第2回 江戸名物「一本うどん」に学ぶ
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増田紀彦の「ビジネスチャンス 見~つけた」 第2回
江戸名物「一本うどん」に学ぶ
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誉田哲也を読み過ぎて神経がささくれだったり、
逢坂剛を読み過ぎて頭の中が理屈っぽくなったりした後に開く、
池波正太郎の小説は、何よりの精神安定剤である。
『鬼平犯科帳』『剣客商売』『雲霧仁左衛門』『仕掛人・藤枝梅安』……。
タイトルを並べただけで、何ともホッとした気分になる。
池波作品が描くシーンは、江戸の人々の日常だからだと思う。
何らかの事件が起きたとしても、登場人物たちは、
家に帰るし、食べるし、飲むし、遊ぶし、ちゃんと眠る。
いわば、緊急事態が連続しない展開に、気分が救われるのである。
したがって池波作品には食事のシーンがよく登場する。
江戸時代の話だから、当然、華美な料理など出てくるわけもない。
たまたまた手に入った旬の素材、ちょっと工夫した味付け……、
モチーフはそんなところで、その素朴さにまた心が和む。
と、同時に、江戸の町の人々は、そういうものを食べていたのかと、
感心すること、しきりである。
大変長い前置きだった。本論はここから。
池波正太郎が紹介した料理のひとつに「一本うどん」がある。
江戸は深川の「やほき」で実際に提供されていたもので、
親指くらいの太さの、大層長いうどんだそうだ。
この「一本うどん」に学ぼうというのが、今回テーマ。
一般的には複数で成り立つ商品を、あえて単数にする。
反対に、単数が普通の商品を、あえて複数にする。そういう発想だ。
すでにこの視点で市民権を得ているのが蕎麦(そば)である。
そば粉を丸めて食す「蕎麦がき」もあれば、
包丁で細く切り揃えて、いわゆる麺にした「蕎麦切り」もある。
食品に限る必要はない。複数を単数に、という視点でいけば、
私が子供の頃、12色の色鉛筆を1本にしたものが流行った。
芯を差し替える方式で、コンパクトにして美しい文具だった。
もっとも12色などと欲張らず、3色ボールペンでも十分すごい。
シャンプーとリンスをひとつにした商品もあるし、
考えてみたら、懐かしの「ラジカセ」もそうだ。
一方、単数を複数に、ですぐに思い浮かぶのは、
カット野菜やカットフルーツだ。
まあ、魚の切り身なんかも、そもそもはこのカテゴリーである。
要は、「数」を変えるだけで、
利便性を高めたり、インパクトを強めたりすることが可能になる、
という発想だ。
新商品を開発しようと延々頭を悩ますのであれば、その前に、
既存の製品やサービスの「数」を見直してみてはどうだろか。
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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.70
(2018.8.13配信)より抜粋して転載しました。
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