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厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、NICe増田代表理事が送る、視点・分析・メッセージ 。21日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
個人事業主の老後は7000万円不足!?



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    「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

    第68回 
    個人事業主の老後は7000万円不足!?

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【参院選がらみで老後資金問題が炎上】

「老後2000万円不足」問題をめぐって政界が喧しい。
連日のようにニュース番組などで取り上げられている話題なので、
大半の読者は経緯をご存じと思うが、念のため、おさらいをしておく。

6月3日付で金融庁は、金融審議会がまとめた、
「高齢社会における資産形成・管理」という報告書を発表。
「老後、年金収入以外に2000万円が必要となるので、
早くから資産形成に励むべき」という提言だった。

後でも述べるが、老後の生活を年金だけで賄えない事は周知であり、
今さら大騒ぎをする話でもないと思うが、
「日本人の将来に不安がある」ということを、政府の側から、
しかも参院選の直前に発したために野党が食いつき、
与党が火消しに躍起になっている、というところだ。


【「年金だけでは足りない】は周知の事実】

日本の年金制度は、現役世代から集めた原資を高齢者に渡す仕組みであり、
理論上、現役世代がゼロにならない限り、制度崩壊は起こらない。
ただし、現役と高齢者のバランスが悪くなっていることは事実で、
崩壊はしないが、支給額が減少することはすでに知られている。

実際、政府は2004年に年金制度の大改正を行い、09年と14年の2回に渡り、
「現在の年金より2割から3割は下げる」と公式に発表している。
だから、本当に「何を今さら」なのである。
ただし、不足額が2000万円という決めつけはいかがなものだろう?


【報告書はセグメント別に分析すべきだった】

最近、自民党の石破氏が、
「専門家が何回も会議を開き、一生懸命議論して書いたもの」だから、
報告書を受け取らない麻生大臣の姿勢はおかしいと批判している。

しかし、この報告書は仮定の上に仮定を重ねた数字のオンパレードであり、
さらに、それらの仮定の数字をトコトン平均してしまっているため、
結局は、どの世帯の実態とも一致しないと私は感じている。

極端な例えをすれば、老後1000万円不足の世帯と3000万円不足の世帯があり、
それを足して2で割ったから、2000万円の不足だと言っているようなものだ。
大人数が何度も会合を開いて、その大人数が納得する結論を出そうとすると、
まさに、こうした「平均的」な結論に陥りがちである。

私はそもそも結論を一つにする必要などないと思う。むしろ、
モデルケースを求めるなら、セグメントごとに分析するのが常識である。
実際、全世帯が同じような額の年金を受給するわけではないのだから。


【年金には平屋、2階建て、3階建てがある】

あらためて年金制度の概略を記しておく。
まず国民年金。これは日本在住の20歳以上59歳以下全員が加入する。
よく、給与所得者が加入するのが厚生年金で、自営業者が加入するのが国民年金、
といった説明を見聞きするが、それは正確ではなく、
給与所得者は、国民年金に加えて厚生年金に加入しているということである。
さらに大企業などは厚生年金に加えて企業年金制度を設けている場合もある。

この仕組みを建物に例えて国民年金を1階、厚生年金を2階、企業年金を3階と呼ぶ。
1階だけの国民年金より2階建ての厚生年金や3階建ての企業年金のほうが、
当然、保険料が高くなる。言わずもがなだが、その分、給付も多くなる。

今回の報告書は、厚生年金に加入する、いわゆる2階建て世帯を前提としていて、
平屋に住む国民年金だけの世帯や、3階建てに住む企業年金加入世帯は対象外だ。
付け加えるなら、年金未加入の世帯も考慮されていない。

金融審議会は、最低でも上記の4通り、できればさらに条件を加えて、
10通り前後のモデルケースを発表しても良かったのではないだろうか。


【国民年金の月額給付額は、わずか6万5000円】

さて、あらためて話題にしたいのは、国民年金のみに加入する世帯の問題だ。

このコラムの読者の中には、個人事業を営む人が少なからずいると思う。
その人たちが加入する国民年金の平成31年度保険料は月額1万6410円である。

一方、厚生年金は、毎月の給与と賞与に18.3%の保険料率をかけて算出する。
例えば給与と賞与の合算の平均月収が40万円とすれば、
その18.3%の7万3200円が毎月の保険料ということになる。
この額は、国民年金のみの額の約4.4倍にもなる。

当然、給付にも差が出る。厚生年金加入者は問題の報告書にあるように、
毎月およそ21万円の給付を受けることになるが、
国民年金だけの場合は、毎月6万5000円弱の給付にしかならない。

報告書は、厚生年金加入世帯において毎月5万円強が不足すると言っていた。
であれば、国民年金のみの世帯は毎月20万円不足する計算になり、
30年間、年金生活をした場合の不足額は7000万円以上になってしまう。
2000万円など、どうということはない不足額だ。


【得意技の発見で、年金に頼らず長く稼ぎつつけよう!】

もちろん上述したように、不足額を一律で語ることはできないが、
厚生年金受給者より国民年金のみの受給者の方が厳しいことは間違いない。

だからといって、個人事業主が給与所得者の何倍も蓄財できるわけでもない。
いわんや、給与所得者より所得が低い個人事業主はいくらでもいる。
この事実の方が、よほど大きな問題だ。

では、どうする?
対策は大きく分けて2つ。

ひとつは、事業を法人化させ、役員になって厚生年金に加入する方法。
もうひとつは、年金に頼らず、長く稼ぎ続ける方法だ。
法人化したうえで、長く稼ぐという選択肢もある。

では、60代、70代、そして80代、本当に稼げるのだろうか?
体力をはじめ、いくつかの能力は確実に衰える。時代も変わる。
それでも可能か? 私は可能だと考えている。

誰しも得意なこと、好きなことがある。
その得意なことと好きなことが一致していれば、いくらでもそれに取り組める。
その分野の技量を向上させるための努力も何ら苦にならない。

出来る限り早い段階からそうした分野の仕事を見つけ出し、
習熟し、実績を積み、評価を獲得していけば、活躍する土俵は必ずある。

将来に備えて資産を形成するという考えももちろん大事だが、
それにも増して、生涯続けられる仕事を探し出し、能力を鍛えていくことが、
人生100年時代を迎えた日本人の、何より大事な「備え」ではないだろうか。

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>

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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.91
(2019.6.21配信)より抜粋して転載しました。
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