増田通信より「ふ~ん なるほどねえ」176 「ラブレター・フロム・東京地裁」の後日談
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<最近の続報> 「ラブレター・フロム・東京地裁」の後日談
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NICeの役員登記を怠った廉(かど)により、
私個人に過料3万円を課すとのお達しが東京地裁から届いたことを、
前回のコラムで、痛苦の念を持って報告した。
「法務局もずるいなあ」という、市民感覚的な不満を抱きつつも、
文句を言って通じる相手ではないので、言わなかったら、
正式に過料3万円が決定したとの知らせが届いた。
その文面がわりと重々しい。
主文
被審人を過料金30,000円に処する。
「主文」などという言葉から始まると、
懲役何年・執行猶予何年とか、言われるんじゃないかとドキドキする。
ちなみに、過料を課せられたからと言って、前科者になるわけではない。
「過料」は刑事処分ではなく、行政処分による金銭罰であり、
前科になるのは、「科料」(1,000円以上1万円未満の刑事処分)、
もしくは「罰金」(1万円以上の刑事処分)を課せられた場合だ。
なお、「反則金」(交通反則通告制度に基づく行政処分)も前科にはならない。
というわけで、今後、東京地検から過料の納付命令が届くそうだ。
いい機会なので、直接、地検に出向いてお支払いをしてこようと思う。
この件、法人経営に携わっている皆さんには、本当に気をつけてほしい。
そのうえで先に記しておくと、
合同会社や合資会社、合名会社、有限会社については、役員の任期自体がなく、
同一人物が何年役員を続けようと、重任の登記の必要はない。
かかわっている法人が、これらの法人だけという人は、どうぞご安心を。
あらためて、「うっかり」の危険があるのは、まず株式会社。
会社法により、株式会社の取締役の任期は2年、監査役は4年と決まっている。
ただし、株式の譲渡制限をしている株式会社は、定款で規定することによって、
取締役、監査役ともに任期を10年まで延長できる。
読者の中にも株式会社の代表者を務める人がいると思うが、
おそらく皆さんの株式会社は、譲渡制限会社であり、
役員の任期も法律が許す最長期間の10年にしているはずだ。
まずは、定款を引っ張りだして、そのことを確認してほしい。
そして設立登記から今日まで、どれだけの期間が経過しているのか、
また、その期間中に役員の重任登記をしたかどうかを確認してほしい。
何もしたことがないまま、10年が過ぎていれば、
残念ながら、会社法違反で代表者には過料が課せられることになる。
だが、放置している期間が短いほど、過料の額も低くなる傾向があるので、
できる限り早く法務局に出向いて、役員の登記を行った方がいい。
次に、登記を忘れがちなのが、一般社団法人やNPO法人だ。
これらの法人の役員の任期は、株式会社とは異なり、基本2年間。
10年間も何もしなくていい株式会社に比べれば、忘れてしまう危険は低いが、
そもそも、役員の顔ぶれが変わろうが変わるまいが、
2年に一度、総会終了後2週間以内に登記をしなくてはならない、
という決まりが頭に入っていない代表者の方々も少なからずいるはずだ。
繰り返しになるが、どうか、気をつけてほしい。
ちなみに、これから法人設立を考えている方へ。
特別な理由があって株式会社や一般社団法人、NPO法人を設立するのでなければ、
上記したように、役員の任期がない合同会社を私はオススメしたい。
合同会社は、ほかにも様々な利点がある。それについては、またいずれ。
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増田紀彦NICe代表理事が、毎月7日と14日(7と14で714(ナイス)!)
に、NICe正会員・協力会員・賛助会員、寄付者と公式サポーターの皆さん
へ、感謝と連帯を込めてお送りしている【NICe会員限定レター「ふ〜ん
なるほどねえ」スモールマガジン!増田通信】。
第176号(2019/0708発行)より一部抜粋して掲載しました。
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