経済統計の矛盾や問題点にこそ、チャンスあり!
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【GDP算出の例外……例えば農家の自家消費】
一定期間中に一国において作り出された付加価値の合計を、
GDP(Gross Domestic Product:国内総生産)と呼ぶことは周知の通り。
そして、この価値を通貨単位で表すこともご存じの通りだ。
つまり、価格が付される価値がGDPの対象になるのだが、若干の例外もある。
農家が自家消費した生産物の価値が、そのひとつ。
例えば、ある米作農家が、ある年に500kgの米を収穫し、
そのうち400kgを出荷して、残り100kgを家族で消費したとする。
それでもこの農家が作り出した付加価値は500kgと考え、
家族分100kgにも価格があるものと仮定して付加価値額を算出するのである。
農家が自分でつくったものを自分で買ったと考えれば辻褄は合う。
おおげさに言えば、自給自足も経済活動であるということだ。
【食糧自給率算出の例外……これまた農家の自家消費】
ところが農林水産省が発表している食糧自給率では、
農家の自家消費分を、国内で生産された食糧として認めていない。
実際には生産しているのに、規定上、「自給していない」ことにしている。
かたや自分で食べても国内生産だと言い、
かたや自分で食べたら国内生産ではないと言う。
GDPと食糧自給率の矛盾は誰の目にも明らかだ。
この食い違いだけでも驚くが、農水省の自給除外項目はまだまだある。
収穫作業を手伝ってくれた人に御礼代わりに配った分や、
親戚・友人などにプレゼントした分、
さらには市場価格の値崩れ対策として廃棄した分も除外。
それどころか、農協や問屋に出荷せず、直販した分まで除外している。
うがった見方をすれば、
GDPを大きく見せるためには自家消費をカウントしたほうがいいが、
食糧自給率を少なく見せるためには自家消費をカウントしないほうがいい。
そういう「ご都合主義」が政府統計に滲み出ているように思える。
【統計の矛盾が問題にされない真因は何か?】
ではなぜ、このような矛盾が平気で大手を振って歩いているのか?
結論から言ってしまうと、
政府が取りまとめる統計がもはや「重要な指標」ではなくなっているからだ。
重要でなければ、「多少の矛盾や問題」は度外視してもいいという話になる。
例えば、ユニクロのシャツ1000枚が東京で売れたとする。
ただしそのシャツを「中国から輸入した額」を差し引いた数字がGDPになる。
しかし、ユニクロは中国企業のブランドだろうか?(そんなことはない)
あるいは、兵庫県で生まれて育って出荷された肉牛が一頭いたとする。
ただしその牛に与えた飼料が米国製だと、その牛は食糧自給から除外される。
それならその牛は米国産の牛になるのだろうか?(そんなことはない)
今やヒトもモノもカネも、国境を越えて、自由に地球上を行き来している。
にもかかわらず、「国内総生産」とか「日本の食糧自給率」とか、
経済を一国の範囲に押し止めて語ろうとするから、
首を傾げたくなるような規定や解釈を統計に持ち込む羽目になり、
結果、穴だらけ、矛盾だらけのデータになってしまう。
【混乱は、新しい可能性が存在する証明である】
現代経済の姿を正確にとらえ、
今後の事業戦略を適切に計画・構築していことうするのなら、
まずは、堂々と語られている、これら「指標」の欠点を探ることである。
なぜなら、その欠点にこそ、新しい時代の市場の姿が内包されているからだ。
新しい物事だから、その扱い方をめぐって人は混乱するのである。
何事もそうだが、
従来の物指しが使用できない領域にこそ、チャンスあり!である。
<一般社団法人起業支援ネットワークNICe 代表理事 増田紀彦>
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「つながり力で起業・新規事業!」 メールマガジン創刊号(2012.1221配信)
より抜粋して転載しました。
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