増田通信より「ふ~ん なるほどねえ」60「舌の真ん中」
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「増田さん、まず、こっちのお酒を飲んでみて」と、酒聖が言った。
酒聖とは、福島県の賛助会員・柳沼美千子さんのご主人のこと。
私が勝手に、そう呼んでいるだけだが。
とにかく勧められるままに、一口いただいた。
おいしい!
甘美にして威風堂々。さすがは日本酒の最高峰と呼ばれる逸品である。
「じゃあ、今度はこっちを飲んでみて」と酒聖。
続けてクイっといってみた。
あれ? うーむ……。
さほど優れた甘味には感じなかったので、正直にそう伝えた。
「ははは。実はどっちも同じお酒なんですよ」。
ええっ? どういうこと?
「違うのは酒じゃなくて、お猪口です」。
確かに一杯目と二杯目では、違うお猪口を使ったが……。
「大きさが違うでしょ。最初の小さい方が甘かったはずですよ。
器が小さいと口をすぼめるから、酒が舌の真ん中を通過します。
甘味は舌の真ん中で感じるんです。ところが二杯目の器は大きいから、
酒が舌全体に広がる。そうすると酸味も同時に拾ってしまうんですね」。
なるほど。驚いたが、合点がいった。
この理屈はビジネスにも当てはまりそうだ。
商品やサービスを広げすぎて、魅力がピンボケしている店や会社がある。
顧客の「舌の真ん中」を通過する商品やサービスは何か?
その答えを見つけ、絞り、育てる勇気と努力が商売の成否を分けると思った。
ちなみに柳沼酒聖は長年、工学部で教鞭を取ってきた人物。
実験を通じて道理を学ばせるなど朝飯前、いや、晩酌前である。
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増田紀彦NICe代表理事が、毎月7日と14日(7と14で714(ナイス)!)
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へ、感謝と連帯を込めてお送りしている【NICe会員限定レター「ふ〜ん
なるほどねえ」スモールマガジン!増田通信】。
第60号(2014/9/16発行)より一部抜粋して掲載しました。
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