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厳しさを増す経済・経営環境に立ち向かうために、NICe増田代表理事が送る、視点・分析・メッセージ 。21日配信のNICeメルマガシリーズコンテンツです。
日本のキラーコンテンツを支える「二次創作」を護れ




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    「増田紀彦の視点 どうする?日本経済」

     第30回 
     日本のキラーコンテンツを支える「二次創作」を護れ

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【手塚治虫の自虐的述懐】

「あれは名声欲と金儲けのために描いている」。
――手塚治虫のこの言葉を目にしたときは驚いた。『鉄腕アトム』のことだ。

今になれば、手塚の葛藤が言わせた皮肉であるとわかる。
アニメ化された『アトム』は、それこそマッハ5の高速で手塚の手を離れ、
原作とはほど遠いストーリーのもと、絶大な人気を博した。

一方で、本人が戸惑うほどに、金が儲かったのだろうとも思う。
原作のマンガが当り、テレビアニメ化することで作者は大きな利益を得る。
今では確立されたこのパターンの、最初のケースが『アトム』だったからだ。


【浦沢直樹の『PLUTO』は二次創作の名作】

最近、浦沢直樹が描いた『PLUTO』を一気に読んだ。
『PLUTO』は、『アトム』の一話である「地上最大のロボット」のリメイクで、
より人間に近い顔をしたアトムやウランが登場する。

マンガからアニメへ、小説から映画へ、あるいは外国語から日本語へなど、
原作と表現手法を変えた創作を「二次著作物」という。
しかし『PLUTO』のように、マンガからマンガへというケースは、
著作法上どのような位置づけになるのだろうか。

「そもそも著作法は、こういうリメイクを想定していない」という意見もある。
したがって(という関係で語っていいかどうか微妙だが)、
マンガやアニメ、イラストなどに詳しい人たちは、
こうしたケースを「二次著作」ではなく、「二次創作」と呼んでいる。


【二次創作は知的かつエキサイティング】

コミケなどで知られる同人誌の世界は、圧倒的に二次創作の世界だ。
描き手は、自らが愛するマンガのキャラクターを登場人物とし、
原作とは異なる設定やストーリーで作品を展開していく。

モチーフはひとつの作品に限られない場合もある。
例えば私が二次創作するなら、野球マンガを描いてみたい。
「星飛雄馬とバッテリーを組んでいた伴宙太が中日に移籍した。
(この設定は原作どおり。ここからが違う)。そこで巨人は新捕手として、
ドカベンこと山田太郎を獲得し、星とバッテリーを組ませる……」。
(この設定を考えただけで、興奮状態になっている私である)

もちろん原作者にとって好ましくない作品もある。
普通のキャラがアダルト作品のキャラにされてしまうなど、確かに問題だ。
とはいえ、私は基本的に二次創作に賛成。
原作者に対する敬意を忘れず、原作者に対する報告をきちんと行えばいい。

実際、手塚治虫を苦しめた二次著作より、
二次創作である『PLUTO』のほうが、10万(馬力)倍、手塚精神を汲んでいる。


【二次創作を追い詰めるTPPは、日本経済にマイナス】

ところがここに来て悩ましい事態が起きている。またまたTPPだ。
TPPは参加国同士の経済ルールを統一しようとする動きであり、
その検討項目のひとつに著作権制度がある。現在ここで、
「著作権侵害の非親告罪化」と「法定賠償金制度」が検討されている。

非親告罪化とは、著作権者が「著作権を侵害された」と訴え出なくても、
第三者が告発、もしくは捜査機関が独自に立件できるようにすること。
また「法定賠償金制度」は、実損を超える懲罰的な賠償金支払いを求めるものだ。
このルールが決定すれば、二次創作に取り組む同人誌はひとたまりもない。

日本のキラーコンテンツである「マンガ」や「アニメ」を支えているのは、
コミケなどに集う何万、何十万という同人誌ファンである。
一握りの天才と大手出版社やテレビ局が支えていると考えるのは思い上がりだ。

何より二次創作(三次、四次でもいい)は、すぐれたアイデア創出法である。
誰かの発想が別の誰かの発想を引出し、それがまた……。
アイデアは思いある人々のリレーによって進化するものだし、
その連鎖拡大が経済活動発展の根幹を担っていると私は思う。
「著作権侵害の非親告罪化」と「法定賠償金制度」の導入を日本は阻止すべきだ。

<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>

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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.33
(2015.0824配信)より抜粋して転載しました。
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