り出すんだよ」という、
素敵なメッセージを子どもたちに届けることができる。
「でも、子ども相手にそんなことをしても、儲からないよ」。
そう、指摘する人もいるだろう。
私もそう思う(笑)。
この取り組みは長期戦略に基づくものだ。
感謝の気持ちを抱き、創造力を刺激された子どもたちが、
やがて青年になり、大人になる時がくる。
その時、彼ら・彼女らの中から、顧客になる人が必ず現れるし、
スタッフや応援団になってくれる人も出てくるだろう。
言ってみれば、子どもの居場所作りは、投資である。
事業も子どもも、じっくり育ててナンボのものだ。
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「つながり力で起業・新規事業!」
メールマガジンVol.191
(2023.7.11配信)より抜粋して転載しました。
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