「NICeなビジネスプラン誕生秘話」第13回 田村雅美さん(群馬県甘楽町)
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「NICeなビジネスプラン誕生秘話」 第13回
第5回NICeなビジネスプランコンテスト 奨励賞
田村雅美さん(群馬県)
エピテみやび 代表
受賞プラン名称
「『見た目』と『心』を回復するリアルパーツ」
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◆安全認証のシリコン素材で製作する、手術不要のボディパーツ
群馬県甘楽町の自社工房で、完全オーダーメイドの
エピテーゼ製作に励む田村雅美さんは、2017年に開催された、
第5回NICeなビジネスプランコンテストで奨励賞を受賞した。
エピテーゼとは、病気や事故、先天性などの理由で
変形・喪失した身体の部位をリアルにカバーする医療用人工物のこと。
中でも田村さんが得意としているのは、指や乳房などだ。
一人ひとりの要望と色に合わせ、自然な見た目とフィット感を
提供する田村さんが、特に大切にしているのは、心のケア。
身体の一部を失うことで、精神的なダメージは計り知れないという。
誰とも会いたくないとふさぎ込み、家族や友人も、
接し方がわからず戸惑い、さらに心を閉ざしていく。
そういう人の心の支えになりたいと、相談から、ヒアリング、
製作、色合わせ、アフターフォロー、コンサルティングまで、
すべて田村さん自身が行っている。
起点になったのは、エピテーゼと出合った2005年、
歯科技工士として勤務していたアメリカでのこと。
研修先の病院で、顔の左半分を失ったイラク戦争の帰還兵が、
エピテーゼで顔を取り戻した瞬間、心までも取り戻し、
抱き合って泣いて喜ぶ姿を目の当たりにしたことだった。
◆できることで役に立ちたい。技工士の経験と技術で起業を決意
帰国後、歯科医院へ転職した田村さんは、
米国で見た“心までも取り戻す”に似た経験をする。
「技工所ではもくもくと製作する技術職でしたが、
歯科医院では患者さんと接する機会が増えたのです。
中には、涙を流して喜んでくれる患者さんもいらして、
米国で見た光景がよみがえりました。
エピテーゼを勉強したい、技術を習得したいと、
それから勤務の休みをぬって学び始めたのです」
数年後、起業へのきっかけとなる出来事があった。
友人が乳がんを患い、乳房を切除したと告げ、
「もう温泉へも行けない、毎朝着替えるたびにつらい」と
苦しい胸の内を明かしてくれたことだ。
田村さんがエピテーゼについて話すと、
「知らなかった!」と驚かれたという。
「本人さえ知らないことがショックでした。
もし家族や知り合いのひとりでも知っていたら
彼女の気持ちも少しは救われたのでは、と。
そういう女性がたくさんいるはず、広めたい」
◆積極的な発信で認知向上&個々の気持ちに寄り添うアプローチ
不思議なもので、起業を決意し、歯科医院を退職した途端、
創業塾の案内が目につき、さっそく受講。
異業種の集まりや勉強会にも積極的に参加した。だが、そこで
事業プランは称賛されるのも「初めて知った」と口々に言われ、
認知の低さを痛感する。と同時に、市場性があるのか不安も生じた。
だが手を尽くして調べてみると、
指を欠損した人や乳房を切除した人が想像以上に多いことがわかり、
もっといろいろな場で、発信せねばと思った……矢先に、
第5回NICeなビジコン公募を知る。
地元・甘楽町で活躍する前年グランプリの萩原涼平さんが勧めてくれたのだ。
「NICeなビジコンで奨励賞をいただいたことで、
この方向でいいのだなと背中を押してもらったようで、
次のステップへの勇気と自信になりました」
その後も積極的に活動を続け、
「ご本人はご存じなくても、選択肢のひとつとして、
周囲の方が伝えていただけたら」と、身体のリアルパーツ展示のほか、
気軽に触れる『ぷにぷに肉球』や『ぷにぷにお蚕』など、
グッズの製造販売も展開中だ。
田村さんの活動と想いが、さらに広く、届くように。
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田村雅美(たむら・まさみ)さん/群馬県甘楽町
エピテみやび 代表
https://www.epitemiyabi.jp/
○プロフィール 1982年5月19日、群馬県出身。
歯科技工士として、2005年から2年間アメリカで勤務した時、エピテーゼ
を知る。帰還兵が心までも回復する姿に心を打たれ、帰国後、歯科医院
勤務を続けながらエピテーゼ技術を学び始める。2016年に起業を決意し
退職。2017年1月、故郷・甘楽町で「エピテみやび」を開業。同年12月開
催の第5回NICeなビジコンで奨励賞を受賞。2018年2月には、「ウーマンズ
ビジネスグランプリ2018」でファイナル進出、特別賞受賞。風を感じるの
が好きで、20代は単車、その後は乗馬を趣味にしていた。現在は事業普及
と製作で休みもない日々だが、いつか乗馬を再開したいと夢見ている。
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▲2017年12月 第5回NICeなビジネスプランコンテスト表彰式にて。
【同時開催】NICeつながり祭り2017 ブース出展
2018.4.23 配信
「つながり力で起業・新規事業!」 メールマガジンVol.65