「税込み」要求は「相思相愛」で跳ね返せ!
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【上げるフリして、上げない効果】
8月の気温と円の対ドルレートが、あと1割下がってくれたらと、
フーフー言っているうちに、今度は消費税率アップに悩みそうだ。
やはり来年4月に引き上げるのか、
それとも、経済がしっかりするのを持って、上げるのか……。
私は、増税後の消費冷え込みが怖い。
この国の個人も企業も、不景気にすっかり慣れてしまっている。
増税すれば、誰もがアッという間に財布の紐を締めてしまうだろう。
ということは、「上げるぞ、上げるぞ」と脅かしておいて、
来年4月増税の見送りを発表したらどうなるだろう?
「やった!」とばかりに、消費活動が活発化するはずだ。
今はそういう展開が望ましいと思う。ちょっとクサイやり方だが。
【消費税を転嫁できない小さな企業】
いずれにせよ、無期限に現行税率を維持するという話はない。
いつかは上がる。そこで、もうひとつの問題が出てくる。
立場の弱い事業者が、顧客に新税率を転嫁できるのか、という問題だ。
一昨年、全国商工会連合会などの中小企業団体が
消費税に関する大規模なアンケート調査を実施した。
それによると回答した企業の半数以上が、
今の段階でも、消費税を顧客に転嫁できてないというのだ。
実感としてはわかるが、実態としては、とんでもないことである。
さらに転嫁できない傾向は、小さな会社ほど高くなるから辛い。
以下が調査結果である。左側の数字が年間売上高、
右側の数字が消費税を顧客に転嫁できていない会社の割合。
●10億円超…32%
●2億~10億円…38%
●1億~2億円…46%
●5000万~1億円…50%
●3000万~5000万円…54%
●2000万~3000万円…58%
●1500万~2000万円…59%
●1000万~1500万円…64%
加えて、「増税によってどうなるか」と尋ねたところ、
いずれの規模でも、「転嫁できない」という回答が1割ほど増えた。
転嫁できないということは、価格を下げるということである。
念のため、「消費税を転嫁できない」ケースを以下に書いてみた。
【5%でも8%でも、請求額は100万円?】
消費税納税義務のあるデザイナーのKさんは、
広告代理店から、広告制作料金として100万円を提示され、
了承したKさんは、請求書に
制作料1,000,000円+税50,000円 計1,050,000円と書いて送った。
だが、代理店の担当者から「100万円は消費税込みの金額」と言われ、
やむなくKさんは請求書を、
制作料952,380円+税47,620円 計1,000,000円と訂正して再送した。
消費税を転嫁できなかった一つの例である。
言わずもがなだが、Kさんは、47,620円を値引きされたことになる。
ちなみに税率が8%になれば、Kさんの値引き額は74,074円に膨らむ。
もし、顧客であるこの代理店の経営が厳しい状況なら、
今後も「税込み方式」を要求するだろうし、断れば、
発注そのものを取りやめるという態度に出るかもしれない。
こうなればKさんは、「税込み=値下げ」を受け入れるしかない。
(この繰り返しが、デフレーションをさらに進行させる)
【価格ではなく、価値で顧客とつながれ!】
上記のような展開は、あってはならないことである。
では、どうすればいいのか?
税込みという名の値下げを拒否する……のではなく、
そもそも、そんなことが話題にならない取引関係を、
つまり、相思相愛の関係を、顧客との間に築くしかない。
Kさんには、Kさんだからこそ提供できる強みがあるはずだ。
それを見つけ、信じ、伸ばし、
並行して、その強みを欲しがる顧客を是が非でも探し出すべきである。
「価格」ではなく、「価値」を評価してくれる相手と結ばれること。
それが消費税増税に耐え、業績を伸ばすための抜本策である。
<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>
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「つながり力で起業・新規事業!」 メールマガジンVol.9(2013.0821配信)
より抜粋して転載しました。
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