地方が伸びる国家戦略特区であれ
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【来春早々にも特区指定】
安倍政権の成長戦略の柱である、国家戦略特区法案が国会審議に入った。
成立すれば、年明け以降、全国に3〜5カ所の特区が誕生する見通しだ。
過去の特区(構造改革特区や総合特区)は、
自治体などからの提案を受けて省庁が対応するボトムアップ型制度だったが、
国家戦略特区は、案件当初から国が積極的にコミットしていくものだ。
厳密には、国と自治体と民間事業者が当初から参加する。
つまり、実現力を高め、成果の大きさを求めるのが新制度の狙い。
というが、本当に日本経済全体を浮揚させる引き金となるのだろうか。
【特区の太平洋側集中はヒヤヒヤもの】
国家戦略特区の目標は、「世界で一番ビジネスのしやすい環境をつくる」。
したがって東京、愛知、大阪が特区指定を受けることは、ほぼ確実だ。
早く成果を上げようと思えば、
ヒト・モノ・カネを太平洋側の大都市に集中させるのはわかる。
しかし、これらの地域は国際的なビジネス拠点であると同時に、
首都直下型地震や、東海・東南海・南海地震の直撃を受ける地域でもある。
集中させた資源が、ある日、すべて失われてしまう危険性は否定できない。
できれば、私としては、日本海側の都市に、
「大地震対応型の国家戦略特区」を設けてほしいと願う。
いわば、「表と裏」で、日本経済を支え合い、助け合う形だ。
【都市と地方でコンビを組む「兄弟特区」】
もうひとつ、「表と裏」に加え、
「都市と地方」の相互利益を実現する視点も不可欠である。
たとえば都市の特区において法人優遇税制が実施された場合、
地方が企業誘致競争で不利になることは明白だ。
この格差をフォローすべく、都市の特区とコンビを組む「準特区」を
地方に設置したらいいと考える。いわば「兄弟特区」だ。
「兄」を支える製品の製造業集積地を地方が設置した場合、
そこを「弟」にするというイメージだ。
【農地転用要件緩和は、あくまで6次化のために】
もうひとつ、地方活性に不可欠なのが、農業特区である。
今回の特区制度においては、
農業生産法人の設立要件緩和や農地集約の推進などが盛り込まれるだろうが、
農業特区における第一義的取り組みは、
すでに当該地域で営農する人々の将来を開く、
農業の6次産業化推進であると私は考えている。
とくに成長性が見込めるグリーンツーリズム産業を担う、
農家レストランや農家民宿に関する規制を大胆に緩和してほしい。
おそらく、特区では農地転用要件の緩和が進められると思う。
ただし、それは上記のように、
「地元農家が、農用地内に6次化施設を設置・運営することに関して」、
という制限を設けてほしい。
規制を緩め過ぎて、農地破壊や景観破壊が生じたら本末転倒だ。
半面、6次化農家に対しては、農地転用要件の緩和だけでなく、
建築基準法や旅館業法、消防法などの緩和も実施するべきだろう。
【最後は農家と自治体の努力次第】
とはいえ、各種の緩和が進み、
農家レストランや農家民宿が開業しやすくなったとしても、
繁盛しなければ、「やらなかった方がマシ」という話になってしまう。
前回のコラムで、シニアに対する早期の起業訓練が必須だと訴えた。
農家に対しても同じである。十二分な勉強と準備を経て起業してほしい。
農家と地方自治体がひとつになり、所得と雇用の拡大を目指す!
当事者が頑張らなければ、国家戦略特区制度は、
地方から人材と資金を流出させるだけのものになりかねない。
国も頑張っている。だがそれ以上に、私たち民間人が頑張らねば!
<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>
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「つながり力で起業・新規事業!」メールマガジンVol.12(2013.1121配信)
より抜粋して転載しました。
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