配偶者控除見直しには、起業で応えよう!
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【控除廃止なら、6300億円の税収アップ】
配偶者控除の見直しが取り沙汰されている。
配偶者控除とは、納税者の配偶者に収入がなかったり、少なかったりする場合、
納税者の所得から一定額を控除する制度のことであり、
現行では、配偶者の年収が103万円以下、もしくはゼロなら、
納税者の年間所得から38万円が控除される。
もっとも103万円が絶対的な限度というわけではなく、
最大141万円まで、9段階に分けて納税者の所得が控除になる。
現在、配偶者控除の適用を受けている人は全国で1400万人。
また103万〜141万円枠の配偶者特別控除を受けている人も100万人に達し、
両方を足した減税額は6300億円になっている。
したがって、仮にこの制度を全廃すれば、税収は劇的にアップする。
泣くほど苦労しているTPPが日本の思うような結果になったとしても、
10年がかりで3兆円ほどの経済効果なのだから、
配偶者控除の見直しは、政府にとって垂涎の的と言っても過言ではない。
【一体、誰を喜ばせたいのか?】
もっとも政府は、税収増だけを考えているのではない。
同時に「女性をもっと働かせよう」という意図もある。
わが国が、労働力の減少という課題を抱えていることは事実であり、
そこで、「103万円の壁」や「141万円の壁」をなくしてしまえば、
控除適用を考えて就職しない、あるいは短時間しか勤務しない
(主に)女性たちの労働力を、もっと活用できるはずという考えである。
しかし、それで一体、誰が幸せになるのだろう?
女性の中には、力を出し惜しみしているわけではなく、
子育てや介護などのために、短時間しか働けない人たちがたくさんいる。
こういう家庭の経済を、制度見直しは追い詰めることにならないだろうか。
そこからさらに考えれば、少子化をより進行させることにならないだろうか。
もっとも、企業の中には、この見直しを歓迎する会社も少なくない。
女性の就職希望者が増えれば、「いい人材確保のための母数」が増えるし、
何より、労働市場の買い手市場化が進むため、人件費の高騰を抑制できる。
【グローバル資本主義は安い人件費を常に求めている】
大企業や、あるいは政府の一部が追い求めるのは、まさにこの人件費の抑制だ。
企業の市場競争力を高めるべく、コストダウンを突き詰めていけば、
この「費目」における支出を押さえ込むこと以外に打ち手はない。
でも、それでは結局、消費者の購買力も落ちるのだから、
企業のメリットには結びつかないのでは?と、思う人もいるだろう。
だが、そうではない。
今や日本の大企業のお客様は日本国民ではなく、世界の市場だ。
日本国民の所得を増やして、その人たちに商品を購入してもらうより、
日本国民への支払いを抑えて、世界で有利に商売を展開する方が得。
そういう「合理的な判断」をするのがグローバル資本主義の常識である。
【女性の起業を、政府も夫も応援すべし】
大企業などが潤えば、その利潤がやがては下にも落ちて来るという、
トリクルダウン理論を提唱する人もいるが、
それを信じて我慢し続けるのが日本国民のあるべき姿だろうか。
そうではないと思う。
豊かになるための努力を国民が放棄する国に、繁栄などあるはずがない。
前号のコラムで、女性の起業支援をもっと手厚くすべきだと主張した。
http://www.nice.or.jp/archives/21798
子育てや介護に忙しい女性たちを追い詰めるのではなく、
むしろ、その経験を生かして起業できる道を推進することが必要だし、
減税機会を奪われる男性も、それを嘆くのではなく、
起業というかたちでの、妻の自己実現と社会参加を親身に応援することで、
家庭経済の維持に貢献すべきではないだろうか。
<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>
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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.17(2014.0421配信)
より抜粋して転載しました。
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