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NICe代表理事の増田紀彦が、NICe正会員・協力会員・賛助会員、寄付者と公式サポ ーターへ送っている【NICe会員限定スモールマガジン増田通信】の中から、一部のコラムを抜粋して掲載しています。
増田通信より「ふ~ん なるほどねえ」178・179 気遣いの落とし穴(雨上がりの西麻布)  



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<最近の胸中> 気遣いの落とし穴(雨上がりの西麻布)
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明け方から降り続いた雨が上がった途端、強い日差しが路面を照らした。
建物や街路樹に張り付いた水滴の反射が眩しい。

乃木坂から星条旗通りを抜けて麻布方面へ向かって歩いていた私は傘を畳んだ。
少しばかり弾む心持ちで西麻布の交差点にあたりに差しかかる。
天候回復を待っていたテレビ番組のロケ隊が、準備を始めたところだった。

その様子を眺めるともなく眺めていたら、
待機していたお笑いタレントと目が合った。

その頃、人気が伸び始めていたタレントで、
芸能界にさほど詳しくない私でも、彼の苗字くらいは諳じられた。

彼の反応は早かった。
目が合った途端、深々と私に頭を下げたのだ。
まるで、旧知の恩人に対するような恭しいおじぎ。表情も真剣だ。

「私を誰かと勘違いしているのか」。そう首をかしげつつ、私も会釈を返した。

それを見て、彼はもう一度ゆっくりと頭を下げた。
何と礼儀正しい男なのか。

「これは、人違いではない」と、私は考えを改めた。
もちろん、彼が私のことなど知るよしもない。

彼は、瞬間的に判断したのだろう。
東京、西麻布、ヒゲを生やしたスーツ姿の中年男……。
「業界関係者かもしれない」と。

活動拠点を大阪から東京に移したばかりの成長株である彼の、
並々ならぬ意欲を垣間見た気がした。

天狗にならない。礼儀正しく、周囲から愛される人間であろう。
そう、自分に強く言い聞かせているのだと私は解釈した。

立派だと思った。
同時に、華やかな世界の裏側の気苦労に触れた気もした。

…………。

そんな出来事があってから、もう15年以上が経つ。

彼ならではの気遣い、もしくはサービス精神が、裏目に出てしまった。
後輩に依頼されて顔を出した宴会が週刊誌で問題にされ、
頼まれて一緒に写った写真の相手も、これまた問題のある人たちだった。
そういう連中から現金を受け取ったとも言われている。

彼は気遣いの人だ。
そういうタイプの人は、危ない。
ノーと言えば済むことを、相手をおもんばかって言わないために、
不要なトラブルにかかわる危険が広がってしまうのだ。
有名になればなるほど、危ない。

礼儀は大切。低姿勢も大切。
でも、行き過ぎたサービス精神は我が身を滅ぼす因子になる。
決して他人事ではない。

それにしても、彼の所属事務所は一体何をしていたのか。
30年も働いている彼の性分を、事務所が理解していないはずがない。
タレントをトラブルから守るのがマネージメントなのに……。
私が文句を言う筋合いでもないが、
宝物を不良品に貶めてしまったミスは、会社として痛苦に受け止めるべきだ。

…………。

いつかまた、彼の元気な仕事ぶりを目にできるだろうか。
願わくば、そういう将来が、彼や、彼の仲間たちに訪れんことを。
上がらない雨はない。そう、信じて。

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増田紀彦NICe代表理事が、毎月7日と14日(7と14で714(ナイス)!)
に、NICe正会員・協力会員・賛助会員、寄付者と公式サポーターの皆さん
へ、感謝と連帯を込めてお送りしている【NICe会員限定レター「ふ〜ん
なるほどねえ」スモールマガジン!増田通信】。
第178・179合併号(2019/0807発行)より一部抜粋して掲載しました。
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